70.皇帝陛下就任式 01
就任式当日。
俺は早朝から迎えに来たフランと護衛としてやってきた飯田達達御一行と共に森を出た。森の外では高そうな馬車がお出迎え、それに乗り込み城へとやってきた。
馬車は6人乗りとのことで俺はフランの隣に座らされた挙句、残りの席は何故か争奪戦となり俺をのけ者にした話し合いの結果、未波と飯田、杉浦さんと池田さんが乗り込んだ。
石川達や野村さん達は別の馬車に分乗して乗り込んでいる。
馬車の中、フランは早々に俺の肩に頭を乗せ目を瞑っている。慣れない公務や引継ぎ作業で激務なのだと聞いてはいた。疲れているのだろうしこのまま寝かせておこう。
目の前には飯田と密着し嬉しそうな顔の杉浦さん。その反対に座っている池田さんを見ると、目が合った瞬間逸らされる。飯田は未波に視線を送り、その未波はさっきから外を見ている。
未波が不機嫌そうなのは多分俺がフランの隣に座っているからだろう。
俺なんかに大切な友達を任せられないと……
城に着いた俺は気まずい空気から解放され安堵する。
「では、まずは私の部屋で一休み致しましょう!」
そう言って俺の手を引くフラン。
「ちょっと、待ってよ!」
未波がそう言って後ろをついてくる。飯田達も同じように追いかけて来ていたが、フランが案内した部屋の前で待機している兵士達に止められていた。
どうやらその部屋に入れるのは女性のみのようで、未波達はどうぞと招かれ、飯田達は別室へと案内されるようだ。それに伴い杉浦さんや不和さん達も別室の方へ行くというので時間まで別れ待機することにした。
なぜ俺だけが入れと言われたのか謎すぎる。
俺もできれば飯田達と一緒に別室に行きたかったが、フランがそれを許してはくれなかった。もしかすると俺がフランを指名したことをまだ怒っているのかもしれない。だから面倒事に巻き込もうとしているのだと考えるとしっくりときた。
とはいえ確かに俺が巻いた種でもある。潔く部屋へ入ると目立たぬように端の席に座ることにしたのだが、結局はフランに手を引かれ中央のソファに座らされた俺は、フランと未波に挟まれることになる。
目の前に出された高そうな紅茶とクッキーを頂くが、あまりの気まずさにどちらも味がしなかった。
「ねえ未波?この際だからハッキリした方が良いと思うけど?それにフランさんも。勝基君って想像以上の鈍感クソ野郎だから、はっきり言わなきゃ分からないよ?」
対面に座り俺に冷たい視線を投げかけながらそういう加藤さん。
「いや待って?俺だって結構察しの良い方だろ?この状況は大体把握―――」
「は?」
俺の反論は途中で遮られてしまう。加藤さんの顔が怖い。
「か、勝基君、把握ってもしかしてバレちゃってる?いや、そんななんで?」
未波が焦りながらそう言うが、未波の気持ちなんてバレバレなんだよと言ってやりたい。そもそも俺は未波の気持ちを聞いてしまってるのだから。と思ったが加藤さんの顔が怖い。
俺はいったいどうしたら……
「大丈夫。多分未波が思ってる以上に勝基君はポンコツだよ?いやそうなると大丈夫って表現も可笑しいのかな?はー、もう腹立つから一回殴って良い?」
そう言って拳を握る加藤さん。
「いやいや!待ってって。なんで俺怒られてるの?」
「か、勝基君!ハッキリ言って!何を分かってるって言うの?ば、ば、場合によっては私は……」
この場を逃げ出したいと思った俺だが、真っ赤な顔の未波が俺に詰め寄ってきた。さらに背後からフランが柔らかなモノが押し付けられ、逃げ場を失った俺は……
「わ、わかったから!少し、離れて……フランも、その、当たってるから……」
俺の言葉に未波は俺の胸元を掴んでいた手を放すが、フランを見て驚き唇を震わせている。
「フラン、どさくさ紛れに何やってるの!」
「何のことでしょう?」
「くっ、またそんな……」
周りの女性陣からの何かを待っている視線に混乱する。
「だ、だから、未波は、俺とフランがこうやってくっついたり、一緒にいるのが嫌なんだろ?」
「ふぐっ」
顔を引きつらせてソファから立ち上がる未波。
「ほお。意外と分かってる?」
加藤さんからはそんな声が聞こえた。
「フランは未波の大切な友達だから、俺なんかと一緒にいるのが許せない、ってことだろ?わかってるから!」
俺の言葉に崩れ落ちる未波。
加藤さんからはため息が聞こえた。
「分かったでしょ。この男はこんなもんだよ」
どうやら少しだけ的を外したようだ。ならば正解は……どういうことだ?
「改めて聞くけど、勝基君は未波のことどう思ってるの?」
「ちょっと愛理!」
加藤さんの言葉に慌てる未波。
「未波は、大事、だよ?」
その言葉に両手で顔を覆う未波。
「未波は幼馴染だし。未波の御両親にも小さい頃から良くしてもらってる。だから、守りたいって思ってる」
「だって。良かったね未波」
俺の答えに加藤さんはそう言うが、未波は顔を押さえたまま固まっている。
「未波だって俺の事を、義務感とか?そんな感じで世話を焼いてくれてるのもちゃんと理解してるさ!勘違いなんてしてないからな?」
「は?」
また加藤さんににらまれ怯む俺。
「……いや、いいわ。続けて」
「お、おお。で、でもな。もう俺は1人でも大丈夫なんだよ。森にはルリもコガネもいるしな。だから、未波には幸せになって欲しいんだよ?その気持ちに嘘はない……好きなんだろ?飯田の事……」
俺は、チクリとする胸の痛みを堪えながらそう言った。
加藤さんは天井を見上げため息をついている。
未波は真顔でこっちを見ている。急にどうした?目が怖いんですけど?
「勝基様、それは流石に未波がお可哀想です……私も未波の友として、悲しくなってしまいますわ……」
振り向くとフランが涙目になっている。
どういう、ことかな?
「いやだって、フランだって聞いたんだろ?未波は飯田が好きで、俺の事は好きじゃないって!」
「なんの話ですの?」
「いや、ちょっと前だけど俺は偶々通りかかって、あっ、覗きとかじゃないんだぞ?ほら、森の中で2人がそう話してたのを聞いたから……」
俺は、あの時聞いた話を思い出しながら説明する、盗み聞きをしていたという状況だけに、うまく言葉は出てこなかった。
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