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[完結]引きこもりの少年は異世界で森に引きこもる、はずだった。~幼馴染の聖女の為になし崩し的に異世界を連れまわされた件~  作者: 安ころもっち
第三章・帝国を欲する者達

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65.皇帝の置き土産 01


 恐怖を感じ、折れた心で黒いドラゴンを見つめる。


 そんな中、同じように恐怖を感じ動きの悪くなった体を引きずるようにして向かっていく飯田。

 すでに他の者達はそれを見つめるだけになっていた。


 何度も向かっていく飯田。

 鈍くなった剣技により翼を切り付け、それは易々と弾かれる。時折あの黒い霧によりすでに飯田の躰には黒い文様が浮き出ている。そのせいか時折痛みに顔を歪ませている。


「飯田、もう……」

 もういいよ。諦めよう。そう声をかけそうになる。もうここにいいる全員が、飯田以外の全員が諦めているんだ。


 聖剣で体を支えるようにしてなんとか立っている様子の飯田に、ドラゴンは覗き込むように顔を近づけた。もう飯田を脅威だとは思っていないのかもしれない。


「俺は、負けない!」

 そう叫んだ飯田は剣を下からすくい上げるようにしてドラゴンの顔を切り裂くが、それは難なく躱されていた。


 体勢を崩し倒れ込む飯田。それでも必死に立ち上がろうとしている。だが、その飯田にまた顔を近づけたドラゴンは、飯田の目の前で大きく口を開けた。


「もう終わるんだな……」

 そう呟いた俺は目をつぶる。


 次の瞬間、終わりを待っていた俺は「うがー!」という叫び声と、ゴチンと言う大きな音を聞き、体をゆすられたような振動を感じ目を開けた。その視界にはドラゴンの近くで大きなハンマーを振り下ろしている大男が映った。

 その攻撃によりドラゴンの頭が大きく右に吹き飛ばされているようだ。


「な、情けないぞ、お前達!」

 そんな声が背後から聞こえてきたので振り向くと、そこには、自治区で再開した藍川が体を小さくしてこちらを見ていた。


「な、なんでお前がここに……」

「う、煩い!俺は、俺の天才的な閃きに導かれてここにきたんだ!まだこの状況を理解できてないけど、お前達が困っていることはわかったんだ!お、俺が、お前達を助けてやる!」

 たどたどしくそう言った藍川だが、自身は扉の蔭にどんどん隠れようとしている。


「団長、やってやりましたよー!」

 そう言って身を隠す藍川のそばまでやってきたのは猫耳がついたドレス姿の少女だった。


「俺は、まだ戦える!」

 混乱する俺は、飯田の叫び声にも驚き前を向く。


 周りの者達も同様に驚き室内がざわついている。


 飯田は立ち上がり剣を構えているが、その顔から黒い文様は消えていた。ハンマーを持った大男はすでに俺達の方へと移動し距離をとっている。今度はそのすぐそばに立っていた見知らぬ男が一歩前に出る。


「武の神アレスよ!我が願いに呼応せよ!勇敢なるこの者の力を、魂を、その思いを!溢れんばかりに増幅させよ![魂昇華ソウルサブリメーション]!」

 またも見知らぬ男の出現に戸惑うが、どうやら飯田にバフをかけたのだろうことだけは理解することができた。


「藍川、あれはお前の連れてきた援軍か?」

「そ、そうだ!お前達が去った後、死んだ将軍以外もいなくなってしまったからな!必死で新しい人材を探して、俺が助けに来てやったんだ!こ、これで、俺を、許してくれるだろうか?」

 最後は弱弱しく言った藍川の目線はフランに向いていた。


 フランは藍川に笑顔を向け、親指を立てサムズアップしていた。


「ひゃ、やった!やったぞ!俺は、許された!」

 そんな声をあげ喜ぶ藍川だが、まだ安心できる段階ではないはずだ。


 そう思った時、俺がさっきまで感じていた不安が和らいでいるのを感じた。


「精神安定の魔道具だ」

 何かを察したであろう藍川が腕にあるゴツイ腕輪を俺に見せる。


「これならこの部屋程度なら全員に効果が出る。10分ぐらいしか持たないけど。だからもう大丈夫。ここまで準備したら今度こそ大丈夫だと俺の閃きが言っていた。だから来た。じゃなきゃこんな危険な場所……」

 そう言った藍川はついには扉ごしにも見えなくなった。考えればあのビビリの藍川が気絶したりしていないのはその魔道具のおかげなのだろう。


 そんな状況に今は細かいことは良いかと考えることをやめ、忘れていた[強制退去]を発動する。もう大丈夫。今の俺なら前に出ることだってできる。


 藍川に少しだけ感謝をしつつ、最前線で必死にドラゴンと戦っている飯田の方へと足を進めていた。その頃には飯田の動きは普段通りに動けているように見えた。その光景に安堵し、俺は助っ人として現れた3人を偵察で確認する。


 先ほどのハンマー男はデリコ・ハーマン、重戦士で[怪力]持ち。強くはないが不意打ちからの攻撃が飯田を助けたのは事実だろう。良く見たら頭に猫のような耳がある。種族は猫人と書いてあった。

 飯田にバフをかけた細身の男はスタイリシュ・ハリケン。クラスは強化師というもので、スキルは先ほど使った[魂昇華ソウルサブリメーション]しか持っていないようだ。

 いつの間にか横に来てしゃがんている猫耳少女はシンシア・ハーマン。呪術師で[解呪]持ち。ハーマンってことはあのハンマー男の関係者か?


 とにかく攻略本に書いてありました、っていうぐらいピンポイントな人選にため息が出る。むしろなんでそんなスキルを持っていて俺達にあっさりフランを取り返されたんだと疑問に思ってしまう。

 そんなこともあり俺の中の不安は一気に消え去り、気付けば飯田の戦いをリラックスして眺めてしまっていた。


「勝てるぞ!イケる!俺達の、大勝利だ!」

 勝利を確認するように石川が嬉しそうに叫んでいる。


 そしてその時が訪れた。

 飯田の全身から薄っすらと光が(ほとばし)る。聖剣もまばゆい光を放っている。


「滅びよ邪竜!全員の思いを込めたこの一撃でっ!オールフレンドアターック!」

 そう叫ぶ飯田の振り下ろした光る聖剣により、カースドラゴンは真っ二つに切り裂かれた。


 だが俺は、口元を押さえ笑いをこらえるのに必死だった。本当は喜びの声を上げたい場面なのに。何人かは堪えきれず崩れ落ち床を叩いている。


 未波達女性陣も輪を作り下を向き、肩を震わせ蹲っていた。


「な、なんだよあの技名!勇者だからってかっこつけやがって!くっそー!」

 扉から顔だけを出すようにしてそう言った藍川。


 どうやら藍川にはオールフレンドアタックは刺さったようだ。


 消え去るカースドラゴンを見ながら俺達は肩を震わせ、飯田の満足そうな笑顔をチラ見しまた顔を背け噴き出していた。


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