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[完結]引きこもりの少年は異世界で森に引きこもる、はずだった。~幼馴染の聖女の為になし崩し的に異世界を連れまわされた件~  作者: 安ころもっち
第三章・帝国を欲する者達

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72.皇帝陛下就任式 03


 召喚陣の上に現れた小太りの男、ワイドドラゴ王国の国王ルカーサーチ・フォン・ワイドドラゴ。その男がこの大陸では帝国の皇帝と並び立つ存在だと聞いている。


 そんなワイドラゴ王は不遜な態度でこちらを見て頬を緩ませている。


 [偵察]で覗いた結果はそれなりだった。剣神クラスで戦闘特化だが、俺でも勝てる程度の強さしかない。飯田と比べれば雲泥の差、片手でも十分対処できる存在だろう。


 それよりもすぐそばに従えている騎士2人だ。

 聖騎士と重剣士で二人とも力はBになっている。他の能力値が低いし飯田だけではないので負けることは無いだろうが、この世界で生きてきた男達は戦い慣れているので能力以上の強さだと思って警戒する必要があるだろう。


 その周りに3名のグラマーな美女がワイドラゴ王に寄り添っている。やはり綺麗な女は権力の象徴なのか?そんなことを思っていたら背中を強く抓られる。慌てて口元を押さえるが痛みで悲鳴が漏れてしまう。


 さっきまでフランに「弱い王では大変でしょうな」とか「私が便宜を図ってやろう」などと言っていたワイドラゴ王もこちらを向いた。


「お主達は?」

 その問いにフランが俺達の紹介を始めた。


「おお、お前が森の王か!話は聞いておるぞ?お前、私の元に来るが良い!お前なら良い待遇で迎えてやらんこともないぞ?」

 笑いながらそう言うワイドラゴ王に、俺は「お断りします」と短く返し軽く頭を下げる。まったく笑えない提案だ。


「は?私の提案を無下にすると?」

 ムッとしたワイドラゴ王。


「ワイドラゴ様、皆様すでにお集まりです。すぐに式を始めたいと思いますので、どうぞこちらへ!」

 その言葉を遮るように、フランがそう言って侍女に合図を送る。フランもワイドラゴ王の横柄な態度に苛立っているようだ。


「仕方ないな。この話は後だ!」

 不機嫌そうにそう言って侍女の案内に従い部屋を出ていくワイドラゴ王と、それに付き従うワイドラゴ王国の者達。


 すれ違いざまに兵士の2人に睨まれるがさほど気にすることは無いと感じた。周りには頼もしい味方もいるし、いざとなれば俺は森に引きこもってしまえば良いのだから。


「勝基様すみません。このお詫びは(わたくし)が体で―――」

「フラン、揶揄うなよ。急ぐんだろ?」

「揶揄ってなどいませんのに」

 フランは俺の腕にしがみつこうとしたが、侍女の咳払いと、俺の横に立つ未波の冷たい視線により渋々離れていった。


 それを少し残念に思ってしまった俺だが、すぐそばで俺にも冷たい視線を向けている未波を、これ以上に不機嫌にさせて嫌われてはいけないなと気を引き締めた。


 せっかく未波に嫌われてはいないことが分かったのだから。


 俺達もフラン達の後を追い、あの厄介な前皇帝とやり合った玉座の間へと移動する。当然ではあるがすでに戦闘で損傷した外壁などは修復済みである。


 扉から前方にある玉座へ続く道は大きく開けられ、左右に並ぶ座席には各国の代表と思われる者達がすでに席に座っている。

 何人かは後ろを向いて俺達に視線を向けているようだが、ほとんどの者がスタスタと玉座へ向かうフランとそれを守るように並んで歩く飯田達を眺めていた。


 飯田達勇者御一行以外、俺や未波達は後ろの方に設置されている席へと案内される。端の席に座る俺の隣には当然のように未波が座っていた。


「さてと……」

 そう言いながら、俺は[偵察]を使い各国の代表者達を眺めてみる。


 今回の来賓は全部で6か国。


 ワイドラゴ王国以外は、フランにより正式に国として独立を認められたサクリエル王国。代表としえ区長改め国王エモンズド・フォン・サクリエルと、軍部からジェイルズ・トーリオスが来ているようだ。藍川は来ていないようだが、あの助っ人として来てくれた3人の姿が確認できた。

 他にはサクリエル王国の西、つまりは帝国の南方に位置するミクロコーラー王国、帝国の北西にあるルミナンス教国、帝国の南東にあるベナン神国も来ている。さらにはワイドラゴ王国の西にあるシーガリア公国も遠路はるばるやってきていた。

 それぞれが一塊となって座席が設けられている。

 それともう一つ、第一皇姫を発見した。その隣に座るセドリック・ペールという者がその夫で、現ペール公爵家の当主なのだろう。第一皇姫ドロンソワーズ・ペールもまた不機嫌そうにフランを見ていた。


 全体を見てみたが特に警戒すべき人間はいないようだ。だが油断はできないなと思っている。玉座に座っているフランの左右には飯田と石川が、背後には清水と上原が、少し離れたところから松本が警戒にあたっているので問題はないだろう。


 それはそうと、落ち着いたフランは良いとして飯田以外の4人の顔が強張っている。


 各国の代表として呼ばれた者達からの視線を受けている状況なので、仕方がない事なんだろう。俺ならまず逃げ出していることが想像できた。俺はこうやって後方から様子を伺っている程度が限界であった。

 正直すでにもう帰りたいと思っている。


 ややしばらくして、左右に展開していた音楽隊のような者達が聞き覚えのあるような音楽を奏で始めた。


「それでは、亡きマルドーク・デ・ウイストザーク前皇帝陛下に代わり、フランソワーズ・デ・ウイストザーク様の、皇帝陛下就任式を執り行います!まずは、フランソワーズ・デ・ウイストザーク様よりお言葉がございます!」

 新たに宰相となったニコラウス・ゲイルランドがそう宣言し、フランがそっと立ち上がった。


「まず、お集まり頂いた皆様には深い感謝を申し上げますわ。(わたくし)が、新たにウイストザーク帝国の皇帝を拝命致しました、フランソワーズ・デ・ウイストザークですわ!」

 堂々と宣言するフランに拍手を送る。俺も少し泣きそうだ。


 だが、周りからの拍手は疎らであった。

 よく見ると椅子にだらしなく座るワイドドラゴ王が不機嫌そうにしており、他国の代表達はそれを気にする素振りを見せていた。ワイドラゴ王国の期限を損ねないように配慮しているのだろう。

 他の諸外国は良いとして、フランの好意で独立を認められたサクリエル王国の代表達はしっかり拍手しろと言いたい。胸の前で小さく手を叩くサクリエル王はワイドラゴ王と俺達との間で視線を泳がせている。



「どうやら(わたくし)は歓迎されていないようですが、皆様がご不安なのも理解しておりますわ!ですがご安心を!(わたくし)は、自身が弱い事を知っておりますの!(わたくし)自身、このようなことしか出来ませんので!」

 そう言うフランが周りを見渡した後、俺と目線が合うとニコリと笑った。


 軽く右手を上げたフランの合図で飯田達はフランから距離を取る。

 フランの前には大きくスッペースができ、飯田達が膝を突き頭を下げる。


(わたくし)の純然たる思いに応え、我が身を守る剣を、盾を、そしてその存在を大いに体現なさいませ![巨人兵(ガーディアン)]!」

 手に持っていた扇子をパッと開きながらそう言うフランのスキルが発動し、フランの目の前に召喚さらたのは、銀の全身鎧を身に纏った巨人兵(ガーディアン)である。


 大きな盾を前に構え、腰の鞘から大きな剣を抜くとその剣が光を放っていた。俺はその姿に思わずブラボー!と叫びそうになった。日本人なのにね。

 これには周りも大いに驚き拍手が鳴り響いた。


 それに苛立ちを見せたのはやばりワイドラゴ王、そして第一皇姫ドロンソワーズの付近の者達であった。

 ワイドラゴ王は背後に控えていた兵士に何かを話しているようだが、機嫌は治まることはなさそうだ。悔しそうにフランを睨む王を見て、心の中でざまー!と言っておいた。


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