05.集団転移と帝国の思想 01
時は少しさかのぼり、ある高校の教室で寛ぐ生徒達。
「あ、もうそろそろチャイムなるよね?」
「もう鳴るね。じゃあ今日も放課後行くでしょ?」
「うん。私クレープ食べたいかも」
「じゃああそこだね」
「だね」
隣の席の愛理と放課後の予定を決めて、私は前を向く。
次は古文の授業だっけ?面倒だ。
そう思って机に肘を突きため息をつく。
始業のチャイムが聞こえた。
もうすぐ古文の先生がくるかな?
そう思っていた時、教室は光に包まれた。
周りからはクラスメイトの悲鳴や怒号が聞こえ、未波と私の名を呼ぶ愛理の声も聞こえた。
咄嗟に手を伸ばすと、その手にしっかりとしがみつく感触があり少し落ち着いた。
そして―――
「ここは、どこ?」
眩しさに瞑っていた目を開けると、そこは石の壁に囲まれたファンタジー世界のお城のような広い部屋が見えた。
私が唖然としている間に他のクラスメイト達は、それぞれ仲の良い者同志が集まり周りを見渡していた。
私の腕には愛理がしがみついていて、さらには千佳と沙耶、京子が集まり同じように不安そうな表情を見せていた。
灰色の形を揃えた石を積んだ壁。左右には鎧を来た兵士のような人たちが並んでいる。中央には赤いジュータン、その先には少し段差があり、三人の男女が玉座のような物に座っていた。
左から綺麗なドレスを着た女性、まるで王様のような恰好をした体格の良いおじさん、そして王子様のような服を着た青年が座っていた。
「落ち着かれたかな勇者様方、此度は我が国を、いや世界を救って頂きたく呼び出させて貰った……ああ、贄となった者達が邪魔だな。すぐに片付けさせる、待たれよ」
その声とともに鎧を来た男性達が動き出し、私達を取り囲むようにして倒れていた人達を引きずって外へ出ていった。私はその様子を見て初めて、周りに20名はいるだろ人達が倒れているのに気付いた。
どの人達も黒いローブを羽織りピクリとも動いてはいなかった。
まさか、死んでたり?そんなことを感じてしまった。
「では改めて私が、皇帝マルドーク・デ・ウイストザークである。戸惑いはあろうだろうがまずは話を聞いてくれ。……後は任せたぞ」
そう言って皇帝を名乗ったおじさんは部屋を出ていった。
一緒にドレスを着た女性も出ていったので皇妃様なのだろうか?
残された皇太子?王子様っぽい男性が足を組みこちらを舐めるように見ている。ちょっと不快。
「では、ご説明いたします―――」
そう言って始まった派手な服を身に纏ったおじさんからの説明で、やはり先ほどの贄と呼ばれた人達の命と引き換えに、私達は異国の、というより異世界に召喚されたようだ。
信じられない話だが、同じように信じられずに騒いだ浜崎君が腕を切り落とされ、その後、治癒魔法というものにより綺麗に治されたのを見て、みんな何も言えなくなってしまった。
「もう見た?」
「うん。聖女だって……まるでゲームみたい。一晩寝たら家のベッドの上ってこと、ないかな?」
「そうだったら良いのにね」
私は言われるがままにステータスと唱え、自分が聖女と呼ばれるクラスであることを知る。スキルは[結界]だって。本当に漫画かゲームの世界のようだ。
愛理は罠師というクラスだったらしい。何それ怖い。
「これからどうなるのかな?」
「どうって、魔王をやっつければ帰れるんでしょ?」
「無理だよそんな、私、調教師だよ?」
「私なんて調理師だってば。それに、帰れるってホントに?条件は?倒した人だけが帰れるとかない?」
「そんなの、私にも分からないよ……」
千佳は調理師、沙耶は調教師、京子は影術師だって。分からな過ぎて不安が込み上げてくる。
「ねえ。飯田君、勇者なんだって」
「じゃあ聖女の未波とは相性ばっちり?」
千佳と京子の会話に思わず「やめてよ」と話を遮っていた。
そんな会話をしならが周りを見渡すと、私と同じクラス委員をしている飯田君達のグループは飯田君の勇者を筆頭に、賢者、魔導士という上級クラスと呼ばれる職業みたいなものを引き当てたようだ。
さっき騒いで腕を落とされていた浜崎君も、まるで何事も無かったかのように、いつものやんちゃなグループで騒がしくしている。
聖剣士や重戦士などの戦闘に向いたクラスを引きあてたようで、先ほどからテンションが高くてちょっと怖い。あのグループは好きになれない。
だけど他のクラスメイト達も飯田君や浜崎君のグループに擦り寄るようにして媚びているように見える。
その光景を眺めながら私は、自然と不登校になった幼馴染を探していた。
いるわけないのに……
そんな中、分厚い石板のような物を持った二人組の男性が各グループを回って何かやっているようだ。飯田君のグループではやたらと頭をペコペコしているようだが、何度か偉そうな態度をとって飯田君に何か言われている。
暫くすると私達の元にもその二人組がやってきた。
「私は魔導局の者だ。合図をするので順にこれに手を置く様に」
偉そうにそう言われ、まずは私からとその石板に掌を乗せる。
「離して良いぞ」
そう言われ少しムカつきながら手を離すと、石板には見たことも無い字が浮かび上がっていた。だけどその文字は自然と読め、私のシテータスが映しだされていることが分かった。
私は、その不思議な光景をぼんやりと眺めていた。
「聖女だ!よし、お前は俺が鍛えてやる!魔導局に来い!」
「えっ嫌です」
「何だと!」
目を吊り上げて怒るその男性に驚き後ずさるが、そこに飯田君がやってきた。
「おい!何をやってる!」
「あ?」
飯田君の声に威嚇するように振り向いた男は、一瞬ビクッとして顔を下げる。
「あ、いや勇者様……」
「何をやってるって聞いてるんだけど?」
「いえ、この方が、聖女様だったもので。ぜひ私の元に来て一緒に働いて頂けないかとお誘いを……」
様子を伺いながらそう言う男に呆れてため息をつく。
「こっちの世界だと、鍛えてやるからうちに来い!っていうのをお誘いって言うんだね」
愛理が切れ気味にそう言うと、飯田君がその男性を睨みつけていた。
飯田君ってあんな表情もするんだ……
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