57.フラン救出と新たな火種 02
藍川に昔話を続ける俺。
「毎回フラフラになりながらそのまま家に帰るんだ。親は俺を引きずる浜崎達も、ボロボロになりながら帰ってくる俺も、ただ見てるだけだった。不登校よりはマシだとでも思って黙認してたんだろな」
「なんだよその親!お前、捨て子か何かだったのか?」
「そんなわけねーだろ……多分」
藍川の言葉で俺は若干不安になってしまった。いや、さすがに拾われたってことは無いだろ?父さんとも顔が似てるし……
「だけどお前は逃げたじゃないか!」
「……あれは、逃げたって言うのかな?」
俺は過去を思い出し、思ったより苦しくならないことに安堵し話を続けた。
「あいつらは連絡を無視する度に俺を迎えに来ていた。だが3か月もそれを続けてたらさすがに飽きたんだろうな?最後のリンチで、俺はあちこち骨折して1か月以上入院したんだよ。結局はそのまま引きこもり……
親は世間体があるからと、今は隣町で1人暮らししてたんだが、まさか召喚に巻き込まれるなんて夢にも思わなかったがな!」
最後は思った以上に感情が高ぶってしまったが、どうにか話し終えた俺はみんなが押し黙ってしまったことに気まずくなり頬を掻く。
「それでも俺は、あいつらが許せなかった。だから一泡吹かせたくて、だから俺……」
沈黙が続いた後、藍川は震える声でそう言った。
「だったらもう良いだろ?あいつらはもういない」
「でも……」
「お前はここで意見を言える立場になったんだろ?今度は弱い奴らの立場になってここを豊かになるように知恵を絞ればいいんじゃないか?戦闘に特化したスキルではないんだろ?異世界知識チートってやつだ。どうせなら楽しめよこの異世界を」
俺の提案に口を半開きにして惚ける藍川。
「俺を、殺さないのか?」
「殺さないよ」
「許してくれるのか?」
「許してはないけどな?」
「うぐっ……俺に、できるかな?」
「できるかなじゃないからな?やれよ。じゃなきゃ自治区ごと潰すからな?フランが」
そう言われたフランはいつの間にか開放され、笑顔で[カラクリ]を大量召喚しファイティングポーズをさせていた。
どうやらフランは室内にいた侍女と思われる女性陣により首輪なども外され自由となったようだ。
「やるよ!やるから!だからもう勘弁してよ!」
壁際まで下がり頭を抱えしゃがみ込んだ藍川。
これで終わりだな。そう思った俺は改めて周囲を確認する。部屋の入り口には年配の男性が数名こちらを伺っている。
「で、そこの奴ら。何者だ?」
その男達を見ながらそう言うと、一瞬びくりとした後、こちらへゆっくりと歩いてきた。
「私がこのサクリエル王国、いえ、サクリエル自治区の区長をしているエモンズド・フォン・サクリエルでございます」
「軍部総長のジェイルズと申します」
2人がそう自己紹介した後、残りの2人は頭を下げるだけだった。
「じゃあ貴方達2人が責任者、ってことでいいんですね?」
「いえ私は……はい、その通りです」
区長は一瞬否定しようとしたが、どうやら諦めたようで頭を下げていた。
「じゃあ今後の事は追々な」
「追々、ですか?」
「賠償とかあるだろ?相手は帝国じゃないぞ?迷惑を被ったのは俺達とフランだ。だが帝国とは俺達もこれからひと悶着あると思うから、それが落ち着いてからまた交渉にくる」
「帝国と、では我々とも共闘できるはずです!我々と手を手を組んで―――」
区長の返事を聞きイラっとしてしまった俺の顔を見て、区長は言葉を途中で止めたようだ。
そのまま全てを後回しにして、俺達はフランを連れ森へと戻ることにした。
城を出る時には、多数が並んで頭を下げ送り出された。
やっと森に帰れるな。そう思った俺の右腕にフランが嬉しそうに腕を絡ませてきた。
「そう言えばですがカツキ様、先ほどはなぜ私が潰す、ということをおっしゃったのですか?」
「ん?ああ、そうだな」
「フランも今回の事で怒ってるだろ?だから、かな?」
俺は頭に浮かんでいた考えを濁して伝える。
「そうでしたの?私が怒っていたのは確かですが、まあいいですわ!」
そう言ってフランは笑顔で絡みついている腕の力を強めていた。
何となく背後を見ると、未波は不機嫌そうに頬を膨らませ視線をそらされた。また嫌われたかな?だが、フランだって不安だっただろうし、今は好きにさせておこう。そう思ってしまった。
「フランも1人で不安だったろうし、俺なんかでも安心するんだろ」
そんな言い訳じみた言葉を呟いてみた。
「勝基君、鈍すぎで見ててイラっとするの私だけ?」
背後で加藤さんのそんな言葉が聞こえたが、俺は加藤さんが何を言っているのか理解できなかった。
◆◇◆◇◆
――― 自治区城内
「あーあ、良い狩場だったんだけどな」
俺はそう言いながら激しい戦闘跡を見つめている。
「ゾイルか?」
胡坐をかいてこちらを見たのは7将軍の1人、オルベイルだった。
「ああ。おつかれさん。派手にやられたようだな」
「完敗だよ。これで祖国を復興させる夢もついえたな。ならば死してでも、と思ったが……死にきれなかったようだ」
「そうか」
そう言いながら近づいた俺は、オルベイルの首筋に短剣を突き刺した。
「ぐっ!お前、何を……」
「ゾイルお前!」
俯いていたミルベイルが悲鳴に反応しこちらを向くが、それより早く喉を突く。
じじいはすでに死んでいる。ルードリヒもだ。あとは……
俺はこちらをみて怯えている青年サダムに近づいた。
這いつくばって逃げようとしたサダムの背中を切り付け、動かなくなった5人の遺体をバッグに収納する。あのガキとの戦闘で貴重な下僕が多数無くなってしまったが、それよりも良い遺体が手に入った。
すでに安置所に置かれていた外で戦った者達の遺体も回収してきている。
とりあえず、一旦帰ろう。
そう考え長らく滞在していた自治区を後にした。
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