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[完結]引きこもりの少年は異世界で森に引きこもる、はずだった。~幼馴染の聖女の為になし崩し的に異世界を連れまわされた件~  作者: 安ころもっち
第三章・帝国を欲する者達

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63.皇帝の力 02


 未波の元に集まる後衛を務めていた仲間達。


「勝基君!この前だけ私が守るから。もう一度確認して!」

 そう言って俺の手を両手で握る未波から暖かに何かが流れ込んできた。


「こ、このぐらいで大丈夫?」

「ああ。もう充分、大丈夫だ。その……ありがとう」

 俺の返答になぜか顔を赤らめている未波は「ふふっ」と笑って前を向き、再び結界を作り出していた。


 みんなが結界を飛び越えるように魔法を飛ばしたりしている中、俺は再び皇帝を偵察する。


 満たされた体内の魔力を放出し先ほどと同じ隠されていたステータスを確認する。再度確認できたそのステータスで間違いなく盗賊クラスだと確認した。


「なあ、スキルを増やす魔法書とかそういうのは無いのか?」

「聞いたことないよ。みんなは?」

 未波からはそんな返答が返ってくる。


 他の者達も聞いたことは無いようだ。

 なら、なぜこんなにスキルが多数なのか……奪った、のか?


 俺は指輪の存在を思い出す。それを思い出せば簡単なことだった。力を吸ってスキルを増やす。ラノベではよくある話じゃないか。その証拠に、魔眼術士だった力を吸った為に覚えただろう[魔性眼]というスキルも持っている。

 決めつけは良くないが、正解なのだだと感じた。

 きっと、あの指輪により能力を吸い取られた場合、相手の所持するスキルに近い物をも吸収するのだろう。そう考えた時、あの森で飯田の能力が吸い尽くされなくて本当に良かったと改めて思った。


「みんな聞いてくれ!皇帝は盗賊クラスで擬態というスキルで能力を誤魔化している!能力値もかなり低い!だが、人から奪ったスキルが多いから油断はできない!油断はしないでくれ!」

 そう叫んだが、事情を知らない仲間達は戸惑っているようだ。


 だが、皇帝が急に立ち上がりこちらを睨みつけるように見たことで、俺の考えが正解なのだと理解した。


「なあ、いいのか?実力主義のこの国で皇帝がクラスを偽証し、脆弱なままお前達の上に立ちふんぞり返っているんだぞ?」

 俺は双剣使いのミカエロの方を向きながらそう叫ぶ。


 一瞬動きを止めたミカエロは、蘭堂の一撃により足を負傷して呻いた。これで素早い動きから繰り出される攻撃は減るだろう。蘭堂は遠藤と根本にその場を任せ飯田達の加勢をする為、大剣使いリバークスの元へと向かって行く。


「皇帝はクラスを偽証してる!能力は低いようだが奪ったスキルがあるから気をつけろ!」

 蘭堂が良い声でそう叫ぶ。


 飯田と対峙しているリバークスも、ついでに魔導士ジェネシーも動きを止め戸惑いを見せている。


「聖なる魔力を糧に放たれるは神の一撃、[聖光雷撃(ホーリーライトニング)]!」

「ぐはーっ!」

 動きを止めたリバークスに飯田の一撃が入り吹き飛ばされている。


 そこに後ろから魔法での追撃が入っている。ここで思わず "やったか!" と言いそうになったが、それを堪え[偵察]でリバークスのステータスを確認した。どうやらまだ死んではいないようだ。

 動けない程度にダメージが入っていれば良いのだが。


「みんな!後少し、踏ん張ってくれ!」

 飯田の呼びかけに少しだけ力が湧いてくる。


 おそらく[鼓舞]を使ったのだろう。俺の使うものより効果を感じる。つくづく俺は戦闘に使えるスキルが少ないなと飯田を羨ましく思った。


「お前達!あんな奴らの出鱈目に惑わされてどうする!」

 皇帝の言葉に刺激されたのか、叫びながら応戦するミカエロ。


 巧みな剣裁きで遠藤と根本の攻撃を捌きつつ後退し、ジェネシー率いるローブ姿の兵士の1人から治癒を受けているようだ。そこには当然のように魔法攻撃が集中するが、ジェネシーが風の障壁を作り出したようで全てが弾かれてゆく。


「我が願いを叶えたまえ![聖なる裁きホーリージャッジメント]!これで終わりだぁぁぁーーー!」

 上原の突然の叫び声にビクリとして視線を向けると、本日二度目の白い光の帯を確認した。


 その光の帯は一直線にまだ寝そべていたリバークスに直撃し、背後に大穴を開け崩れた瓦礫の先から光が刺している。まさに一撃必殺なスキルなその光景に震えがくる。

 光が放たれた時、一瞬ではあったローブ姿の男達も、何人か巻き込まれたのも見えた。バークスの治癒でもしていたのだろう。すでに何度か体験したことではあるが、俺達が人を殺すという状況には慣れない。

 心臓がバクバクと高鳴り呼吸が荒くなるが、殺さなければこちらが殺されるというのが当たり前な世界なのだと改めて強く思いストレスを飲み込んだ。


 上原のそばには未波もいたので、きっと上原に魔力譲渡をしてアレを打たせたのだろう。その未波も上原同様少し顔色が悪そうなので魔力が枯渇しそうなのだろうか?2人とも回復薬を取り出し飲んでいる。


 だが、これでかなり有利な状況になっただろう。今までリバークスと対峙していた飯田達もミカエロに集中できる。もちろん蘭堂もそれに加わるだろう。後は俺が未波に代わってしっかりとみんなを守ることだけ考えよう。


 そう思っていた俺は、皇帝の体が光を放っていることに気付く。


「使えぬ奴らめ!お前達に期待した私が悪かったのだな!」

 そう叫ぶ皇帝。


 両手を前に翳し何かを呟き始めた。


「あ、あ、あ"ーーー!」

「おぉーっ、なぜ、ぐほぉーーー!」

 突然苦しみだした膝を突くジェネシーとミカエロ。


 その光景に浅野さんの事を思い出す。気付いた時には2人は干からびたミイラのようになった後、塵となって消えていった。皇帝に縋るように差し出したその指には、あの指輪が見え、塵となった2人と一緒に弾け、その欠片だけが残った。


「へ……陛下!これは、どういうことですか!」

 ローブ姿の男がそう叫ぶと、周りの兵士達も陛下陛下と声をあげる。


「煩いな!」

 そう言った皇帝は腰の剣を抜き横に降りぬくと、兵士達は切り刻まれるように傷を負い倒れていった。


「うむ。さすが帝国最強を謳うだけあるな。良いスキルも手に入った。それに……」

 そう言って俺達を見る皇帝はニヤリと笑う。


 やはりあの指輪の力で2人の能力を吸い取ったということだろう。

 俺は念の為[偵察]を使うと、そこには偽装されていない皇帝のステータスが表示されていた。もう擬態することをやめたのだろう。


――――――

マルドーク・デ・ウイストザーク / 人族 / クラス [盗賊]

力 D+ / 知 C / 耐 E+

<スキル>

[擬態] 能力やスキルを誤魔化す偽りの力

[隠密] 気配を殺して身を隠す力

[気配察知] 周囲の気配を感じる力

[急所突き] 相手の急所を把握して正確に攻撃を加える力

[魔力節約] スキル使用時の魔力消費を抑える力

[治癒] 癒しの力で傷を回復させる力

[剣術] 剣の扱いを極めし力

[真空破] 剣による真空の衝撃波を飛ばす力

[罠看破] 危険な罠を感知する力

[弓術] 弓を巧みに操る力

[魔法剣] 武具に魔力を籠めて強化する力

[飛剣] 籠めた四大魔法を放つ力

[肉体強化] 身体能力を向上させる力

[正拳突き] 強烈な一撃を放つ力

[算術] 瞬時に高度な計算を完了させる力

[魔力操作] 魔力の扱いを極めし力

[投擲術] 投擲の命中率を向上させる力

[魔性眼] 魅力を高め好意を受けやすくなる力

[金剛裂破] 己の武力を拳に乗せて解き放つ力

[武具超越] 武具に力を与え能力を向上させる力

[剣士之心得] 剣での攻撃力を大幅に上げる剣豪の力

[魔力節約] スキル使用時の魔力消費を抑える力

[物理召喚] 依り代になった物の場所に自己を召喚する力

――――――


 能力値の上がった皇帝のステータスを見て安堵する。劇的に上昇したステータスに打ちのめされる展開はなさそうだ。それに、一人になったことでやりやすくなったこともある。

 攻撃の出所が一か所になるなら、俺の背後だけ守るように鉄壁を小さく強くすることができる。そう思って俺は2歩、3歩と距離を詰めるように前に出た。


「ふは、ふはははは!ついに、遂に出た!こんなことならもっと早く三人を吸収しておけばよかった!」

 突然大笑い始めた皇帝。


 嬉しそうに笑みを浮かべている皇帝は、その懐から小さな黒い板を取り出した。俺にはそれが見慣れている黒い板、スマートフォンに見えた。


「もう、この世界とはおさらばだ!私は、スキルも魔法も持たぬ者の世界で王となる!これは、お前達のおかげでもあるな!」

「何を言っている!」

 皇帝の言葉に飯田がそう尋ねるが、そんな場合ではないことも分かっている。


「飯田!早く、あの男を止めろ!今すぐ殺せ!」

「佐田も、何を言って……分かった!」

 俺の声に反応した飯田は皇帝に向かって走り出した。


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※今までもちらっとだけ出ていた設定ですが、この世界の魔力回復用の回復薬、体力回復用の治療薬は効果が著しく弱いです。数十分程、自己治癒力を底上げする程度なので気休め程度ににんなちょいちょい服用しています。

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