86.王国に仕込まれれた罠 01
――― ワイドラゴ王国、王都ワイドラシティ・冒険者ギルド
俺達は様子を見る為に朝一でダンジョンへ向かい、冒険者ギルドの広い通路で王国の冒険者達に絡まれていた。
「お前達がダンジョンに何かしたんだろ!俺達に嫌がらせをする為に……帝国のスパイ共め!」
「俺達は長い間ダンジョンに入れなくて我慢していたんだ!やっと落ち着いたと聞いて潜ってみたら、以前よりさらに魔物があふれてたじゃねーか!余所者が勝手に荒らしまくるから、またおかしくなっちまったんじゃねーのか?」
「余所者は邪魔だからさっさと帝国へ帰れ!このクソガキ共が!」
冒険者と思われる男が3人、俺達に詰め寄り怒りをぶつけてくる。
周りにいる他の冒険者達も俺達を敵視するような視線を向けている。
「俺達はその異変を調べるために来ただけだ。邪魔をしないでくれ!」
飯田がそう言って冒険者達を睨むが、一瞬身を怯ませた男達はさらに強気で怒鳴り声を返し、ギルド内は剣呑な雰囲気が漂っていた。
「静かにせんか馬鹿者共が!」
思わず耳を塞いでしまう大きく野太い声がカウンターの方から聞こえ、静まり返るギルド内。
その声の主は盗賊の首領のような見た目の髭面の大男であった。
「異変はこちらでも調査する!こいつらは陛下自らスカウトしてきたガキ共だ!文句があるなら俺が聞いてやる。おら、前に出ろ!」
太い腕を前に組みそう言う男。
その迫力に負けたのだろう。先ほどまで騒いでいた男達も何もなかったかのように装い俺達から離れていった。
「すまんな。俺は一応ここを任されているサンターナだ。陛下から話も聞いている。今のところ30階層前後で魔物がまた溢れかえっているそうだ。信頼できる者達に調査をさせているが、まだ何も分かっていない。
すまんが原因がわかるまで間引きをお願いしたい」
頬を掻きながらそう言う男の願いに、飯田が「分かりました」と返した後、俺達はダンジョンへと入って行った。
飯田と蘭堂はいつものメンバーで二手に分かれ30階層より上を。残りのメンバーは不破さん達は当然のように横井のグループと共に、俺はフランと未波達と杉浦さん達4人というメンバーで、二手に分かれ30階層より下をくまなく見て回っていた。
このぐらいの階層であればチラホラと他の冒険者達を見かけるが、どの冒険者も俺達に向ける視線は冷ややかなものだった。
他の冒険者達も必死で狩りをしている影響もあってか、魔物の湧きとしては少し多いなという程度の印象ではあった。そんな中、昼頃に蘭堂から連絡が入り33階層へと全員が集まることになった。
蘭堂達が33階層の外れとも言って良い場所で発見したのは、天井付近の壁に張り付くように設置された10センチほどの魔導具のようなものであった。
「魔素強化装置だって。周りの魔素を増幅させる魔道具みたいよ?」
柳本さんが[簡易物品鑑定]を使って確認したであろうことを説明する。
明らかにこれが原因なのでは?
「これが原因だな。これを壊せば異変は止まるようだぞ?」
「天啓か?」
「ああ」
頷きながらそういう石川。
[天啓の閃き]の二択設問でその回答を出したのだろう。
「よいしょっと」
清水が[飛翔]を使って浮かび上がり短剣でその魔道具をはぎ取っていた。
「これ、まだあるかもしれないな」
その疑問を口にした石川が何かを考えている様子を見せる。
「42階層、後は19階層にもあるようだ」
石川の説明に頷く飯田。
「分かった。俺達は42階層に行く。蘭堂達も頼む。19階層はみんなに任せる。でいいか?」
飯田が俺の方を見ながらそう言うので、思わず「良いんじゃないか?」と言ってしまう。なぜいつも俺に意見を求めるのか。
その後、残り2つの魔導具を発見した俺達は報告の為に城まで戻ってきた。
「これがその魔道具だね」
そう言って回収した魔道具を手に持ち眺めるマイケイル。
「困ったなー。まさかダンジョンの異変が人為的なものだったなんて」
ため息をつきながらそう言った後、側にいた男性にそれを渡していた。
「君達には魔物の駆除から原因の特定まで世話になったね、ありがとう。後はこちらに任せてくれないか?信頼のおける騎士や冒険者達に依頼して各階層の調査と不審者の警戒にあたらせる。
君達は暫くゆっくりと観光でもして王国を楽しんでほしい。それに飽きたら言ってくれ。すぐに召喚陣を起動させてもらうよ。もちろんこのまま王国に永住してもいいんだけどね?……私に仕えたいという者はいるかな?もちろん好待遇でお迎えするよ?」
「マイケイル殿下、私の前で堂々と引き抜こうとするのはおやめください!」
フランが頬を膨らませそう言うと、マイケイルは笑いながら謝っていた。
フランも本気で怒っているわけではなさそうだが。
好待遇という言葉に誰か乗っかるかなと思ったが、どうやらそれは杞憂だったようだ。ともかく、やっと帰る目途がついたことに安堵し、その日は安心して眠ることができた。
翌日、最後の挑戦として俺は飯田、蘭堂のグループと共に51階層からどこまで行けるか挑戦することになった。
気乗りはしなかったのだが、女性陣と横井達は街に買い物に出かけるというので、未波達が一緒に行こうと早朝から誘いに来ていたのだ。
いつものメンバーとは言え、女子達に交じって買い物に連れまわされるのは憂鬱だと思っていたところに、飯田達からの誘いもありその誘いに乗っかった結果だ。
正直こっちも面倒だとは思ったが、そのまま部屋でのんびりは許されない雰囲気を漂っていたので仕方ないなと諦めた形だ。
とはいえ、先ほどから只々飯田達の後をついて回るだけの時間が過ぎている。偶に鉄壁や強制退去を使って援護するが、正直役に立っているかは微妙だ。俺が役に立ったのは昼飯時に格納庫から飯を取り出したぐらいだろう。
それぞれ魔法の鞄は持っているが、野村さんから提供されている料理については俺が大量に確保しているということもある。
野村さんは備蓄用の食材や料理をいつも俺に渡すのだ。
もちろん彼女自身も[食料庫]に入れているそうだがあまり大量には入らないようで、大量の備蓄分が俺にと渡されている。なんでも魔法の鞄では時間経過と共に品質が落ちるのだとか。
みんなが所持している鞄は時間停止機能も付いているはずなのだが、彼女の舌には多少だが劣化していると感じられるそうだ。その微妙な変化が許せないらしい。俺の格納庫は完全に時間停止しているようで、安心なのだと。
そんなのんびりとしたダンジョン探索を楽しむ飯田達は、57階層まで進んだところで夕食時となり帰路に就く。
冒険者ギルドから城に向かうと城を取り囲む人たちが見えた。
ガヤガヤと騒がしい中、人込みを掻き分け進むと、城の周りを取り囲む兵士達が見え、それを不安そうに眺めている未波達を発見し、その状況を聞く俺達だった。
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