89.王国に仕込まれれた罠 04
玉座に座る男、拘束されているマイケイルと周りを取り囲む兵士達。
互いを睨み合う中、「うっし!」という清水の気合を籠めた声が聞こえる。
「非常事態だ、マイケイル殿下、堪えて下さいね!」
そう言って清水は手を翳し、バリバリと音を立てて雷撃を飛ばした。
その雷撃はマイケイルも巻き込み兵士達に直撃する。
マイケイルはそれなりに高いステータスをしているのでこの程度なら大丈夫だろう。大丈夫だよね?
周りの兵士達が倒れ込む中、玉井さんが駆け出しマイケイルを抱え戻ってきた。これで今回のクーデターも失敗だろう。そう思って胸をなでおろす。
「せっかく城から引き離していたというのに!忌々しいガキ共だ!」
玉座に座り唾を飛ばす男はフランケール・リンカロール、クラスは騎士と大したことはないが、一般人と比べれば高いステータスをしている。
「リンカロール!大人しく投降しろ!今ならお前だけの罪だけで許す!」
雷撃にも負けず体を起こしたマイケイルがそう問いかけていた。
「まだ終わってない!アレサントロス!いるのだろ!」
リンカロールがそう叫ぶと、部屋の端の方で宰相であるミミーガルに剣を向けていた兵士がこちらを向き、ため息をついて歩いてくる。
ルッカネル・アレサントロスという神官クラスの長身の男だ。
「アレサントロスだったとは!し、信じられぬ……」
「公爵家ともあろう者達が、この国はそこまで腐っていたというのか……」
先ほどまで剣を向けられていた宰相ミミーガルとマイケイルが悔しさを滲ませ嘆いている。
「そんなところに隠れていたとは……それにしても、公爵家の当主たるもの、そんな恥ずかしい恰好をしおって!アレサントロス、お前には大貴族としてのプライドというものが無いのか!」
「まあまあ、良いじゃないですか?いざとなれば兵士として逃げられますし、あっ、もうバレちゃってるからダメですかね?」
リンカロールの苦言に、両掌を上にあげ舌を出しお道化てみせるアレサントロス。
良い人そうに見えるが、思えば先ほどまで宰相に剣を向けていた事を考えれば、クーデターを仕掛けた奴らの仲間なのだろう。それも公爵家?どう考えてもクーデターを主導する立場のはずだ。
そのアレサントロスという男は「さっさと起きなさいよ」と言いながら、清水の雷撃により倒れていた兵士達を足蹴にしていた。
それにより目を覚ました兵士達はアレサントロスに頭を下げながら再度マイケイルの周りを取り囲んでいた。
「ぼやぼやするな!やるならさっさとやれ!」
玉座から立ち上がり声を荒らげるリンカロールを見ながら、俺達は何があっても対処できるよう身構え様子を伺っていた。
「さて、あまりぼやぼやしてると小言がまた飛んできそうなのでそろそろやりますか。お子ちゃま達には悪いけど、これは大人の政なんだよね?他国の事だし口出ししないでもらおうか?」
そう言って胸元から取り出した棒状の何かに魔力を籠めるアレサントロス。
それに合わせてマイケイルの周りにいた兵士達が俺達に対面するようにマイケイルの後ろへと移動する。次の瞬間、横からはマイケイルが苦しそうに叫ぶ声が聞こえた。
拘束されている鎖が赤く発光している。そして、その鎖を持つ兵士達が移動してアレサントロス達の前に立つ。いち早く飛び出した松本はそれに戸惑うが、兵士の鎖を持つ左手に狙いを変え叩き付けていた。
だが、その攻撃は剣先へと伸びてきた鎖により弾かれてしまう。
さらに苦しそうに声を上げるマイケイル。
「面白いだろ?拘束した者の魔力を使って装備者を守る最強の盾だ」
アレサントロスは笑顔でそう言った。
「そうかよ!じゃあその魔力が無くなったら……マイケイル殿下、少し苦しいでしょうか我慢して下さいねっと!」
清水が無詠唱で氷の槍を作り出し鎖を持つ兵士に攻撃を仕掛けていた。
「ぐわぁぁぁ!!!」
マイケイルから激しい叫び声が聞こえるが、清水がさらに複数の槍を宙に作り出し、一つ、また一つと様子を見ながら攻撃を加えている。
未波はマイケイルに治癒をかけているようだ。痛みを少しでも和らげたいのだろう。だが、マイケイルの叫び声からその効果はあまり出ていないように見える。
「流石殿下!凄い魔力をお持ちだ。だがそのような攻撃を受け続ければ、さすがに魔力が枯渇してしまうだろうね。殿下の魔力が枯渇した後はこの魔道具も機能しなくなる……と思ったかな?」
またも笑顔を見せるアレサントロス。
「この魔道具の凄いところは、拘束された者の魔力が無ければ、その者の魂を、生命力を絞り出すようになっているんだよ」
俺は打開策を考えながら身構えるばかりであった。
「その手を放しなさい!」
「シャドーバインド!」
悩む俺の背後から、突然池田さんの叫び声が聞こえた。
それに寄り鎖を持つ手を咄嗟に離す兵士。次の瞬間、玉井さんが床に手を突き[影縛り]が発動され、マイケイルの周りにいた兵士にまとわりつきその動きを静止させていた。
「ナイスだ2人とも!」
俺はマイケイル以外を敵認定して[強制退去]を使う。
マイケイル以外が強風に耐えようとしている中、すでに飛び出していた松本がマイケイルを確保して戻ってきていた。その手にはちゃっかりとあのアレサントロスが持っていた魔導具を確保して。
マイケイルに巻かれていた鎖は一切の抵抗なく外れていったのは魔道具としての機能が停止しているからだろう。未波が治癒をかけ、マイケイルは胡坐をかきながら大きく息を吐き出していた。
「さて、これで障害はなくなったけど?」
石川がそう言って前に出る。
その両手の上には四つの魔法の玉が浮かんでいる。4色のそれをみて何気に羨ましいなと思った。
「ぐぬぬぬ!こうなっては仕方ない!お前達、出番だ!」
慌てて玉座の後ろに回りそれに身を隠すようにしていたリンカロールが叫ぶと、先ほどまでは棒立ちだったはずの両端に控えていた大柄の男が身構えた。
その2人は俺達を威嚇するように大声を上げた後、二回りほど体が膨張しているようにも見えた。むき出しの腕や顔には太い血管が浮き出るようにして脈打っている。その2人の首には黒い刺青のようなものが描かれている。
咄嗟に[偵察]で確認すると狂暴化と隷属化といった2つの状態異常となっており、そのステータスも飯田に迫る程のものとなっていた。
「わっ、ちょっと!それは使わないって約束っしょ?」
アレサントロスはそう言いながら壁端まで一目散に逃げ出している。
「煩い煩い!これを使わずして、どのようにしてこの場を切り抜ける!このまま捕まれば私達は殺されてしまうのだぞ!」
唾を飛ばしながらそう言うリンカロール。
その目は血走っていて恐怖を感じる。
その間に、奇声を上げながら襲い掛かってくる2人の兵士。
背中に背負っていた大剣を叩きつけてくる。
俺と未波が鉄壁と結界で受け流すようにしている間に、石川と清水が無数の魔法を叩きつけていた。魔法が叩きつける度に2人が腕に嵌めている腕輪が光を放つ。2人はダメージを受けている様だが、それを気にする様子はなく、大剣を振り回していた。
松本が氷を纏った剣で切りつけ、玉井さんが[影の支配者]により複数の分身体を操り突撃させている。2人の攻撃が当たる度、先ほど同じように腕輪が光を放っていた。
「ついに私にも出番がきましたわ!」
嬉しそうにそう言ったフランが詠唱を始めた。
「私の純然たる思いに応え、我が身を守る剣を、盾を、そしてその存在を大いに体現なさいませ!勝基様への無常の愛をお示しする為に!さあ、[巨人兵]!降臨ですわーっ!」
俺はその詠唱を聞きつっこみを入れたかったが、それでフランが力を発揮できるなら、と飲み込むことにした。
フランの前に描かれた大きな召喚陣から、ゆっくりとメタリックなガーディアンがせりあがってきた。
俺はその光景に少しだけ興奮した。
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