82.異世界人と王国の貴族 01
※思うところあってタイトル改変いたしました。中身は一切変わっておりません。
少しだけ懐かしくなってしまったアパートの一室。
俺はそこで青い制服に身を包み、警棒を振り回していた。
「なぜ俺はこんなことを……」
そう呟くが警棒を持つ右手を止めることができなかった。
際限なく湧き出る恐怖感を拭うように警棒を振り回す。
この場所は、俺が絶対に守るんだ……
そして、その部屋のドアがけたたましくノックされ強引にこじ開けられた。見知った侵入者、元クラスメイト達によりボコられ……という夢から目覚め、部屋に突入してきた未波ほか数名により体を揺さぶられ目覚めた。
そして試練で得た力について質問が投げかけられる。
「なにもこんな朝から来なくても……」
「だって、勝基君、昨日教えてくれなかったし。早く知りたかったの!」
「そうですわ!大事なことですわ!私も気になって昨夜しか寝られませんでしたわ!」
未波とフランに急かされる。
その隣には加藤さんと池田さんが好奇の目を向けている。とりあえずフランに夜しか寝られないというネタを教え込んだのは誰か確認したい。他にも何を聞いたのかも含め話を聞いてみたい。そんなことを考えた。
それにしても部屋は鍵がかかっていたはずだが?そう思ったのだが、そもそもフランがいるし、執事っぽいイケおじが扉のそばに控えている。カギなんて有って無いようなものなのだろうと察してしまった。
俺は上半身を起こしベッドの上で胡坐をかくと、仕方なくステータスをもう一度確認する。やはり見間違いではなかったんだな……
そして溜息をつきながら口を開く。
「クラスが、自宅警備員、に変わった」
俺のその言葉に最初に反応したのは加藤さんだった。
布団に突っ伏すように顔をうずめ笑い声を堪えている。
「自宅警備員ですの?それはどういったクラスなのでしょうか?」
フランが首を傾げながらそういうので、未波が耳打ちをして説明しているようだ。池田さんは笑顔だ。何がそんなに楽しいのか?
「勝基様ならきっと素晴らしい自宅警備員になれますわ!」
俺はフランの言葉を無視すると、もう一度ステータスを確認する。だがやはり新たに増えたスキルは無かった。
「クラスが上がったのなら何か変化とか、そういうのはないの?」
未波の言葉にもう一度スキルの一つ一つを確認する。
すると、今までは意味のないスキルだと思っていた[拠点防衛]が、明確に一定の範囲での各スキルに補正がかかるのだと理解することができた。
その範囲は凡そ3メートル弱、まるで4畳半の俺のアパートの部屋のような……
「あー、俺の近い位置、そこら辺ぐらいの距離でスキルの能力が向上するってさ。どのぐらい上がるかは検証するしかないけど」
俺の投げやりな返答にも3人は喜んでくれた。
クラスの名前が酷いのは今更だな。
どうやら俺は3人の喜ぶ顔を見て気持ちを切り替えることができたようだ。
その後、朝食を終えた俺達は互いの新たな力を確認しダンジョンへ向かう。
そしてダンジョンの入り口、冒険者ギルドの広い通路を抜けた場所ではいつも以上に人が多いが、雰囲気がいつもとは違う。
いつも見かけるような冒険者達から距離を取るように固まっている者達の姿に違和感を感じる。それらは恐らく良い身分なのだろう。派手な服装をして周りに従者を侍らせ何やら好奇の目をこちらに向けている。
「よぉお前達、昨日試練をクリアしたんだってなー!」
見知らぬ冒険者が寄ってきて飯田達に向かってそう声を掛けてきた。その表情は俺達を下に見て蔑んでいるように見えた。
「そうだが、それが何か?」
口を開きかけた飯田の前に出た石川がそう話す。
「生意気なクソガキだな……お前達、帝国からの客人なんだってな。国王様にどうやって取り入ったが知らんが、多人数でダンジョンを攻略しやがって。我儘顔でダンジョンを私物化しているお前達にみんなご立腹だぜ?」
「は?お前達も頑張って攻略したら良いだろ?」
冒険者の言葉に石川がバカにしたように言い放つ。
剣呑な雰囲気に一歩足を引いた俺。
「あんま調子に乗るなよ?お前達には御貴族様方も苛立っておられるってよ。無事に国に帰れるといい―――」
「煩い黙れ!」
男の声を遮るように叫んだのは、男を隠すように俺の前に移動した池田さんだった。
[強制執行]を使ったのだろう。
池田さんを避けるようにしてみたその男は、口をパクパク動かすが声が出ない様子だった。
「ぐっ、今何をした!」
すぐに口を開くことができるのは、目の前の男がそれなりに強いからなのだろう。[強制執行]は格下にしか効果が無いからだ。
それこそ圧倒的な能力差があれば、池田さんの命令には魔力の続く限り絶対服従となる恐ろしいスキルでもある。
「30階層までは俺達が掃除をしておいた。安心して狩ると良いよ」
絡んできた男に向かってそう言ったのは飯田だった。
男は飯田にも絡もうとしたのか視線を向け……そして後退るように壁際へと張り付いた。無様にも足をカクカク震わせているが、男の反応は正解だろう。俺でもそうする。
ここ数日飯田の機嫌が頗る悪い。
俺は今の飯田に絡む勇気はない。
「もうイイな?」
周りの冒険者達や御貴族様と思われる男達がざわつく中、そう一言告げた飯田が行こうと号令をかける。その飯田に追随するように、俺達はいつものようにダンジョンの入り口をくぐった。
背後から一際大きな怒号が聞こえた。
その日は全員で新たな力を確認しあった後、早めにダンジョンから戻った俺達。出迎えてくれたマイケイル国王から王国の貴族連中がよそ者の俺達を危険視する陳情があったことを知らされる。
それと同時に、すぐに黙らせるから何かちょっかいがあったら教えて欲しいと笑顔で言われたが、俺はあの召喚の間でのことを思い出し背中に冷たい汗が流れた。
関わりたくないなと思いつつ、翌日からのダンジョン攻略に意識を集中させた。
◆◇◆◇◆
最近感情がコントロールできないことがある。
原因は分かっている。
醜い嫉妬心が溢れてしまい我ながら嫌になる。
この国にたどり着いた翌日、俺はベッドの上で3人もの女性に迫らせている佐田を目撃してしまった。
いや、そもそも迫られていたかも分からない。
もしかしたら強引に引き寄せられ、まさに佐田により乱暴をされる直前であったのでは……そんなことはあり得ないのは分かっている。
佐田は一応だが信頼できる仲間だ。
元々はただの元クラスメイトであったが、再開した時には俺の過ちにより一生かけても償えないような事をしてしまった。そんな俺を佐田は許してくれた。少なくとも表面上はだが。
そんな佐田だったから志田さんのことも見守ろうと思い身を引いた。志田さんがどうやら佐田の事を放っておけないようだったから。
それなのに……
なぜ佐田はいつまでも曖昧な態度を取り続けているのだ!好きなら好きで告白でもして玉砕するか交際するかしたら良いじゃないか!それならそうで諦めもつくんだ!
それだけでもイラついてしまうのに、フランソワーズ姫まで巻き込んで……たしかに姫は佐田の事を好いているのは知っている。佐田はあれだけの好意を寄せられ気付かぬとでも言うのか?
気づいていながら煙に巻いて状況を楽しんでいるとでも言うのか!
さらには、この世界にくるまで俺の事を熱い視線で見て来ていた女の子達の中にいたはずの池田さんまで、最近は佐田に並々ならぬ好意を寄せているのも感じ取れた。俺は湧き出てくる嫉妬に気付いた時、自分がなんて醜い生き物なのかと頭を抱えたんだ。
だが、俺の悩みも知らず今日も朝から2人並んで楽しそうに……
そんなことを考えていると、俺達に絡んでくる男の存在に気付く。
ああ、イライラする……
俺は柄にもなく嫌味を籠めた冷たい言葉でその冒険者の男を口撃してしまった。すぐに我に返った俺は、仲間達に「行こう」と一声かけ、恥ずかしい気持ちを隠すように足早にダンジョンへと逃げ込んだ。
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最近何かしら所用があり更新が飛び飛びになってしまってますが、来月ぐらいからは落ち着く予定です。まだまだ予定している完結までは程遠いのですが、気を引き締め更新する所存ですのでどうか気長によろしくお願いします。




