60.反撃の狼煙 02
それぞれが思い思いの夜を過ごして翌朝。
朝からかつ丼風のガッツリ飯を頂いた俺達は、全員でゆっくりと帝都へ向かって森の中を歩く。
フランを入れれば総勢29人。
俺のすぐそばにはルリとコガネ、両肩にはアクアとレッドが乗り俺の頬に体を寄せている。多少の緊張感も有りつつも遠足気分で歩いている。
森との境界線では自治区へと行くとき同様、ルリとコガネは森の外への境界にガンガン攻撃を仕掛けていたが、やはり境界を超えることは無理だったようだ。分かっていたことだろうに悔しそうにする2人。
アクアとレッドも真似して境界に攻撃仕掛けている。レッドはしっぽをペシペシしており アクアは体当たりでベチョリと見えない境界に張り付くようにしている光景に癒された。
「さすがにこの戦力で負けることはないだろ?みんなは安心して待っててくれよ」
そう言う俺に、不安そうな顔のルリとコガネ。
2人を撫でまわし、もちろんアクアとレッドも頬擦りして別れる。少しだけ不安がよぎる。俺達が負けるわけない……そうは言ったがとうの皇帝は軍神らしいし、他にも聖戦士や魔導士もいるようだ。
帝国の兵団に属さない皇帝直属の猛者達……名前、なんだっけ?
「飯田、皇帝の直属部隊ってなんてったっけ?」
「ああ、竜の騎士だな。蒼刃竜の聖騎士リバークスは、正直俺も単独では勝てるかわからない。それに紅蓮竜の魔導士、ジェネシーは多分石川と良い勝負をしそうな程、多彩な魔法を使ってくる。
もう1人、神雷竜の双剣士、ミカエロも強いよ。あとこの三人には、10名程度だけど直属の部下がいて、常に連携を深めるための訓練をしていた。今も正直不安もある。
だが俺達は強くなった。負ける気はしないよ。まあ俺達はルリさん達の力も借りてたし、少しズルしたって感じだけどな。そんなことも言っている場合じゃないし、あっちの都合で呼ばれたわけだし、多少はズルしたって良いだろ?」
そう言って笑う飯田。
絶対に成し遂げなくてはいけないのは、俺と未波でみんなを守ることだ。
俺としては馴染のない他中学出身の奴らもいるし、正直中学時代は嫌な奴だと思ったものもいる。だが、拠点で少なからず一緒に生活をした仲だ。目の前でその命が消えるのを見るのはもうたくさんだ。
もうこれ以上、誰一人として死なせたくはない。帝国のやつらにこれ以上好き勝手されてたまるか。そう思った。
いざ戦いになった場合は、前衛職の奴らは前に出て、後衛が遠距離攻撃とバフとデバフで援護、そしてそれらを俺と未波が守る。これで良いはずだ。怪我したら未波もいるし、神官の奴だっている。
負けるわけがない……
そうは思うが俺の心の中にある不安はいつまでも消えなかった。
それから暫く歩くと帝都の門までたどり着く。
途中、移動中の馬車とすれ違ったり追い抜かれたりしたが、集団で歩く俺達を物珍しそうに見ていた。中には「貧乏人が!邪魔だ!」などと俺達を怒鳴りつける輩もいた。
多分だがお前が乗っている馬車より飯田が装備している鎧の方が遥かに高いと思うぞ、と言ってやりたいぐらいだった。そもそも聖なる鎧は金では買えないのだろうが。
帝都の門では予想通り門番の兵士とひと悶着。
俺達を捕縛しようとした兵士達も、「これから城へ行く」と宣言して睨む飯田に怯え、すぐに道を開けてくれた。
俺達が街中を進むと好奇な目で見る街の人達に交え、岸本さんもこちらに手を振っていた。女性陣が暫くそこで立ち話。その間も兵士達は俺達を頭目から監視するようにくっついてきた。
応援を呼んだのかその数は増えているようだ。
「結局由美ちゃんは来ないってさ」
そう報告してくれる未波に「だろうな」と返しておく。
今回参加するなら前回帰ったりしなかっただろう。
「さて、あれが城か……でかいな。それにお出迎えもいるようだ」
「ああ。みんな、油断だけはしないようにしよう!」
初めて見る帝都の城に少しだけ興奮する。
自治区の城とは比べ物にならないほど大きく輝くほど白かった。
その城へと続く道には、左右に兵士達がずらりと並び頭を下げて待ち構えている。これはこのまま通ってよしってことだよな?
緊張しながらもその道を進む。
念の為、すぐにでも鉄壁を出せるよう警戒しながら。
飯田や蘭堂、横井達男性陣は、さりげなく左右に広がり女性陣を守る様な立ち位置へと変えていた。そして、なぜか先頭を歩く俺と未波……何でだよ!と心の中で悪態をつくが、いざとなれば飯田に全て丸投げだから今は我慢しよう。
城内に入ってからも状況は変わらず、少し怯えた様子の侍女や執事と思われる人たちが各通路に立ち、俺達を誘導したいようで「こちらです」と促していた。
飯田のいるあたりまで下がった俺は話しかける。
「飯田、このまま進んでもいいのか?」
「ああ、多分俺達を召喚した玉座の間に誘導したいんだと思う。あそこは広さもあるし、話し合いも、ある程度の戦闘もできるだろうし」
「そうか、じゃあ、いい加減お前が先頭あるけよ」
「……良いが、佐田と志田さんは下がってみんなを守ってくれよ?」
そんな話をしながらそのまま飯田がいた場所をキープ、未波に声をかけようとした俺は口を閉じた。
嬉しそうに先頭まで早足で歩く飯田が未波に声をかけている。
笑顔で話をする2人を見て、また少し胸が痛んだ。
未波は俺の反対側を守るように下がってきた。その未波が俺を見て笑みを浮かべるが、俺はその顔を見るのが少し辛くなり視線を前に戻した。
「勝基君、あんたもほんとに……はぁー、いいかげん―――」
近くにいた加藤さんが俺にそう話しかけてくる。未波が焦りながら加藤さんに抱きつき言葉を遮っていた。
「なんだ?俺、何かやらかしてる?」
不安になった俺は2人に向かってそう聞き返すと、未波が「大丈夫だから」と言いながら加藤さんに頬を膨らませ小声で何かを言っていた。
そうこうしている間に、俺達は玉座の間と呼ばれる広い部屋へとたどり着く。
目の前には初めて見る皇帝と思われる男と、その左右には多数の兵士達が待ち構えていた。
兵士達は誰もが睨みつけるように俺達を見ていた。
俺は皇帝に[偵察]を使った。
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