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[完結]引きこもりの少年は異世界で森に引きこもる、はずだった。~幼馴染の聖女の為になし崩し的に異世界を連れまわされた件~  作者: 安ころもっち
第三章・帝国を欲する者達

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48.新たなる侵略者 02


――― 王都、冒険者ギルド


「またあんた?」

 私は目の前でへらへらと笑みを浮かべている男に殺意を覚えた。


「今日も冷たい視線、凍えちゃうよボク」

「私は忙しいの。邪魔するなら腕の一本ぐらいパキっとやっちゃうよ?」

 目の前のウザマイケルは両掌を上に向けとぼけている。


 この男と遭遇するとどうもイラっときてしまう。


「今日はそんなクールビューティでプリティーなガールに、ボクからの情報提供があるんだけど、聞きたい?」

「情報提供?」

 私は初めての話の流れに身構える。


「怖い顔はもうやめてくれないか?悪い話ではあるけど、聞いておいて損はないと思うよ?キミ達のお仲間の話だし……」

 私はさらに身構え殺気を向ける。


 何かあればいつでも殺れるように……


「うーん、キリリとした顔を素敵だよ。ユミちゃん」

「いいから早く言いなさい!」

「森が王国と自治区の奴らに焼かれ、自治区の奴らにフランソワーズ姫が連れ去られたって話、もう聞いたかな?」

「えっ……」

 私は体の力が抜けその場にへたり込みそうになった。


「それいつの話?詳しく話なさい!今すぐ!」

 私はなんとか気持ちを立て直し、マイケルの襟首を掴もうとしたが、その手はするりと躱された。マイケルは自分でCランクだと言っていたけど、それが本当かは分からないし、そもそも冒険者ランクなんてあてにはならない。


 やっぱりこいつ、油断ならない。


「まあ、今さっきの話なんだけどね。でもここでは何だから……」

 親指を立てギルド内にある貸し部屋へと促しているマイケル。私はその提案に乗り受付のお姉さんに一声かけ、その部屋へと入った。


 珍しく真剣な表情のマイケルから詳しい話が聞けた。


 それは、ほんの1時間程度前の事だという。

 西にある王国が森を広範囲で囲み、森に火を放ったのと同時刻、帝国の南方、今は自治区となっている元サクリエル王国側からも火の手が上がったと。

 そして西と南の両面から兵が攻め入り、森の主達を右往左往させた隙に、自治区側の兵が姫を拉致したのだと。当然両軍の兵は森の主達にかなりの数を虐殺されたそうだが、それははっきり言って自業自得で同情する気にはなれなかった。


 自治区側の目的は姫を餌に帝国に取り入ることらしいが、自治区側で軍師を名乗る者の名を聞いて、私は拳を握りしめた。その者は、アイカワを名乗る黒髪の青年だという……


「京子ちゃんからいなくなったと聞いてたけど……死んでなかったんだね」

 ギリギリと歯噛みしながら拳を強く握る。


「情報元が何処か気になるけど、今は聞かないでおくわ。マイケル……あんたたまには役に立つんだね。ありがとう」

 私はそう言って席を立つ。


 背後から「何かあれば手伝うよ?」という声が聞こえたが、私はそれを無視して、[隠密]と[影走り]を発動しギルドから飛び出した。


 まずは森へ。

 私は無我夢中で走り出した。



◆◇◆◇◆



――― ウイストザーク大森林


「みんな!何があった!」

 拠点から少し南側に野村さん達が必死に消火活動をしていたもが見え、石川達に消火活動を任せ話を聞いた。


 各々がスキルを使い木々を伐採したり放水したりしている。


 森の大猿(フォレストモンキー)が何体か木々を叩き折っている光景が見えたが、今は気にしている場合ではないと思いスルーした。


「勝基君ごめん!フランさん守れなかった!私、役立たずだ……」

「加藤さん、それは良いから詳しく話を聞きたい。頼む!」

 泣きそうな顔ですがりついてくる加藤さん達に話を聞いた。


 数時間前、ルリとコガネは森の外側を囲む多数の気配に気づき、まだ森の外という事もあり放置しており、それを戻ってきた加藤さん達に伝えたのだが、丁度そのぐらいのタイミングでその者達は慌ただしく動き出し警戒していたそうだ。


 やや暫くして拠点からも見える程の炎が確認でき、それが西側と南側の2方向から迫ってきていることに気付いたルリ達は、まずは火の手が激しい西側を鎮火するために向かったらしい。


 加藤さん達も警戒を強めつつ、南側からの火の手を鎮めるため木々をなぎ倒したりしていた。森の大猿(フォレストモンキー)はその時に山崎さんが、試練で得た[英雄の目]というスキルで一時的に隷属化できたそうだ。


 そうこうしているうちに、多数の兵士達が近くまでなだれ込み応戦していたが、隙をついてフランが捕まってしまい抵抗することができなくなりそのまま逃げられてしまったようだ。

 そのことを西側から兵士もろとも片付け戻ってきたルリ達に伝え、激怒して南側へと行ってしまったところに俺達が戻ってきたということらしい。


 俺は南側へとルリ達が切り倒していったと思われる痕跡を頼りに移動を開始した。


 数十分後、外周付近で般若のような怒りの表情で兵士達を切り殺しているルリと、地響きのような唸り声をあげるコガネを発見した。


「ルリ!コガネ!」

 俺の声にこちらを見る2人は、顔を歪めて飛びついてきた。


『カツキ!こいつらが突然やってきたのじゃ!』

「ああ。加藤さん達になんとなくは聞いた!フランは、どうなった?」

 俺の言葉にさらに顔を歪める2人。


『すまぬのじゃ。我は、フランを……』

『私もいたのに助けることができなかったのだ。すまぬ』

 ルリもコガネも顔を下げそう言った。


 兵士達の後を追ったルリとコガネは、フランを盾にされ手出しをできないまま、他の兵士達に囲まれ炎を照射され見失ったそうだ。それでも気配でフランの居場所が分かってはいたが、森の外まで連れ去られたのを感じた2人。

 苛立ちを逃げ遅れた兵達にぶつけていたようだ。


 俺達が話をしている間に、兵士達は悲鳴を上げながら逃げていった。


 俺は、怒りに拳を強く握りしめたが、南の方に逃げていった兵士達という話を聞き首を傾げている。奴らの目的はフランを攫うこと。その場で殺すことをしなかったことに安堵するが、いつまでも殺さないとは限らない。


 早急に助け出す為にまずは情報を集めなければ。そう考え深呼吸する。冷静に、慎重に。ルリが俺の体を優しく抱きしめることで冷静になれた。


 まずは森の炎を鎮火させなくては、そう考えルリとコガネにもう一仕事してもらうことになった。


 フランは絶対に助け出す。

 そう心に決めて、俺達は重い足取りで拠点へと戻ってゆく。


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