73.皇帝陛下就任式 04
フランの[巨人兵]により空気の変わった就任式。
フランは寝る間も惜しんで皇帝となるべく処々の慣例を覚える傍ら、この[巨人兵]のスキルを磨いていた。10分程度しか持たなかったあのスキルだが……今の状態だと2~3分が限界だろう。
短期集中で見た目を重視した作りになっている。飯田達とそうしようと話が纏まったという所までは聞いていたが、俺も今回あの[巨人兵]を見るのは初めての事。
後日改めて見せて欲しいなと思った。
フランは[巨人兵]を早々に引っ込め、周りを見渡し満足そうに笑顔を見せていた。魔力枯渇の疲労もなさそうだし、まずは大成功というところだろう。
その後はフランの就任に対し何も問題は無いようで、集まった各国代表から惜しみない拍手が向けられた。そして、ワイドラゴ王国と第一皇姫の面々からは悔しそうな顔を頂き大満足な式となった。
式の最後にはフラン用に作られた小さな王冠が、宰相の手により乗せられたことに俺は涙した。
「良かったなーフラン」
そう未波と話しながら、肩の荷が下りた気がして安堵してもいた。
不遇な環境で育ったフランに自分を重ねてのことだが、もう彼女は皇帝となったのだ。幸せに生きて欲しいものだと心から願った。
そばでサポートしている飯田とも良い雰囲気だし、女帝と勇者の組み合わせも悪くは無いのかも?と思いながら眺めてみる。あの2人がトップに君臨するなら森にちょっかいをかけてくる輩の良い防波堤になるだろう。
滞りなく式は終わり、正式に皇帝となったフラン。
昼食を挟み午後からは外交会議の時が来た。
昼食を取っている間に先ほどの玉座の間には、中央に大きな円卓が設置され、それぞれの代表者が座るという。
俺も何故か森代表という訳の分からない肩書で参加している。
俺の他には、飯田達5人はもちろんの事、未波、横井、不破さんが参加している。未波は俺の隣に座り、横井と不和さんは席に座るフランの背後に飯田達と共に並び待機している。
会議が始まるのを待っていると、遠くから「覚えてなさいよ!」という甲高い声が聞こえたので何事かと思ったが、後で聞いた話だが参加を認められなかった公爵家が騒いでいたようで、城の兵士達により排除されたとのこと。
そして会議が始まった。
「まず始めに王国の新体制についてで御座います」
宰相が咳払いと共に話を始める。
新体制として、宰相以下各部門のトップが口頭で伝えられてゆく。それほど重要なことではないようで、さらっと名前だけが発表された。
その後、フランを直接護衛する組織として飯田を筆頭とする帝国騎士団ができたという報告に移る。
今までの帝国の兵が所属する第1~第9兵団とは別に組織されるようで、そこには飯田達の他、城に残ると言っていた杉浦さん達3人の他、横井と不和さんのグループが加わるようだ。
当初、飯田達5人と杉浦さん達3人でチームを組んでの予定だったが、街で冒険者として暮らす予定だった不破さんのグループに、フランから女性が多い方が良いと相談していたらしい。
その結果、不破さんグループが週1程度ならと騎士団に加わったとのこと。それにより彼女達と一緒にいたい横井達も加わることになる。蘭堂達にも声を掛けたのだが、それは断られ、だが、いつでも助けになることを確約されたと話が進む。
今後は2チームに分かれ、交代で昼夜問わずフランを護衛することになるそうだ。
この16名は異世界からの勇者達であり、フランの友人でもあり、ともに苦難を分かち合った仲間であると。なぜかそんな話まで語尾を強め説明する宰相。
「――― と、このように深い信頼関係で結ばれた異世界の勇者様達に守られ、万全な状態で帝国を導くことができるのは、大変喜ばしい事と低国民の一員として誇らしく思っております!」
そこまで聞いて、他国へのけん制なのだと気付く。
確かに異世界の勇者御一行と深い関係にあるというのであれば、迂闊に手を出すわけにはいかないだろう。
その後も、フランは不遇だったクラスにめげず力をつけ、そう言った経験から今まで不遇と呼ばれていた者達にも手を差し伸べることで、今まで強さ一辺倒だった帝国を生まれ変わらせ、適材適所で強国を作り上げるといった話が続く。
「さらには、陛下はウイストザーク大森林の主であらせられる勝基様とも懇意になさっておられます!」
宰相の長い話にそろそろ眠気も出てきた頃、突然俺の名が呼ばれビクっとしてしまう。
周りからの注目の目が向けられ目を伏せる。
「こちらにおわすのが、あのウイストザーク大森林の森の主様であられるルリ様、コガネ様からの寵愛を受け、森の新たな主となられた勝基様でございます!陛下とも相思相愛!そのことがどれ程の功績か、皆様にはお判りでしょう!」
俺は、心の中で何言ってくれちゃってるの!と突っ込みを入れるが、他国へのけん制であることを理解し、その場を苦笑いで濁すことにした。
こちらを見るフランは笑顔である。この件については後でしっかりと誰の発案かを問いただす必要がありそうだ。
隣の未波を見ると笑顔である。だがその笑顔はマジ切れな時の笑顔だと知っている。なぜ切れているのかは不明だが、後で一緒に誰の発案かを問いただそう。巻き込んでしまえば何も言われないだろう?
「そこで、あの大森林を勝基様の領地として、新たにサダーズ帝国として―――」
「なんでだよ!」
宰相の発言を遮り思わず突っ込みを入れてしまう。
「こ、国名は別として、我が国としてはあの大森林を国と認め、他国から侵犯されることのないように配慮いたしたいのです!」
そう言いながら宰相は他国の代表を見回す。
フランは俺にすまなそうな顔を向けている。
サプライズか何かのつもりだったのだろうが、俺が過剰に反応したので反省しているかもしれない。だが、国となれば早々他国からちょっかいを掛けられることも無くなるのか?そう思って心を落ち着けていた。
「ですので、大森林と隣接する各国の代表の方々、大森林を国と認める。その事についてのご意見を賜りたいと思っております」
宰相のその一言で、各国の代表、特にワイドラゴ王国の者達は厳しい表情を浮かべた。
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