51.フラン救出作戦 03
――― 自治区・城の西側
「うーん。[影走り]使って全力ダッシュして来たけど、なんだか面倒そうだなー。裏から来るってことも予測済みだったかな?」
私は城の西側、裏口がある場所が見える少し離れた丘から、望遠鏡をのぞき込み魔術師風の黒いローブを羽織った男を確認していた。
その周りには多数の兵がいるが皆ボロボロで今にも死にそうに見えた。私はその、どことなく生気のない顔をしている兵士達を注意深く確認してゆく
「あれ、生きてーはいないよね?うーん、やっぱ死んでるね?まるでゾンビだ。ゾンビ映画も好きだけど……現実だとグロ過ぎ無理」
望遠鏡に映し出されるその兵士達の中には、顔の半分が爛れて落ち骨が露出している者達も少なくはなかった。
死霊使いって奴かな?あれに噛まれたら感染する?
そんなことを考えながら口元を布で覆う。どう考えても匂いそうだったからでもあるし、暗躍するなら当然のスタイルでもある。私は満足感により誰が見ているわけでもないの頷いていた。
ちなみに、某忍者アニメの額当ても作ってもらったがクラスメイト達が召喚されていることを知ってから使ってはいない。さすがにあればコスプレ感が強すぎて恥ずかしい。
「さて、数は少ないけど仕方ないよね?」
そう思って腰の魔法のポーチから丸い拳大の魔道具を取り出した。
「そーれっ!」
狩りにより少しだけ上がった筋力を頼りに全力投球。
[投擲]スキル持ちの私の狙い通りに黒いローブの男に向かって飛んで行ったが、力足りずその手前で失速する。その魔道具はゾンビ兵の1人が放った何かにより切り裂かれ、爆発を起こしていた。
「えー、スキル使うの?」
明らかにスキルで放った魔法のような攻撃にゲンナリする。
30人ぐらいのゾンビ兵が全員スキル持ちってことなら私一人ではちょっと厳しい。[隠密]を使えば素通りできるけど……目的は敵の戦力をそぐことでもあるし、そもそもゾンビが匂いに反応とかあるあるだ。
ダンジョンでも鼻の良い犬系の魔物は近づくと反応することもあったし……ここは全滅させきたいけど、ゾンビならこっそり近づいて一撃必殺も仕えないだろう。急所は見当たらないし。
やっぱりあの魔術師を狙うしかないよね?
そう思った私はポーチから回復薬を取り出し一口飲むと、丘から飛び降りゾンビ兵達の屯している場に向かって[影走り]で走った。
懐から取り出した煙玉を勢いよく投げつける。一つ、二つと投げてゆく。
それに反応したゾンビ達は各々のスキルでそれらを切り伏せ、焼き、爆散させた。
辺りはモクモクと黒い煙が立ち込める。
[隠密]はすでに使用している。
私はゾンビ兵達の間を抜け黒ローブの男の元へと急ぐ。
周りからゾンビ達のア"ー、ア"ーという濁った声が聞こえるが、スキルでも詠唱しているのだろうか?
そう思った私は、突風に押されるように横に吹き飛ばされ、全身を切り裂かれるような痛みを感じた。
「痛いなーもう!」
地面にうまく着地した私は、煙が消え去っていることに気付いたが、それよりもゾンビ達がヨロヨロと倒れたりしていることに目がいった。
煙を吹き飛ばすためにカマイタチ的なスキルを放ったのだろうと推測した私は、[影分身]を3体作って突っ込ませた。
予想通りゾンビの何人かはスキルを暴発させ仲間割れしている。
「お前達、何をやってる!くっそー、なんて卑怯な作戦をっ!」
黒ローブはそんなことを叫んでいる。
ゾンビもそうだがこの男も相当なバカなのだろう。
少し気が楽になった私は、ガードの甘くなった男に近づこうとした瞬間、男はバッグに手を突っ込んだことで警戒を強めた。男はバッグの中から放り出すようにして何かを私に向かった投げつける。
「ひっ!」
思わず悲鳴をあげて後ろに飛びのいた。
投げつけられたのは大男……の腐乱した亡骸だった。
「何すんの!」
「煩い!卑怯なお前が悪いんだろが!」
そう叫ぶ男が手を前に突き出すと、のベーっと地面に落ちていた亡骸がのそりと起きる。
「ぎゃっ!」
予想はしてたが耐えられずに再度悲鳴をあげた私は身構える。
男からさらに2つの大男が投げつけられ、3体の大男が暴れ出したのを確認し、半ばパニックになって愛用の鉄串を仕舞うと、最近作ってもらった日本刀に持ち替える。
[影走り]で一気に距離を詰め1体の巨躯な腹部を切り裂くが、それにはまったく反応を見ぜずに私を追いかけるように拳を叩きつけられた。
拳は爆発するように光りを放ち、私の体はまた宙を舞っていた。
「だが甘いのだよ!」
そう言って私は投げ出された私の[影分身]の背後から抜け出し、大男の左太もも付近を振りぬいた。
全力で切りかかり強引に切り落とした結果、大男の体が横倒しに倒れ込み藻掻いている。そして私の腕も大いに痛み、慌てて取り出した治療薬をぶっかけた。
だがこの世界の治療薬はアニメのようにすぐ効果があるものではない。治癒系のスキルならそれなりに速攻性はあるが、薬の効果は限定的なのだ。
私は痛みが少しだけ軽減され始めた腕をさすりがなら残り二体を見据える。そして気付いた。黒ローブの男はいないことに。
「逃げた?」
そう思った私は目の前の二体の男達から距離を取ると、先ほどは使った残り2個の炸裂弾という魔導具を投げつける。
何を思ったか2体の大柄ゾンビはそれを抱きしめるように両腕に抱え込むと、爆音と共に魔導具ははじけ爆散した。
「んぎゃー!」
私は飛び散った腐肉片から身を守るために[影分身]を乱発させ、身代わりをさせた後、枯渇しかけた魔力によりその場にへたり込んだ。
『あ"ー、お"ー』
間髪入れずにそんな声が聞こえてきた私は、すでに涙目になっていた。
「なんだよもー!」
必死に立ち上がる私はようやく[隠密]を使うことを思い出し、ゆっくりとゾンビ達から距離を取る。
ゾンビ兵達は主が消えうせたからなのか、周りをキョロキョロと見渡した後、動かなくなった。
「これは……放置でいいかな?」
そう呟いた私は、城の裏口を目指して歩き出した。
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