62.皇帝の力 01
「我こそは蒼刃の竜騎士!リバークス・ウルバルズなり!陛下に仇成すというのなら、竜の騎士の俺様を倒してからにしてもらおうか!」
そう言って出てきた2メートルはあるだろう巨躯の男。
青く光輝く鎧に身を包み、身の丈程もある大きな剣を持っている。
周りにいた4人の兵士も一緒に前へと出る。
例の双剣使いと思われる、黄色のラインが文様のように入った銀鎧を着込んだ細身の男が、両手に細身の剣を持ち他の兵士と共に無言で前に出る。
皇帝の前には赤黒いローブを身に着けた魔導士風の男が、その左右に5~6人づつローブを身に纏った男達が並らび、俺達を見据えていた。
偵察で確認した3人の竜の騎士のステータスはそれなりに高く、苦戦することも予想された。それでも負けるわけにはいかないことだけは理解している。自身の目の前に "より硬く、より強固に" とイメージしながら何度も格子状の鉄壁に魔力を注ぐ。
未波も結界を作りだし、俺の鉄壁を補強するように包み込んでゆく。その未波を中心に床が光を放っているので、すでに[範囲回復]を発動し攻撃に備えているようだ。
他にも罠師の加藤さんは手を前に翳し集中しているようなので、前方に何か罠を設置してるのかもしれない。他のみんなも各々が動いているようだが確認する余裕はない。フランもきっと予定通り後ろに下がり、切り札の発動に備えているはずだ。
できれば最後はフランの手により終わらせてやりたい思いがあった。
俺は、みんなが魔法をぶつけあったり、兵士達と剣を叩きつけ合っている様子を見ながら、目の前の鉄壁に魔力を注ぎこみ、[強制退去]で帝国の兵士達に強風を送っていた。
「やるなお前達!」
そんな叫び声を聞き目線を向ける。
先ほど名乗りを上げていた聖騎士リバークスが、飯田と松本、河野さんが打ち合いをしている。三人を相手にしたリバークスは巧みに大剣を操り攻撃をそらし、危険な攻撃を叩きつけているようだ。
そこに石川や清水が雷撃を放ったりしているが、それすらも大剣で受け流している。能力やスキルではなく経験の差なのだろう。
その周りの兵士達は横井と不和さん達が応戦しているが、どの兵士も熟練の手練れという感じだ。横井達も相手の連携攻撃により翻弄されているようだ。
双剣の男、ミカエロとその周りを固める兵士達には蘭堂のグループを中心に乱戦をしている。玉井さんも[影縛り]で攻撃を挟んだり[影の支配者]で分身を突っ込ませたりしているが、ミカエロの双剣から繰り出される手数の多い斬撃により防がれている。
こんな世界で子供のころから英才教育されてる武人に、俺達が叶わないのは仕方のないことなのかと思ったが、それでもこちらはチートな異世界人だ!そう思って打開策を考える。
それにしても、皇帝は後ろにどっしりと座ったまま動かないのはなぜだろう。
そんな俺の肩をチョンチョンと突かれ振り向くと、その犯人は池田さんであった。
「あのさー、皇帝の座っている玉座ってやつ?その周りに結界とか反射とかの魔道具凄いんだよね。それに、私の簡易鑑定だからかもだけど、あの皇帝のステータス見えないんだよね。ルリさんだって名前だけは見えたのに。謎なんよねー」
「そうなんだ。池田さん、ありがとう」
そう返答する俺の顔をジッと見た後、池田さんは「んー」と言うと古川さん達の元へ戻って行った。
ルリでさえ名前は確認できた池田さんの簡易鑑定で読めないってことはないんじゃないか?そこに違和感を感じてしまう。俺はもう一度皇帝に[偵察]を使う。
やはり先ほどの出た通りのステータスが表示されている。
これだけの能力があれば俺達をすぐに制することも可能なのでは?だからこその余裕?だが、それで兵士達に被害がでれば帝国としては損害なんじゃないのか?それとも、竜の騎士と呼ばれる3人でさえ、皇帝にとってはどうでも良い存在なのか?
そんな考えをしながら、さらに詳細な情報が読み取れないか確認してみる。今までは偵察に強い魔力を籠めたことは無い。他のスキル同様、さらに強く魔力を籠めれば何かが見える……ハズ。そう思って口を開く。
「己が敵のその力、我が[偵察]により余すところなく読み取り、開示せよ!」
適当に考えた言葉に強く魔力を籠め[偵察]を発動するよう願う。
やはり先ほどのステータスが表示されている。やはり何もないのか?そう思っていた時、表示が一瞬ぶれる。初めてのその状況に慌てながらもさらに魔力を籠めもう一度強く願い叫ぶ。
「我が[偵察]により、その力、開示せよ!」
思ったより大きな声が出て何人かが俺を見る視線に気づき、恥ずかしくなるが顔を下げるわけにはいかない。
自分の顔が真っ赤に染まっていることは分かっている。だが、それよりも何よりも、今目の前に見えている表示に頭が混乱する。
皇帝に向けて両手を翳した手が震えるが、ゆっくりとその表示を確認する為に身動きが取れない。何か打開策はないか……そう思って探りたいが、何よりも訳が分からな過ぎて考えがまとまらない。
――――――
マルドーク・デ・ウイストザーク / 人族 / クラス [盗賊]
力 D- / 知 C- / 耐 E-
<スキル>
[擬態] 能力やスキルを誤魔化す偽りの力
[隠密] 気配を殺して身を隠す力
[気配察知] 周囲の気配を感じる力
[急所突き] 相手の急所を把握して正確に攻撃を加える力
[魔力節約] スキル使用時の魔力消費を抑える力
[治癒] 癒しの力で傷を回復させる力
[剣術] 剣の扱いを極めし力
[真空破] 剣による真空の衝撃波を飛ばす力
[罠看破] 危険な罠を感知する力
[弓術] 弓を巧みに操る力
[魔法剣] 武具に魔力を籠めて強化する力
[飛剣] 籠めた四大魔法を放つ力
[肉体強化] 身体能力を向上させる力
[正拳突き] 強烈な一撃を放つ力
[算術] 瞬時に高度な計算を完了させる力
[魔力操作] 魔力の扱いを極めし力
[投擲術] 投擲の命中率を向上させる力
[魔性眼] 魅力を高め好意を受けやすくなる力
[金剛裂破] 己の武力を拳に乗せて解き放つ力
[武具超越] 武具に力を与え能力を向上させる力
――――――
「スキル!どんだけ持ってるんだよ!」
そう叫びながら目の前の表示を必死で確認する。
スキルは、いっぱいだ。ジャンルは、まとまってない。この世界にはこんな出鱈目なスキル構成の奴がいるのか?それともスキルを覚える魔法書なんかがあるのか?あるなら飯田あたりから話が出そうだが?
それに、クラスが……
「盗賊?」
俺がポソリとそう言った後、魔力が枯渇したのか目の前の表示は元の軍神だった皇帝のものに切り替わり、頭に軽い痛みが走った。
「勝基君、何かあったの?」
未波が俺の隣に立ち前を向きながら聞いてきた。
「皇帝のステータスを魔力全開で再確認したら、クラスが盗賊だった」
「盗賊?軍神じゃなかったっけ?」
「ああ。んで、スキルが出鱈目。最初に見た者の他に算術とか、魔法剣とか弓術もあった。あと、能力値は俺と同じ程度しかなかった」
「え?なんで?」
思わず俺の方を見た未波。
何かに気付いた蘭堂が下がってくる。
対峙していたはずの双剣使いを見ると肩を負傷している。タイミング良く他の者達に任せ離脱していきたということだろう。
自身も傷を負っている蘭堂を未波が間髪入れず[治癒]により回復させている。傷が癒えたのを確認した未波は、加藤さん達の元へ走って行ってしまった。
「佐田、どうした?」
「偵察で見た数値が変わったんだよ。皇帝のクラスが変化した」
「なんだよそれ」
「皇帝のクラスが盗賊で、能力値は低かった。だけどスキルがすげーある。初めて見るような歪なステータスだった。それがこの世界の普通なのかわからんけど」
「じゃあ、あの三人さえなんとかできればこの戦い終わらせれるってことか?」
「その可能性は、ある」
蘭堂は皇帝へと視線を戻しジッと見ている。
「わかった。もう少しであの双剣使いの攻撃を読めそうだからなんとかするわ。あとは、俺が飯田にそれを伝える。俺が加わればあの大剣の奴もいけるだろし?」
「任せた」
再び双剣使いに向かっていく蘭堂。
気づけば未波は俺のそばまで戻ってきており、後衛を務めていた他のみんなも集まってきている。
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