75.サダーズ帝国誕生? 02
まだ言い争いをしているマイケイルと岸本さん。
「そもそも、そう言った情報をぽろっと口から零れ出てしまうガールが悪いのでは?」
「なっ!確かに、私も迂闊だったわ!ウザマイコーがまさか他国の密偵だったなんてね!この、スパチャラ変態クソ野郎!」
どうやら情報源は岸本さんだったことも分かったが、酷い言われようをされたマイケイルは両掌を上に向けハハハと笑っていた。
「さて、とんだ横やりが入ったが、彼からきっぱりと……とは言えないようだけど断られたようだよ?どうするルカ?」
「ぐぬぬ……では、私の秘蔵っ子、ハイエルフの奴隷をくれてやる!自己再生持ちだからどんな要望にも応えてくれる女だ!それなら森の対価としては十分なはずだ!少し勿体ないが……これならいいだろ!」
俺を睨みながらそう言うワイドラゴ王。
ハイエルフの美女、だと?
室内に沈黙が生まれる。
「お、俺は……どんな誘惑にも負けない!」
俺は少し躊躇しながらも背中に感じる痛みに堪えながらそう叫ぶ。
「だってさ。彼にはすでにパートナーもいるようだ。諦めたらどうだ?」
マイケイルの言葉に背後で「ふわっ!」といった声も聞こえたが、俺には間違いを正してくれる頼れるパートナーがいることに安堵した。
危うく淫らな欲に流され選択を誤るところであった。飯田達と敵対するのは絶対に避けなければならないし、そもそも俺は目立たずにひっそりと森に引きこもりたいのだ。
「それならやはり戦争だ!帝国など我が国の武力をもってすれば―――」
そう言いかけたワイドラゴ王はマイケイルに頭を押さえつけられ床に叩きつけられている。
「お前、この外交の席でなんて危険な発言をするんだ!やはりお前には国を任せるわけにはいかない!」
「ぐっ、ぐるじい!は、はなして……」
ワイドラゴ王は押さえつけられた頭を必死に横に向け、目線で騎士の様子を伺っているが、騎士達に動きはなく、只々前を向いているようだ。
「ぐほぉっ!」
ワイドラゴ王の悲痛の叫びと共に、ゴキリという恐怖を感じる音と共に、ワイドラゴ王は動かなくなった。
「片付けておけ!」
マイケイルの命により、騎士の1人がワイドラゴ王を担ぎ部屋を出ていった。死んでないよね?そう思って[偵察]でワイドラゴ王を見るが、残念ながらそれはもうワイドラゴ王だった物となっていた。
「いやー、うちの愚弟が申し訳ない!このお詫びは帝国との友好関係と、あの森をサダーズ帝国と認めることで返したいのだが、フランソワーズ殿はいかがだろうか?お許しいただけないだろうか?」
そう言ってニッコリ笑うマイケイル。
「かまいませんわ!それでは、他の方々はサダーズ帝国についてどうお思いでしょうか?反対の方がおられましたらご意見を頂ければと思いますわ!」
フランのその言葉に意見を述べる者はいなかった。
俺も意見を言いたいところだが、それは後でと今はただじっとりとフランを見ながら席に座り直した。
「さすが麗しの女帝フランソワーズ殿、やはり聡明であるという噂どおりの方ですね!良ければ今後とも、私とも個人的に懇意にして頂ければ……あ、私はこれから弟に代わり王となりますので、以後良くして頂ければと」
そう言ってフランの前まで移動したマイケイルは膝を突き差し出すように右手を前に伸ばす。
「良き隣国として、適切な距離で懇意にさせていただきますわ!」
「隣国として、ですね。今はそれで我慢いたしましょう」
マイケイルの手を無視して答えるフラン。どうやら2人の会話もこれで落ち着きを見せたようで、全員が席へと戻り会議が再開された。
乱入した岸本さんは兵に連れて行かれそうになったが、フランの一言で解放され部屋の隅に椅子を用意され大人しく座っている。
何も問題はなく会議は進み、よく分からない税やら交渉の場やら定例交渉等の難しい話が多く眠りかけたが、サダーズ帝国という国名は後で考えるということだけはなんとか取り付けた。その内なにか無難な名を考えよう。
会議が終わると岸本さんが俺のそばまでやってくる。
「佐田君ごめんね?前の皇帝がいなくなってさ、フランちゃんの協力もあって色々調べ物が捗っちゃってさ、ここ1週間程少しうかれてたってのもあってあのチャラマイコーとも気軽に話しちゃってたんだよね?
んで、ついポロっと、森の主は引きこもりだけどねって話になっちゃって、あいつ……やっぱ許せんわ!」
勝手に謝り勝手に怒りだす岸本さん。
「まあいいよ。どうせ俺は引きこもりだし。これで森に帰れる。もう俺は引きこもりでいいんだよ。ルリとコガネと幸せに暮らすんだ」
やや自虐的にそう言って天を仰ぐ。新たに修復され美しく彩られた天井はとても綺麗で癒された。
「やあやあ、盛り上がってるようだね!」
「出たなウザマイコー!この卑怯者っ!」
マイケイルが騎士2人を連れてそばまで来ていたことに気付いたが、どうやら俺はこの人の性格には馴染めそうになり。
「佐田君、警戒しているところ悪いんだけど、その力、我が国の為に貸してくれないかい?」
「お断りしたはずですが?」
「勘違いしないでくれよ?弟のように我が国の軍門に下れとかいう話じゃないんだ。ちょっとだけ君と、そして君のお仲間達に力を借りたいと思ってね。君達召喚者達の力を借りるなら、君に頼むのが一番だって思ってさ?」
「それは……」
俺はマイケイルから感じる陽気なプレッシャーに気圧され言いよどむ。
「フランソワーズ殿、どこかお部屋を借りれないだろうか?」
突然背中を見せたマイケイルはフランにそう言うと、フランも笑って了承する。
侍女に案内されながら別の部屋へと到着、席に座るとその両隣には未波とフラン。2人とも笑顔だがマイケイルに対し警戒をしているようだ。背後には飯田達も警護として待機している。
「ではまず、我が国の現状を説明するよ?もちろんこの話は他には内緒でね?別に言ってもいいけど、その時は帝国内も混乱するだろうけどね?」
軽い感じで話すマイケイルの言葉に緊張感がさらに増す。
「我が国最大のダンジョンのことだけど―――」
そう言って話し始めたマイケイルに、室内は静まり返った。
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