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[完結]引きこもりの少年は異世界で森に引きこもる、はずだった。~幼馴染の聖女の為になし崩し的に異世界を連れまわされた件~  作者: 安ころもっち
第三章・帝国を欲する者達

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68.帝国との戦いとその後で 02

予約登校しくじって本日二度目の更新です。

まだの方は前話をどうぞ


 ある休日の午後、俺はぼんやりしながら出た同僚からの電話に心臓が跳ね上がり思わず咳き込んでしまう。


「S区の商業街に異界の王ってやつが現れて、人を殺しまくってるんだってよ」

 電話からはそんな信じられない状況を聞かされた。


 直後に送られてきたメールには動画サイトのURLが張られていたので、それをタップして動画を再生した。


『我は異界の王!マルドーク・デ・ウイストザーク!我にひれ伏すのであれば臣下に加えてやろう!だが、抗うというならその命、私が全て刈り取ってくれるわ!うわはははは!』

 そう言って近づく男を切り裂く男。


 人間離れした力で人を真っ二つにしたそれを見て、あの世界からやってきた召喚者なのだろうと納得していしまった。その映像に何かが引っ掛かり、もう一度再生して喉を鳴らす。


 ウイストザーク……俺を召喚した王族の名だ。この男は異世界人で確定だ。俺がこっちに戻ってから色々なメディアで話をしたが、その名を口にしたことは無いはずだ。それを名乗っているこの男は本物……


 俺は急ぎ支度を整えると、同僚が急遽回してくれた車に乗り込み、近くに止めてあるという輸送車両へと移動、さらに現場に向かった。


 現場への移動中、リアルタイムで配信される動画を確認する。

 やはり俺と同様にスキルは使えないようだが、警察が発砲する銃弾を軽く剣でいなしている。こんなことができるのは間違いなくあっちの人間だ。


 魔物を狩って成長した身体能力でこの世界の人間を蹂躙する。俺が戻ってきた時にちらりと考えたことだが、当然ながら俺はそんなことをする勇気も気力もなかった。

 恵まれた身体能力でダラダラと生活するというのが俺のライフプラン。そう思ってここ数年は大人しく生きてきたというのに。


 この男は俺が何とかしなくてはいけないのだろうな。そんな考えが頭をよぎった。


『力を持たぬお前達の攻撃など私には効かぬ!いい加減諦めて我が軍門に下るが良い!』

 画面の中の男はそう宣言して高笑いを繰り返している。


「なあ、これって異世界人?人間の力じゃねーだろ?」

 運転している同僚がそう聞くが、それに対してどう答えれば良いか頭をひねる。


「お前が昔言ってた異世界ってところから来たってこと……なんてこたーないよな?ハハハ、何言ってんだ俺」

「……間違いない、と思う」

 躊躇しながら答えた俺に、同僚は顔を強張らせる。


「男の名乗ったウイストザークという名は、俺を呼び出した王族の名前だ。こっちに戻ってからこの名を誰かに話したことは無いんだ。信じられないだろうが異世界人、なんだと思う」

「……これを見せられたら、信じないって考えもちーっとばかり難しいよな」

 そう言ったきり、同僚は黙ってしまった。


「この世界で魔法は使えない。だが身体能力は普通の人間とは比べ物にならないよ」

「はは。今のが冗談なら良かったんだけどな。実はもうすでに100人以上は犠牲になってるって言うし……普通の人間じゃ無理だろな。普通の人間じゃないってのは間違いないってことだ」

 同僚から聞かされた新たな報告に歯噛みする。


 異世界の王……俺がやったことは何だったんだ。そんな考えが頭をよぎる。

 嘗て助けた異世界の国の王がこちらの世界で殺戮を繰り返している。俺があの国を救わなければ……こんな事体にもならなかったのに。


「俺が、あっちの世界を救ったからこっちで人が死んだ……」

 俺は気持ちを吐き出したくてそう呟いた。


「はっ?そんなの綺麗事だろ?俺が今日も無駄に生きて呼吸してるから、地球は温暖化でどっかで白クマが溺れてるーって、そう言ってるようなもんじゃねーの?」

「……なんだよ、それ」

 意味不明な同僚の返しに笑いが漏れる。


「まあ責任を感じてってことなら、お前があのバカな王を倒せばいいんだないのか?勇者様、だったんだろ?」

「お前、他人事だと思って」

 同僚の言葉で少しだけ軽くなった。そのことに心の中で感謝する。


「まあ確かに俺なら倒せそうだけどよ。俺は人目に晒されるのは嫌なんだよな」

「そりゃ勇者様だし、しゃーないだろ?」

 ため息をつく俺に同僚はそう言って笑った。


 現場には後10分程度で到着するだろう。すでに辺り一面は封鎖され、多数の人々は避難が終わったようだが、何人かは身動きがとれず取り残されているという。


 そんな報告を聞いている間も、ライブ配信している配信者の映像を確認しているが、映像の中で異界の男はベラベラと話を続けていた。どうやらその配信者は気にられたようで、独占インタビューのような映像となっていた。


『では、陛下はそのウイストザーク帝国に古より伝えられている召喚魔法を使って、国の安寧の為にこちらの世界から30名以上の子供達を召喚したのですね?』

『ああそうだ!私は民の為、優秀なこの世界の人間を呼び寄せた。だが……あいつらは私に反旗を翻し、私を亡き者にしようとした!だからこれは、この世界に対する復讐なのだ!』

 そんな会話が繰り広げられている。


 どこまで信じて良いか分からないが、召喚されたのは例の行方不明の高校生達だろう。


『こちらの世界でも行方不明の高校生がおりまして、佐田という男が犯人だと言われてますが―――』

『佐田ー!あいつさえいなければ!』

 配信者が発した佐田という言葉に反応する男。


『あいつが、あいつが邪魔紗江しなければ!私が勇者に負けるはずなどなかったのだ!せっかく力を得て森を制することができると思うたのに!』

『陛下、僕達はその佐田という男に興味がありまして、もっと詳しく話をしてくれませんか?』

 怒り心頭な様子の男に配信者が畳みかけるように質問している。


『えーい煩い!あの男が勇者達を誑かしたせいで、私がこんな世界にくることになったのだ!そうだ、全てはお前達の所為なのだ!』

『ひっ!』

 そう言って男はまた剣を抜くと、配信者に刃を振り下ろしたところで映像は消えた。


「くそっ!」

 俺がそう叫んだ頃、輸送車は停止した。


 すぐさま車両から飛び出ると、遠くからタタタという音が聞こえてきた。

 聞きなれた音、それはきっと銃声なのだろう。MINIMIかな?


「なあ、よく射殺命令とか出たな」

「唯一あの男のそばにいた配信者が殺されたんだ。絶好のチャンスだし、すでに大量殺人者として海外でも取り上げられている。どっかから外圧でもかかったんじゃないか?」

「そうなの、かもな」

 同僚のその言葉を聞き、俺は大きく息をはく。


 あっちの世界の人間は強い。

 たとえスキルが使えなくても拳銃の玉を弾くことなど容易いだろう。だが、あれだけ連射された銃弾を防ぐ手立てはない。最初から出番などなかったのだ。それを、俺がやらなきゃなんて……烏滸がましいにも程がある。


 なんにせよ、これでこの騒動は終わっただろう。

 だが、あんなのが次々にこっちの世界に送り込まれたら?そう考えて身震いする。


 どうかこんなことはもう起こりませんように。

 そう思いながら現場を確認するため足を進めた。


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