87.王国に仕込まれれた罠 02
買い物を楽しんだ未波達が城に戻ってきたのは少し前のことだったようだ。
その時にはすでに人が溢れかえっていたらしい。
多数の城勤め者達が城を取り囲む兵士達に阻まれ入城できなかったことで騒ぎになり、様子を見ようと野次馬のように近隣の人々が集まってきているらしい。
城を取り囲む兵士達に対して、反目するように睨み合っている兵士達もいる。フランや飯田は国王マイケイルとの直通の通信具を渡されていたが、それも繋がらないようだ。
これはクーデターでは?
マイケイルからは"御しやすい者達を残し可能な限り反対勢力を排除した"とは聞いていた。"公爵家などの一部の排除できない勢力も残っているが、それらには注視して行動しているので大丈夫"とも聞いていたが……
他国の事とは言え、このままマイケイルが殺されでもしたら後味が悪いな。そんなことを考えながら辺りを確認すると、飯田が池田さんや締め出されていた兵士達と何やら話をしているのが見えた。
飯田と池田さんが俺の視線を感じたのか振り向き、俺の傍まで寄ってきた。
「あっちの兵士達に聞いたが今のところマイケイル殿下と殿下を支持する人達は無事だそうだ。取り囲んでいる兵士達の話だから、100%信じて良いかはわからないがな。
丁度ダンジョンの調査で殿下の信頼できる兵士達も出払っていて、その隙にやられたようだ。そう考えるとあのダンジョンの異変もこの為の布石、まんまと敵の策に嵌ってしまったようだ」
飯田が悔しそうに俺を見る。
「今、マイケイルさんは拘束されてる。他の人達も拘束されてるけど何人かは拘束を解かれたりしてるから、寝返るように説得してるのかな?周りに……倒れてる人が見えるから、見せしめで殺されちゃったのかも」
[千里眼]により城の中が確認できるのだろう。池田さんは不安そうな表情で俺に様子を伝えてくれた。
「佐田、強行突破するか?」
飯田が抑えきれない様子で俺に聞いてくるので、なぜ俺に聞く?と思いつつも頷いていた。
日本と比べ命が軽いこの世界だということは分かっている。今世紀最大の大量虐殺、みたいなことが平気で起きるこの世界だが、俺がそれに慣れることはないようだ。
湧き出る怒りの感情に拳を強く握る俺は、気付けば背後から包み込まれるように抱きしめられていた。背中には柔らかいものが押し付けられ、甘い香りが漂ってきたことに戸惑ってしまう。
「私も、行くからね」
「私もお手伝い致しますわ!」
「私もね」
後ろにいるのは未波だろう。横から顔を出したフランが俺の腕に体を密着させる。目の前にいた池田さんは俺の胸に掌をそっと添えてくれた。
「よし、行くか!」
飯田がそう言った後、俺達は城を取り囲む兵士達に向かって歩き始めた。
その様子に兵士達は怯み戸惑っているようだ。
「ゆ、勇者様方、此度の事は我が国の問題なのです!で、できれば手出しは、無用でお願いしたいっ!」
他の兵士達より少し良い装備に身を包んだ男が怯えた表情を見せながらもそう叫ぶ。
周りの兵士達もその言葉に合わせるように騒ぎ始めた。
「俺達は今、この国に、ワイドドラゴ国王に招かれて来ている身だ。それにここには帝国の皇帝陛下、フランソワーズ様もいらっしゃる!そんな中、友好国でもある王国の国王陛下に危機が迫っているということであれば、俺達も動かざる得ない!」
「そ、それはそうですが……」
飯田は兵士達を気にする様子を見せずに前へ出る。
兵士達が後退りながらも自然と城の入り口が空いて行く。
「お、王国の、未来の為にっ!」
一人の兵士がそう叫びながら剣を抜き、飯田に襲い掛かってくる。
「くっ、やめろ!」
それを剣を抜かずに受け止め投げ飛ばす飯田。
「何が王国の為、ですわ!国の人々にこのような大きな不安を与える愚策を使う者達に、皆が笑って暮らせる平和な国を作れるわけありませんわ!」
一歩前に出たフランがそう叫ぶと、兵士達は顔を歪め、殆どの者達は項垂れるように下を向き膝をついた。
「何をやっている!他国の者達に懐柔され役目を放棄するとは!王国兵士はそこまで軟弱になってしまったというのか!」
そんな大声が聞こえ声の出所を確認する。
城の入り口の近くに設置されている建物の扉近くに立っていた男は、鼻息を荒くながら俺達を睨みつけていた。その派手な衣服からその男は貴族か何かなのだろう。
「今回の件が上手くいかなければ、すでに手を貸したお前達も皆処刑されることになる!王族への謀反だからな!一族郎党、全ての者達が刑に処されることになるのだ!もっと死ぬ気になって抗わんか!」
顔を真っ赤にしながらそう話す男。
ベテルギース・サンタス。
その男は[偵察]で見る限り特に脅威には成りえないが、その両隣に立っている護衛と思しき悪人顔の男2人はそれなり戦えるようだ。2人の装備から兵士には見えないので、雇われた冒険者かなにかなのだろう。
「ここで矛を収めた者達は処分を軽くするようにと、私が殿下にお伝え致しますわ!ですからここはお引き下さいませ!」
「何を生意気な!あの女は所詮他国の者、無責任な発言で惑わすのはやめてもらおう!さあ皆の者、王国の兵士の力、今こそ見せつけてやるがいい!」
頑張るフランに反発するようにそう話すサンタスという男。
サンタスの言葉に背を押されるように、前に出る一部の兵士達。
その者達は皆、手を震わせながらも剣を抜いていた。
「飯田、先に行ってくれ」
蘭堂がそう声をかける。
「じゃあ俺達も」
そう言ったのは横井だった。その後ろでは不和さん達も頷いている。
「本来は我々の仕事ですが、助力感謝申し上げます!」
マイケイルを支持する締め出されていた兵士達はそう言って頭を下げ、この場の対処をするようだ。
「殺すなよ?」
飯田は蘭堂にそう声を掛け、俺を見て「行こう」と一言……俺もできればこっちに残りたいのだが、未波達も城に入る気満々のようなので仕方なく飯田達の後を追った。
[鉄壁]を格子状に発動し道を作ると、俺達は城へと入ってゆく。
すぐに破壊された[鉄壁]だったが、後を追おうと寄ってきた兵達は蘭堂達残った者が押さえていた。
サンタスは俺達が動きに合わせ建物の中へと逃げ込んでしまった。
両隣にいた男達が抜刀して染まってくるが、飯田と松本により左右に弾き飛ばされる。ステータスの差を考えれば後はみんなに任せればよさそうだ。そう思って先を急いだ。
城内に入り改めて確認する。
入城したメンバーは飯田達と俺、フラン、未波達と池田さん。何も言っていなかったが杉浦さん達はあっちに残ったのだろう。
城の中にはすでに臨戦態勢の兵士達がこちらの様子を伺っている。
俺達はマイケイルが捉えられていると思われる玉座の間を目指し、向かってくる兵士達に怪我をさせないよう配慮しながらも走り出した。
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