56.フラン救出と新たな火種 01
自治区の城の一室。
飯田はガタガタと震える藍川を睨みつけている。
「藍川!速やかにフランソワーズ姫を開放し投降しろ!」
「い、嫌だー!」
フランに隠れながら叫ぶ藍川。
よく見るとフランの首には何かが巻かれている。
「おい、藍川」
「やっぱり、佐田君もこっちに来てたんだね」
「そんなことはどうでもいい!」
そんな藍川に怒りを堪える。
「1つ聞くが、フランの首に着いてるのはなんだ?まさか……よくある奴隷にする魔導具か何かじゃないだろうな……それで、フランに酷いことを―――」
「違う!そんな事、するわけないだろ!」
怒りに震える俺の問いに慌てて答える藍川。
「この男は酷いのですよ?抵抗できない私にあんなことやこんなことを……私、穢されてしまいましたわ!」
フランが悲しそうに言った言葉に更なる怒りが込み上げる。
「藍川、てっめー!」
「藍川最低っ!」
石川を始め女性陣も藍川に罵声を浴びせる。
「くー、なんて裏山っ!」
おい、今のは誰だ?
飯田はすでに剣を握り無言で藍川にじりじりと近づいて行っている。
「姫様やめてよ!そんなことしてないだろ?これはスキルを封じる首輪だし!ひぃっ、殺さないで!」
怯え狼狽える藍川は腰の短剣を抜き、フランに突き付けている。その手はプルプルと震えていた。
「お前、フランに傷の一つでもつけてみろ、絶対に許さんからな!」
「ひっ!」
一歩前に出て叫ぶ俺に悲鳴を上げて後退る藍川。
そしてフランはにっこり微笑んだ。
「冗談ですわ!」
「へ?」
思わず変な声が出てしまった。
フランは舌を出した後「ふふふ」と笑っている。
「フランソワーズ姫、本当に、本当に何もなかったのですか?」
飯田が戸惑いながらそう聞くと、フランは「ええ、当然ですわ!好きでもない殿方に何かされるようであれば、その前に自死しておりましてよ!」と鼻息を荒くして答えていた。
「このアイカワという方、必死で私を口説いてきましたのよ。ですが私はすでにカツキ様に身も心も捧げておりますの!決して応じませんでしたわ!」
「何言ってんだよもう!」
楽しそうにそう騙るフランに思わず突っ込みを入れる。
「佐田、お前、フランソワーズ姫とそう言う関係だったのか?」
飯田が戸惑いそう聞いてきた。
フランの冗談に決まってるだろう?飯田が相変わらずバカなんだな。と思いため息をついた。
そんな俺は、他の奴らが「そうだったんだ」「えー佐田君が?お姫様と?」などと言っているのを聞き、つい未波の方を見る。
未波は笑顔だ。
笑顔だが、その目が笑っていない。
俺は、それが最大級に怒っている時の未波の顔だと知っている。
「未波?今のはフランの冗談だって、分かってるよな?」
俺の言葉に未波は胸の前で腕を組みながら顔をそむけてしまった。どうやら益々嫌われてしまったようだ。
「フランさん、あんまり変なこと言うと勝基君にも嫌われちゃうよ?」
笑いながらそう言ったのは加藤さんだった。
「それはダメですわ!先ほどのはほんのジョークという奴ですわ!カツキ様は紳士ですのよ?私が迫っても何もしてこないのです!少しぐらい私のこの躰を堪能して下されば良いですのに!」
そう言いながら身をよじるフランに、俺は頭を押さえながらため息をついた。
「藍川。もう打つ手はないだろ?早く解放して、大人しくに2~3発殴られろよ」
俺は、ため息交じりでそう言った。
「嫌だよ!俺は、俺はあいつらに復讐するんだっ!」
「うわっ、ちょっと待て!落ち着けって、フランが怪我でもしたらどうするんだ!」
「あ、ごめん」
狼狽え短刀をぶんぶん振り回していた藍川を落ち着かせるように声を掛けると、藍川は素直に謝り短剣をフランから遠ざけた。
「そう言えば、なんであいつらは来てない……」
少しだけ落ち着いた様子の藍川だったが、そう言って誰かを探すように俺達を見回している。
「あいつらって、浜崎達か?」
「ああそうだ!全てはあいつらに復讐する為だっ!まさか、それを知ってるから隠したのか?みんなで俺をバカにしてっ!やっぱりお前達も敵だっ!」
再び興奮して俺達に短剣を向ける藍川。
「浜崎達は死んだよ」
「えっ」
飯田の言葉に思わず短刀を落とす藍川。
飯田は、浜崎が魔剣に乗っ取られ4人を殺し、魔王化して最後にはルリに殺され5人とも亡骸さえ残らなかったことなど、浜崎達の最期を伝えた。
「そうか、死んだのか……ざまーみろだ。じゃあ、俺は結局……」
藍川は悲しそうに笑った。
「藍川、浜崎達はそれなりに悲惨な最期をむかえたよ。もう、復讐は必要ないだろ?」
俺の言葉に顔を下げ黙り込む藍川。
そして震えながら顔を上げた藍川は俺に向かって叫んだ。
「お前に何が分かる!引きこもって逃げたくせに!」
「俺は関係無いだろ?浜崎達はもう死んだんだ!復讐しようにも相手がいない。諦めて飲み込むしかないだろ!」
藍川は俺をキッと睨んでいる。
「俺の恨みはあいつらが死んだとしても消えることは無い!俺は、学校を休んでもメールや電話が何度も来た!それを無視したら次に登校した時にはもっと殴られる!だから引きこもることもできなくて……そんな酷い話が―――」
「だから?」
俺は藍川の言葉を遮るようにそう言った。
「だから?だからってなんだよ!お前も俺をバカにしてるんだな!」
「俺は浜崎達の連絡は全部無視したぞ?」
「無視?無視、したのか?」
「ああ。だけど結局らあいつらは、家に毎日やってきて学校まで引きずるように俺を拉致して、体育館裏で何度もリンチしてくれたけどな」
「へ?」
惚けている藍川を無視して、俺は話を続けた。
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