77.ワイドラゴ王国の事情 02
――― ワイドラゴ王国・王都城内
会議が終わった後、俺はフランソワーズ殿に許可を取り、一緒に帝国に滞在していた他の者達と一緒に転移門で王都まで戻ってきていた。
もちろん何人かは帝国に残してあるが、それはどの国もやっていること。彼女もきっと分かっているだろう。
それはそうとやはり転移門は楽で良い。何時間も馬車で移動するのは骨身に堪えるものだ。そう思いながら執務室で今後の事を考える。
あの愚弟については急死ということでかたずける予定だ。民からの信も低かったため国葬などといっても形式だけのもので良いだろう。
そして、俺が王の座に着くことについて、城内の者達も一部を除けば概ね好意的に考えてくれるだろうと報告を受ける。
それにしても、帝国のいざこざ後の流れは概ね予想通りではあったが、子供の頃からフラフラとしていた俺が王になるなんて、人生は分からないものだ。できれば可愛い女の子を侍らせてまったりと余生を過ごしたかったのに……
そんなことを考えながら今後の予定を考える。
帝国とはこれから良い関係を作れるだろう。
あのフランソワーズ殿という女帝は噂通り柔軟な対応をしてくれる性格のようだ。
だが油断はできない。かなり頭が切れるなと思ったし、何よりあれほどの武力を備えてしまったことに恐怖を感じる。今や迂闊に手を出せば国が傾きかねない存在となってしまった。
できればあの佐田という男をこの国になんとか留まらせておきたかったが、無理に進めれば逆に反感を買うだろう。あの女帝はそれだけのことで我が国に喧嘩を吹っかけてくるかもしれない。
ゆえにより良い同盟関係を築かなければならないが……
「あー!めんどくせーなー!」
思わず叫ぶと周りの者達に笑われてしまう。いやなんなの?国の王がこんな様子で叫んでるのに笑いで返すとか?
そう考えたが、そういえばこいつら昔からこうだったかな?と思い出してしまう。
昔から城内の者達は俺の父、つまりは先代の王に尽くしてきたものばかりだ。そしてその父は俺を随分甘やかしてくれたものだ。そんな俺は王位継承を弟に押し付け、その結果、今の今までは愚弟の下僕のような貴族連中に好き勝手やられていたのだ。
今回やっと俺が諦めて王に就いたことが嬉しくてたまらないといったのが正直な感想なのだろう。今なら何をやっても笑ってゆるしてくれそうだ。いっそ他の誰かに王という地位を明け渡してみるか?
「なあエルバレル、俺の代わりに王になってくれないか?」
「ハッハッハー。また御冗談を」
宰相を務めるエルバレル・ミミーガルに国王就任の打診を試みるが、軽く躱される。
「いやいや。冗談ではないよ?私はまた放浪の旅に出ようと思ってね?ほら、新たな冒険者を探してこなければならないし?ルカ以外であれば誰がやっても旨く行くと思わないかい?」
「さようで、では陛下、今後の日程の再確認を致します。帝国のような就任式は不要かと思いますが、民への報告は必要です。前王の訃報と一緒にご報告いたしましょう!」
どうやら俺が王になるのは確定事項のようだ。
ならば仕方ない。せめて世継ぎが生まれるまでは頑張らねば……そうなると早く嫁を探さな暮れはならないな?あの忍者ガールはどうだろう?あれとなら楽しい日常が遅れそうだが……
そう考え今回の遠征メンバーに彼女が同行してくれることを熱望した。
そして1週間後、俺の願いは叶わなかったことを知るのだ。
――― 帝都内某所
「それで、お前達も行くのか?」
そう尋ねるのは石川だった。
フランソワーズ姫の就任式が終わった後、すぐに拠点となった帝都内の宿に帰った俺達に、今後の予定としてもたらされた隣国行きの打診。
出発が1週間後ということで強制ではないが、数が多ければそれだけ早く終わるだろうということで会議の結果を受け、俺達に報告しに来てくれた。もちろん報酬も期待してほしいとのこと。
俺は即座に王国へ行くことを承諾する。
他の4人も同様に快諾していた。
俺には、俺達には佐田に借りがある。助けになるなら手を貸そうと以前から心に決めていた。
この世界に来て暫くして、佐田がこの世界に来ていることを知った俺達。あの森での再開は最悪なものであった。前提条件としてあの森は魔物に支配され攻略しなくては国民が危険にさらされる場所だと聞いていた。
だからこそ、あいつとの再会に驚きつつも他の者達、特に浜崎達の言葉に乗せられあいつの居場所を奪うことに何も感じなかった。
もちろん積極的に攻撃に参加してはいない。だが志田さん達のようにあいつを庇うことも無く、まるでゲームを楽しむように数回攻撃を加えてしまった。異世界に来て得た新たな力を試したかった気持ちもあっただろう。
そしてぐだぐだながらあいつと和解した後、中学時代の事、そして森でのことを謝罪した。あいつは「もういいよ」と軽く返してくれていて拍子抜けしてしまったのを覚えている。
あまり気にしていなかったのか?そう思っていたのだが、森での共同生活中にルリさんに来たばかりのあいつの話を聞く機会があり心臓を抉られたような気持になった。
あいつは浜崎達を、そして他の見てみぬふりをしていた者達を絶対に許さない。そう言っていたと。
あいつがかなり酷い虐められ方をしていたのは知っていた。だが、部活に明け暮れていた俺達は無関係なこと、と何もすることはなかった。今思えば、運動部の俺達なら浜崎のような多少腕っぷしの強い奴らなんて敵ではなかったのに。
下手に巻き込まれて怪我でもしたらと思っていたのも事実だ。
もちろんそれだけであれば佐田の逆恨みだろ?と感じたが、森でのこともあり俺達は完全に加害者となってしまった。そう思った時、自分勝手な言い訳だけを並べて過ごした中学時代が、森で佐田に攻撃を仕掛けたことが、酷く黒ずんだ汚点に感じ後悔した。
森で再開した時はルリさんに守られながらも怯えを見せていいた佐田。それに隠れた恨みの念を知り、俺はあいつに恩を返せるならできるだけ助けになろうと考えていた。
できれば森で一緒に暮らし、冒険者として稼いだ分で何かできないか?と考えたが、そもそもルリさんが居る以上金に困ることはないなと考えた。ならば未だにウダウダやっている志田さんとの仲を応援したい気持ちもあった。
森を出たのもそのためだ。俺達が2人の仲を邪魔することは避けたかった。城に常駐することを拒み冒険者となったのもその為だ。いつでも助けに駆け付けられるように……
いや違うな。冒険者となったのは力試しをしたい俺達自身の願いからだ。そう思って何でもあいつの為にと思うこともやめた。俺は楽しくこの異世界を生き抜き、そして佐田を、みんなを助けながら生きて行きたいだけなのだ。
「俺は、佐田の助けになるなら王国にだって行くさ。あいつにも、みんなにも、幸せになってほしいからな」
そう言う俺の言葉に、石川も頷き今後の予定を話し始めた。
話を聞いていた直樹に「その言い回し、飯田みたいだぞ?」と言われイラっとした俺は直樹の尻を蹴る。確かにクサいセリフだったかもしれないと、顔に熱が集まるのを感じた。
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