06.集団転移と帝国の思想 02
帝国の男性に怒りを向ける飯田君。
「俺達はお前達の勝手な望みにより強制されてここに来た。横暴な態度は許さないと言っただろ!」
「は、はい!すぐに作業を終わらせますのでしばしお待ちを!」
そう言って他の子達のステータスも石板に映し出してゆく2人。
「志田さん、大丈夫だったかい?」
「うん大丈夫だよ。ありがとう飯田君」
飯田君はいつものように爽やかに笑っている。でもさっきの怒った顔がちらついて、なぜだかその笑顔も怖く感じだ。
「それより、志田さんは聖女クラスを引き当てたんだね。俺、恥ずかしながら勇者になっちゃってさ、うちのグループって賢者とか魔導士もいるし。これから魔王を倒すために修行をするらしいけど、
良ければ一緒にパーティを組んで修行しない?志田さんが居てくれると助かるんだ」
そう言う飯田君に、素直には頷けなかった。
「まだ少し混乱しててさ。落ち着くまで待って」
「そ、そうだよね。分かった。俺、強くなって志田さんを、クラスメイト全員を守れるようにならうから!……それだけは伝えとくね。じゃあ何かあったらいつでも相談してね」
「うん」
いつもより押しの強い飯田君に短く返事する私。
その飯田君がグループに戻るのを見送ると、愛理達と固まって今後の事を相談し始めた。
魔王を倒すために修行?戦えない人はどうなるんだろう?
先ほどの男達の言動を思い出し、今後の不安が募ってゆく。
その不安は、すぐに的中することになる。
「では、すべてのステータスを確認させてもらった。これより戦闘クラスとそうでない者に分かれ力を上げるための鍛錬をすることになる!指示に従ってほしい」
兵士達の中でも特に大きな体と分厚い銀色の鎧を来た男性が声を張り上げる。
「それは承諾できない!」
それに飯田君が反論する。
「承諾できない?なぜ?」
「ここにいるのは全員が仲間だからだ。突然の別世界に不安になっているものを多い。まずはそれぞれのペースでやらせてもらう!」
飯田君の反論に男性はキッと睨みを返していた。
「ひよっこ勇者が!……まあいい。暫くは仲良しグループで楽しくやるんだな!……この国は実力主義だ。我を通したければ誰よりも強くなることだ!」
そう言うとその男は部屋を出ていった。
いつの間にか皇太子と思われる男性も居なくなり、先程ステータスを確認していた二人組がメイド服を着た女性達に指示をしている。
私達はやっぱりグループごとに固まって待機している。
暫くすると私達のグループにも侍女さんがやってきて、部屋まで案内すると言うので付いてゆく。
私達は案内された広く豪華な部屋に驚き、そして今後は5人で纏まって行動することを決めると、疲れた体を投げ出し大きなベッドで眠りについた。
翌日から、私達は訓練場に集まり訓練と称して適度な運動をした。
他のグループは早々にダンジョンと呼ばれる場所へ帝国の護衛兵と一緒に入っているようだ。魔物と呼ばれる生き物を倒すことで能力が上がったりスキルが増えるらしい。
まるでゲームみたいな現実について行けそうにない。
私達は私を含め直接戦う為のクラスとは言い難い。
愛理は罠師で[足止め]というスキルが使えるから、魔物の動きを邪魔したりできるけど、攻撃するには剣で切り付ければ良いの?
千佳は調理人で、[神の舌]ってスキルがある。毎食なんの肉を使ってるとか色々分かっちゃうみたいで、スキルを上げたら料理の達人みたいになりそうだけど、魔物と戦うの無理じゃない?
沙耶は調教師だからかスキルは[意思疎通]というものだった。沙耶は魔物を操ったりできるのかな?
京子は影術師のスキル[認識阻害]でたまに消えたように見える。たまに消えて驚かされたりするけど、特に意味は無いけど楽しいからって言っていた。
私は今のところ[結界]スキルだけだけど、いざとなったらこれに籠ってしまおうかな?魔力って奴が少ないからか、30分ぐらいでくらくらしてきて倒れちゃうけど。
――――――
志田未波 / 人族 / クラス [聖女]
力 G / 知 C / 耐 G
<スキル>
[結界] 自身の指定した範囲で耐物耐魔の結界を作り出す力
――――――
それから1週間、私は、遂にダンジョンに行くことになってしまった。
あまりにも帝国の人達が戦えない私達に嫌悪の視線を向けてくるから……
「わが国では、強い者が正義、強い者だけが我を通すことができる。お前達の居心地が悪いのは努力を怠っているからではないか?」
謁見が許された私達はあの部屋で皇帝マルドーク・デ・ウイストザークと再び話をすることができたが、見るからに見下すような視線と共にそう言われてしまう。
「この世界に呼んだのはお前達だろ?そんな勝手な思想を押し付けられては困るんだよ!こっちにはこっちのペースがある!」
付き添ってくれた飯田君が文句をつけている。
「だが、民の思想は変えられぬぞ?特にお前達は勇者として召喚された。それであるのにダンジョンにも赴かずにいる様子は、周りから怠惰だと罵らせえても不思議はあるまい?」
「勝手な押し付けだ!」
「わが国では、生まれて五年ほどで親に連れられダンジョンに入る。そう言う国であることを理解せよ。思想は簡単には変わらぬ!」
皇帝と飯田君でにらみ合いが始まった。
その様子を見ていた浅野さんがこちらを睨んでいる。勝手についてきたのに私の味方をしてくれないなら帰ってほしい……
そんな状況に、私はたまらず口を挟んでしまう。
「あの、ダンジョンの最初の方は5才の子供でも安全、という事ですよね?」
「志田さん……」
確認をする私に、飯田君は心配そうな視線を向ける。
「もちろん、子供でもなんとかなる程度であるな。護衛の兵でもつければ安全に力を伸ばすことができる。国の為とは言わん。自分の為にやってみても良いと思うが?」
皇帝の説明に少し考えた後、他の4人に相談した私はダンジョンに入ることを決めた。
「お主は聖女であったな。では、身の安全を守るためだ。お主にもこれをやろう」
そう言う皇帝はそばにいた男性に顎で合図を送ると、その男性がこちらにやってきた。
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