90.王国に仕込まれれた罠 05
フランの召喚した巨人兵が2人の男の攻撃を受け止める。
2メートルを超えた体に左手に大きな盾、右手には大剣を持っている。盾を前に突き出し攻撃を受け止めその後ぐるりと旋回して大剣を叩きつけている。だがその攻撃は2人の男にあまり効果が無いようだ。
とは言え目くらましにはなる。そう感じて俺はみんなの周りに鋼の鎧を纏わせるべく鉄壁を発動させる。
「石川は右のを頼む!」
清水がそう言うと石川は巨人兵に行く手を阻まれている左側の男、サドスに氷の槍を叩きつけていた。それを両手をクロスするようにして耐えるサドス。
石川は右の男、ヨーゼスに雷撃を連発している。ヨーゼスは雷撃を受けてなお俺達の方に血走った眼を向けながら巨人兵を躱すようにこちらに向かってきていた。
「出てきて目玉ちゃん!」
山崎さんが隷属しているまとわりつく目玉を3体、迫ってくるヨーゼスの目の前に召喚する。
帝国のダンジョンで隷属させた青い触手をうねうねさせた目玉の魔物だ。スキルは[絡みつく]と[幻惑の目]。3体の触手がヨーゼスの足元に絡みつき、さらには玉井さんが影縛りによりその動きを止めることに成功した。
石川はそれを見て攻撃を雷撃から岩の槍へと変更する。2メートルはあるだろう巨大な岩石でできた槍が何本もヨーゼスに降り注る、ヨーゼスはそれを嫌そうに手ではらうが徐々にその動きは鈍くなっている。
これなら行けるだろう。そう思っていた。
「だめ!一旦離れて!」
巨人兵と対峙しているサドスの方に参戦していた加藤さんが叫ぶ。
そのサドスがこちらに向けている筒状の何かから光が漏れる。咄嗟に鉄壁を追加する。未波も同じように結界を張り全員が退避する。
リンカロールやアレサントロスからも悲鳴が聞こえる。
サドスから放たれた光の束は半円を描くように放出された。
加藤さんの声で全員が退避していたおかげで、俺の鉄壁も未波の結界も破壊された割にはダメージは無かったようだ。巨人兵や松本が咄嗟にみんなを守ってくれたのも幸いしたのだろう。
室内の守り切れなかった部分の壁の一部が崩れている光景に恐怖心が芽生えてしまう。
そして崩れ猿巨人兵。今の攻撃を受け止める為、魔力を大量に注入したのかもしれない。はあはあと苦しそうに膝をついているフランを野村さんが支えていた。
俺は[保管庫]から体力回復と魔力回復の薬剤を出し皆に手渡していた。通常の回復薬より少しだけ効果の強いものだ。同じものを野村さんが取り出し配っている。
野村さんが[品質向上]を使って作り直したものだが、保管庫などに入れないと1日程度で品質が落ちてしまう。完全回復とはならないが無いよりはましだろう。
「で、どうする?あっちもやる気のようだけど?」
そう言う石川だったが、正直俺もどうしたら良いか分からない。
先ほど手に持っていたモノから攻撃を放ったサドスは体力の限界なのか膝をついている。俺達が相手していたヨーゼスも同じように体力の限界を迎えている様子に見えるが、フーフーと息を荒くしながら腰の袋から筒状のモノを取り出してこちらに向けている。
一撃で部屋の背後の壁が崩れてしまう程の攻撃。マイケイルは確保したし、一度撤退した方が良いのか?そう考えながら飯田達と同じように魔馬に載せられ死にそうな顔をしているマイケイルを見る。
撤退だな。そう思い声を張り上げる。
「撤退しよう!」
そう叫んだ後、目の前から放たれる攻撃に備える為、全力で魔力を絞り出し詠唱を開始した。
「土の精霊よ!我が鉄壁により鋼の如き強き壁を、我が全力の魔力を持って生み出し皆を守れ!」
目の前に作り出された光輝く壁に、未波の結界が重なるのが見えた時、その壁は大きな音と共に破壊され、俺の体に強い衝撃が加えられ吹き飛ばされた。
それを魔力の枯渇により朦朧としながら感じた後。体を瓦礫か何かに打ち付られる痛みに顔を歪める。それでも力を振り絞り顔を上げる。
倒れ込むヨーゼスの隣に立つサドスが手に持つ新たな筒状のソレを見て、逃げるのが遅かったのだと悔しさに歯噛みした。そしてサドスがこちらに向けているソレから光が放たれ、俺は覚悟を決めて目を瞑った。
「悪しき敵を討て![聖なる捌き]」
聞き覚えのある声と共に、サドスが放った光を飲み込むように大きな光が貫いていた。
「これで終わりだ!神の一撃、[聖なる雷]」
さらにサドスには白い稲光が落とされる。
全身を黒く焼かれたサドスはそのまま崩れ落ちた。
「大丈夫か?」
そう言いながら範囲回復を放つのは山本だった。
「すまんみんな!遅くなった!」
先ほどの攻撃を放ったであろう蘭堂が謝りながら俺のそばまでやってきた。
俺は未波から魔力供給を受け楽になった体を起こすと、その蘭堂に確認する。
「外の様子は?もう落ち着いたか?」
「とりあえず城の周りは片付けた。今は横井達が味方の兵士達と押さえているが、城の周りに他の兵士達が詰めかけている。少し危険かもしれない」
その兵士達はなんなんだと思いながらも、まずはこの場を抑えることを優先させる。
「あっちにいる男、あの貴族2人が今回の首謀者らしい。後は頼んで良いか?」
「ああ。良いが、飯田は?」
俺にそう返答する蘭堂は、魔馬に乗せられている飯田達に視線を向ける。
「罠に掛かって寝てるよ。何をやっても起きそうにない」
「そうか」
蘭堂はそう一声返すと、遠藤と根本と一緒にリンカロールとアレサントロスを捕縛する為に向かっていった。
当の2人は怯えた様子でへたり込んでいるので、とりあえずこの場はこれで治まるだろう。そう思いながら魔力の供給により温まった体に身を任せ目を瞑った。
すぐに捕縛された2人の男。
宰相ミミーガルにより改めて2人ともこの国の公爵家の当主であることが知らされる。外にいたもう一人も恐らくそうなのだろうと言われ、この国ヤバイなと思った。
外の様子についても、集まっているのはおそらく公爵家の私兵なのだろうと言われ、それならこの2人の身柄が拘束されていることを見せつければ治まるだろうという結論となった。
俺達は捕縛用の魔道具で改めて拘束した2人の公爵を連れ、城の外まで移動することにした。
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