50.フラン救出作戦 02
「あれ?言ってなかったっけ?」
ルリ達が森から出られないことに驚くみんなに俺はそう返したが、みんなからはため息が返ってきた。
「なんで兵士達を追っかけて自治区まで行かないんだと思ってたら……そう言うことだったんだな」
「私もそう思ってた……ごめんねルリさん、コガネさん」
未波までそんなことを言ってルリ達に謝っていたが、確かにみんなには言ってなかったかな?と思い返す。
ルリ達も含め、この森にいる魔物は森の外には出られない。おそらくこの森全体がダンジョンのようになっていて、出られないように何らかの制限がかかっているのだろう。
多分、異世界あるあるなダンジョンブレイクとかスタンピードとか、そういった現象があれば出られるのかもしれないけど。
考えてみればダンジョンの中に別のダンジョンがあるという不思議な状況だが、実際そうなんだからそれで理解するしかないなと思った。
それにしても、もっと俺もみんなとも報連相しなきゃだめだな。そう考えた俺はハッとしてしまう。
なんでみんなを受け入れる前提なんだよ……そもそもここは俺の安らぎの地だったはずだ。フランを早急に取り戻し、そして皇帝をぶっとばし、全て終わったらみんなを追い出して平穏無事に暮らすんだ。
改めてそう思った俺は顔を上げた。
「なんだよ……」
みんなの視線が集まっているのを感じた俺はそう呟いた。
「いや、もう行くんだろって思ってな」
「それでみんな、なんで俺を見るんだ?飯田は勇者なんだし、そういう時はお前が音頭を取れば良いだろ?」
飯田の言葉にそう返答すると飯田は頬を掻く。
「ここはお前の拠点だろ?そこに居候させてもらってる俺達の認識では、すでにお前がリーダーってことになっていたんだが?」
「待て待て!なんでそうなるんだよ!」
慌てる俺を見て笑っている奴らがいる。
「とにかく!俺はリーダーなんかにならないからな!そんなことより早くフランを助け出すぞ!飯田が音頭とってくれよ!」
「わかったよ。じゃあみんな!フラン姫は必ず助け出す!行くぞー!」
飯田の号令にみんなが声を揃える。
「じゃあ私はこれで……」
「えっマジ?このタイミングでよく離脱しようなんて言い出せるな?」
俺はこそっと帰ろうと俺に声を掛けてきた岸本さんにそう言った。
「私は他にやることあるからさ?ごめんね」
「そうなのか。まあ情報がもらえただけでもありがたいからな。今回はありがとう……岸本さんもここのダンジョンの試練受けたかったら俺達がいる時に来いよ?まじ凄いスキル貰えるら」
「ダンジョンはその内ね。じゃあ行くわ……後、あんたもさっさと覚悟を決めなよね?」
「ん?何の覚悟だよ?」
訳が分からない俺にため息を返した岸本さんは、前回と同じように俺の目の前から消えていった。
俺達は全員で自治区を目指し南下した。
『カツキ、くれぐれも気を付けるのじゃぞ?』
『私達は一緒ではないのだからな?』
「わかってるよ。じゃあ、2人は帰りを待っててくれ」
『わかったのじゃ!』
『うむ!』
そう言った後もルリ達は森との境界となる部分に攻撃を仕掛け跳ね返されることを繰り返している。
俺は悔しそうに顔を歪めているルリ達を別れ、さらに自治区を目指す。
「ここから10分ぐらい南下すると帝国と繋ぐ街道へと出るから、そうしたら道なりに進めばすぐよ」
加藤さんがいつの間にか持っていた簡略図は、岸本さんから貰った物らしい。
森、10分で道、30分で城、などと書いてあるものだがそれによると道に出てから目的地まで30分程度らしい。分かりやすいとも言えるが、簡略し過ぎで警戒すべき場所などの記載はない。
「このままのんびりと平穏無事にたどり着ければ良いけど……無理だろうなー」
「そりゃそうだろ」
蘭堂達がそう話しているが、俺もそうだと思っている。
フランを取り返しに俺達がやってくることなど普通に想像できる話だ。だがそれでも行かないという選択肢はない。情報が無い以上突き進むしかない。
それに、一刻も早くフランを助け出さなければ、フランを娶るという目的の藍川が、フランに何をするか分からない。
俺達は野村さんが新たに得たスキル、[食料庫]から取り出し配られたサンドイッチを頬張りながら、少しだけ緊張しつつも足を進めていた。
◆◇◆◇◆
――― 自治区内北部
「なぜだ……」
俺は城への帰りの馬車内で頭を抱える。
帝国の姫は無事確保した。俺はその姫を娶り帝国をつぶす為の足掛かりもでき、あいつらに復讐をする為の道筋も整った、はずだった……
だが、姫を確保する少し前から不安が消えない。
[知略]スキルの閃きも、最善を求めれば今すぐ逃げる選択肢しか思い浮かばなくなっている。これは、未来が何か変わったか?そう思ってから不安で胸が苦しくなり苛立ちが消えない。
「俺に逃げる選択肢は、ない!」
そう呟いて馬車のドアを殴る。その拳に痛みを感じ浜崎達への怒りが再燃する。それを黙って見ているだけだった他の者達への怒りも一緒に……
逃げる選択肢はない!再びそう願い閃きを待つと新たな選択肢を思いつく。
「ジェイルズ、戻ったらゾイルに裏を固めるように命じろ。森の奴らはきっと姫を取り返しに来るだろう。ゾイルの死霊達は聖女の光に一層され役に立たないだろう。裏から別動隊に備えさせろ」
「かしこまりました」
側近の軍部総長にそう伝える。
「城の前は戦場になるだろう。市民には避難命令を、後、シュッツバルトとリーガルを所属部隊と共に待機させておけ。近づく者がいたらは即殺すように命じてな。他の5将は城内で待機、俺は城に入ったら姫の説得に入る!」
「さようで、ではそのように」
こうして、未だに身の危険がちらつく不安定な閃きを頼りに、まだ何か方法は無いのか?そう考えながら爪を噛んでいた。
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