88.王国に仕込まれれた罠 03
「あれ?ここどこだ?」
室内を確認しながらそう言ったのは松本だった。
広い室内はいくつかの家具や良く分からない物が設置されているだけの状況、入ってきた入り口以外、他に続く扉などは無かった。
「道、間違えた?」
「いや、そんなはずは……と言うより通路おかしくなかったか?いつもは左に曲がって……でも左の通路がなくて……」
飯田と清水も周りを見渡しながらそう話していた。
「戻った方が良いと思う!」
「やばい!戻ろう!」
加藤さんと石川が叫ぶと、飯田もすぐに反応し戻ろうと駆け出した。……が、開いていた扉は大きな音と共に締まってしまう。
「えっ?なんで?」
そんな声が聞こえ危険を感じ身構える。
「飯田君アレ壊して!」
加藤さんが部屋の隅にある物を指してそう叫ぶと、飯田は剣を抜きそれに切りかかる。
「[聖光雷撃]!」
叫びながら剣を叩きつけるように上から降りぬく飯田。その剣先にはバチバチと光る雷撃を纏っている。
「うっぷっ、なんだこれっおえっ……」
飯田が切り付けた真っ黒な四角い箱、そこから延びていたいくつかの短い管から薄茶色の何かが放出され、それをモロに浴びた飯田は顔を拭うようにした後、蹲るようにして嘔吐いていた。
黒い箱は真っ二つに破壊されたものの、その残骸からは同じように薄茶色の何かが漏れている。
「ごめん、失敗かも?未波、結界張って、飯田君もこっちに……」
加藤さんが少し涙目になりながらそう言うと、清水と石川で飯田を引きずるようにして戻ってきた。
俺達の周りには未波が結界を作り出す。
飯田の様子を見ると、少し目が虚ろであった。
「毒とかではないみだいだけど……」
未波が[上級治癒]と[浄化]を使っているようだが、飯田の様子は変わらず意識が朦朧としているようだ。
結界に加えて[聖結界]を作り出し周りの空気を浄化させているが、結界外には可視化できている程の淀んだ霧状の空気が、室内に充満している。結界を解けば間違いなくみんな飯田と同じような状態となるだろう。
柳本さんがいれば[簡易物品鑑定]であれが何かは分かるのだろうが、今はそんなたらればを考えても仕方がない。
「とりあえず、飯田は暫く無理そうだな。捨てていこう」
「いや待て。せめて連れてこうぜ?」
そんなやり取りをする石川と清水。
結局、この部屋を抜けれた時に飯田が回復していない場合、松本が背負って行くことになったようだ。
「ちょっと試してみて良い?」
そう言いながら玉井さんが扉へ向かって歩き出す。
結界の端に立ち床に右手をついて扉を見ている。
「我が影よ、目の前の敵を突き破れ!シャド-バインドッ!」
玉井さんの詠唱により[影縛り]が扉の前にまで伸びた影が形を変え槍のように幾重の攻撃が繰り出され、扉へ伸びてゆく。
だがその攻撃も扉の周りを守っている何かに弾かれてしまう。攻撃が当たるたび、未波の結界のような光が一瞬点滅しているように透けて見えた。
「うーん、それじゃ厳しそうだな。じゃあ佐田、後は頼むな」
「えっ?何が?」
上原にそう言われた俺は戸惑っている。
戸惑う俺を他所に未波に結解を広げるように伝える上原。
結界の端まで移動すると、未波はさらに内側に結解を作り出し、上原の合図と共に外側の結界を解いた。
「ちょっとここだけっ、ぶっ壊しちゃってよ神の一撃っ!」
上原の間の抜けた詠唱と共に扉に向けられた両手から、[聖なる裁き]の者と思われる球状の光が放たれ、扉を包み込むようにした後、気付けばそこにあった全ては消失していた。
「あとはみんな、頼むぞほんと」
そう言い残して上原は大の字になって倒れ込んだ。
「巻けよ微風……志田さん、もう結界解除して良いよ?」
「あ、うん。わかった」
清水が風を吹かせ結界内を包み込む。
未波が結界を解いた後、その風と共に淀んだ空気は全て室外へと放出されていった。
俺は眠りこけている上原を背負い歩き出した。
扉があった場所までくると、右側にはこの部屋に入る前は無かったはずの通路が見えた。
魔導具などにより、先ほどまでは壁に偽装されていたのかもしれない。上原の攻撃により纏めて破壊され、それも解除されたのだろう。
そんなことを考えていると、山崎さんが俺の肩をトンと突く。
「勝基君、上原君はこの子に任せて?」
振り向くと山崎さんの隣には大きな魔馬がいた。
眷属化された馬の魔物。最近山崎さんがお気に入りにしている子だ。真っ黒な体に耳の後ろに小さな角がある少し顔が怖い魔馬。
その魔馬の背には未だ目の覚めない飯田が乗せられている。俺は上原を飯田の後ろに腹ばいに乗せると、魔場はブルルと鳴いた。
そのまま先を急ぐ俺達。
玉座の間へと続くはずの通路で走っても中々扉までたどり着かない現象を体験するが、加藤さんが罠に気付き清水に発生源のランプを破壊させ、ようやく扉の前までたどり着くことができホッとする。
加藤さんだけは自動罠解除が発動しない罠の存在に悔しがっていたが。
「由衣ちゃん、扉の前には誰もいない?いないよね?」
「うんうん。誰もいなーい」
少し苛立っている加藤さんが池田さんに確認を取ると、扉にあてる。
その数秒後には室内から大きな爆発音が何度か聞こえた。
「行こう!」
加藤さんは扉を開けたので、俺達は慌てて部屋の中へと飛び込んだ。
「うわぁ……」
室内には黒い煙が立ち込めている。
おそらくだが加藤さんが扉越しに遠隔で爆発罠を設置して爆発させたのであろう。
「誰だ!敵襲か!」
「外の警備はどうなっている!」
そんな怒号が聞こえる中、室内に入り臨戦態勢を整える。
「巻けよ微風」
清水が風を巻き起こし煙を飛ばす。
正面の玉座に座るのは1人の男。
マイケイルは鎖を巻かれ膝をついている状態で兵士達に剣を突き付けられている。今のところ怪我は無いようだ。
その周りには俺達を睨む兵士達に、同じように拘束されている者達、それに床に倒れ込んでいる者が何人か見えた。
「未波、あそこの奥、1人だけまだ生きてる!」
俺は[偵察]で確認ができた者を指差した。
「分かった!私の願いに応えて!癒しの光、エリアヒール!」
未波の翳した両手から光が伸び、倒れている者達と包み込むように[範囲回復]の光が輝いている。
池田さんが一歩前に出るとダンと足踏みをして周りの兵士達をにらむ。兵士達は怯えた表情で後退っていた。池田さんの持つ[鋭視]というスキルの効果だろう。
とはいえ、マイケイルを取り囲む兵士達はマイケイルに剣を向け続けている。
俺はいつでも鉄壁を発動できるよう身構えながらそれを見ていた。
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