85.異世界人と王国の貴族 04
50階層の試練を終えた翌日。
新たな力を試したくてダンジョンに籠る俺達。
50階層で[肉体改造]を使ってみるが、5分間のチートタイムは有用でだった。
だが、その後の20分間は死んでいるようなもの。手詰まりの際の最後の切り札としてぐらいしか使えないなと思った。
動けない20分間を、周りの好奇な目に晒されながら未波達に体をいいようにされるのもきつかった。
発動時には適当に考えた詠唱を使ってみたが、特にその内容に変化も見られなかったし、今のままではデメリットが大きすぎて本当に最後の手段として使うしかないだろうと理解した。
気を取り直して挑んだ51階層。
このダンジョンの通常営業なのか魔物の湧きは緩やかだった。
それでも強力な魔物達の出現に気を抜けば死の危険がある状況、強くなった俺達はそれほど問題も生じることなくこの階層の探索を終え、昼過ぎには一旦報告の為にと城へと戻ることにした。
試練から一夜明けたばかりなのに俺達の今の装備品は不和さんの新たなスキルで属性も付与されたりと、さらに強化が成されている。北山さんが新たに作成した対魔物の攪乱用魔道具もかなり有用であった。
それらにより難易度もさらに下がっているのだろう。
ダンジョンを出た際には、俺達には嫉妬の混じった眼を向けられていることも感じ取ることができた。今の世代では50階層を超える冒険者達はいないようで珍しいドロップ品の数々に良くも悪くも皆が注目しているようだ。
取り合えず50階層までの異常な湧きは治まっているので、当初の目的は終わったと言っても良いだろう。
国王マイケイルにも感謝され、暫くゆっくり王国を楽しんでほしいと言われたが、俺は正直早く森へ帰りたかった。
それから数日ゆっくり城で過ごした後、俺は王国の街中を歩いていた。
部屋で寝ていた俺を朝も早くから強襲した未波達に、強引に観光へと連れ出されてしまったのだ。
両サイドには未波とフラン、未波の横には池田さん、フランの近くには護衛として飯田達が控えている。
案内をするのは王家直属の筆頭執事だという事がわかったあのイケオジである。他国の王であるフランを案内するのだから当然ではあるが、そもそも他国の王が危険なダンジョンに同行するのは如何なものかと思ってしまう。
本人の希望なので仕方がない事だろうか。
「次、あれ食べたい!」
「では参りましょう!勝基様、行きますわよ!」
俺は引きずられるように見た目がクレープのような焼き菓子が売られている店先へと移動させされた。
クレイプというその焼き菓子からは甘い香りが漂ってくる。
無難にイチゴクレイプというものを選択し、店の横に設置されたベンチに座りかぶりつく。この世界のイチゴは甘みが少ないが、クリームはそれなりに甘く美味しかった。
ホッと一息ついた頃、近くでじゃんけんをしていたフランと池田さんが俺の両隣に座り笑顔でクレイプを食べ始めた。未波は悔しそうに俺の前に立ってクレイプにかじりついている。
なぜこのタイミングでじゃんけんをしたのか意味不明ではあるが、色々考え始めると多分見当はずれな答えを導き出してしまいそうなので、無心でクレイプを腹に押し込める。
途中からあまり味が分からなくなったが、多分美味しかったのだろう。
そんな憂鬱でもあった観光を終え城へと帰りつくと、飯田はマイケイルが読んでいると言われ俺達から離れていった。
俺も若干の気疲れを感じ部屋へと戻ると、ぬるめのシャワーを浴びてラフな格好に着替えるとベッドに寝転がっていた。
そんな中、扉がノックされる。
一瞬未波達かなと思ったが、訪ねてきたのはあのイケオジ執事であった。
「佐田様、陛下がお呼びです。飯田様もおりますゆえ、申し訳ありませんが御足労頂ければと……」
そんなことを言われ慌ててベッドから降り執事の案内で移動する。
執務室と呼ばれる部屋へ入ると、険しい表情をしたマイケイルと飯田が待っていた。
そして、ダンジョンの30階層付近でまた魔物達が多数湧いているとの報告を聞くのであった。
◆◇◆◇◆
――― ワイドラゴ王国、王都ワイドラシティ内某所
室内では3人の男がテーブルを囲み向かい合いながら唸っていた。
「帝国から来た客人は、かなりの手練れでございますな」
「忌々しいことにな。50階層をあのような短期間で攻略、多勢での攻略とは言え、試練は5人までという普遍のダンジョンルールがありますので、どの者達もかなりの力量とみて間違いは無いのであろう」
ソファに座る男2人はそんな会話の後、大きくため息をついた。
この部屋の主でもある男は、そんな2人を睨みつけながら目の前のテーブルに拳を落とす。
「何をびびっているのだ。すでに追加の策を講じておるのだ。所詮は客人。いつまでもこの国に居続けることはできない。気にする程でも無かろう」
「フランケール殿、確かにそうではありますが、あの王は何を考えているのかさっぱり分からず、このままでは私達の計画も変更を余儀なくされるのでは?」
この部屋の主であるフランケールに対し、男は不安を口にする。
「まあまあ。フランケール殿もすでに対処をしておられるご様子。我々はすでに一蓮托生、フランケール殿に協力をすると決めたではありませぬか?」
もう1人の白髪の男が身を乗り出して対面に座る男を宥めている。
「とにかく、計画は今まで通りダンジョンの活性化を促し続け、客人が帰れば良し、客人の中にいると噂されている帝国の王に何かあればさらに良し。何も無くとも、それはそれ、何かあれば儲けもの、そう考えてよいのでは?」
白髪の男、ルッカネル・アレサントロスはそう言って笑う。
「儲けもの?私がそのような軽い考えでこの計画を立てたとでも?」
ムッとした様子でフランケールはそう言うと、今後の計画についての若干の変更となった予定の内容を語り始めた。
「あの程度の対処ではどうしようもない所まで計画を進めることができた。あのバカな前王は扱いやすく崩御したのは残念であったが、いまさら王が変わったとて何も恐れることは無い。全てはもう終わっているのだから」
フランケールのその言葉に、2人も笑みを取り戻す。
その数十分後、部屋からは2人の男は機嫌良く帰路についた。
「すべては王国の未来のために」
そう言い残して……
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