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[完結]引きこもりの少年は異世界で森に引きこもる、はずだった。~幼馴染の聖女の為になし崩し的に異世界を連れまわされた件~  作者: 安ころもっち
第三章・帝国を欲する者達

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47.新たなる侵略者 01


――― 勝基達が試練に挑む少し前。ウイストザーク大森林・南西部


「アイカワ様、よろしくお願いします」

 俺は、準備万端整ったことを確認し、設置された舞台に上がる。


「皆の者、いよいよだ!ついに我々ウイストザーク王国の崇高なる民達が、帝国に復讐を遂げる第一歩!国を取る為の前哨戦が始まる!」

 俺の言葉に下々の者達が歓声を上げた。


「いまこそ、長年のうっ憤を晴らす時が来たのだ!」

 この俺が何を言っても心地よい反応が返ってくるこの舞台。


 その何度聞いても飽きることは無い声援に俺は毎回気持ちが高ぶり饒舌になってゆく。


「標的は大森林!すでに西の大国、ワイドドラゴ王国の内通者にも指示を飛ばしている。王国内の賛同した者達が大挙して西部に群がり、森に火を放つだろう!我々もそれに便乗し火を放ち、そこにいると噂される帝国の姫を奪取するのだ!」

 ひときわ大きな歓声が上がり、兵達は陶酔したような表情で俺を見る。


 俺は、[上空の目]というスキルにより王国側の森に火の手が上がったことを確認する。その炎はみるみる広がり、周辺の層を広範囲で焼いていた。


 王国側の賛同者達もかなり人力を割いてきたようだ。

 その者達は今頃、俺が帝国を手中に収めた暁には甘い汁を吸えるのだと、甘ったるい妄想を垂れ流しているのだろう。


「彼方も作戦を開始したようだ!俺達も負けるわけにはいかない!魔法部隊、派手にぶちかませ!」

 俺の[号令]により、待機していた魔法部隊が野太い声を張り上げながら手に持つ筒状の魔同区から火を放つ。


 部隊の者が手に持っているのは、この為に用意させた魔力を籠めただけで炎を噴き出す魔導具だ。木々を焼くことだけに特化した高温の炎が出るものであった。

 その炎は目の前の木を瞬時に燃やし、少し奥に進んだ密集した部分に差し掛かると、燃え盛る炎が次々と周りに広がっていった。


 その様子を見ていた他の場所に待機している部隊からも連鎖的に炎を放出し始めた。所々で熱さに悲鳴を上げる者達もいたが、耐熱の装備を纏っているのだから堪えて欲しいものだ。


 そんな部隊を、今回はサクリエル自治区と隣接している大森林に、1キロ間隔で20程待機させていた。


 森には2匹の主がいるというが、この広範囲では対応でききるはずもないだろう。俺の[知略]スキルもそれを肯定したからこそ、この案を立案したのだ。

 俺はここから動いてはいけない。そんな予感に従い俺はここで待機だ。各魔導部隊の背後には多数の兵達を配置し、奥へ奥へと進ませている。


 日々の訓練により俺は[知略]スキルとある程度の疎通が取れるようになっていた。突如閃いた行動によりある程度だがどうなるかも予測できる。そんな俺が戦でへまをするはずもない。

 姫を攫って俺の妃にすることで、帝国を乗っ取れることも[知略]は教えてくれた。それからの流れも想定済みだ。絶対に失敗するはずがない!

 そんな思いで今回の攻撃を仕掛ける気持ちに傾いた。


 はじめは本当に大変だった。


 愚図な自治区長、元サクリエル王国の王族でもあるエモンズド・フォン・サクリエルは、「早く帝国を滅ぼし我が国の再建を!」と唱えるだけで、自ら何かをしようとはしていなかった。

 そんなプレッシャーを受けつつも、帝国に攻め入る作戦を彼是考える。その際にはまず俺自身の身の安全が保障されるかどうかを最優先に思考していたが、どれも危険と隣り合わせだと恐怖を感じ二の足を踏んでいた。


 暫くそんな苛立ちの中で生活を続けていたが、数週間前に突然最善と言える作戦を閃いてしまった。王国と協力して森を攻撃せよと……


 そこから俺は思考を張り巡らせ、どうしたら確実に成功するのか。そもそもその目的は何か?その過程に起こりうる危険は?その後はどうする?そんなことを彼是と自問自答してたどり着いた答えの第一歩が今回の作戦だった。


 なぜか大森林に逗留しているという帝国の姫。それを攫うことが今回の目的。そして、その姫と婚姻を結べば帝国は自治区に歩み寄り、その隙を突いて皇帝を殺し帝国を乗っ取る。

 それを実現する方法は多方面から火を放ち森の中層まで忍び込むこと。それにより、俺にはまったく危険を伴わずに姫を攫うことができるのだと、俺の中で何度もシミュレートして確定した今回の作戦。


 それが今まさにスタートしたのだった。


 俺は上空からの視線で全体を注意深く眺めている。各部隊には通信具も持たせているので、姫を確保した際には知らせが来るだろう。俺はただここで戦況を見守ればよい。すでに賽は投げられたのだ。


 暫くして、森の西側では大規模な戦闘、いや、虐殺が始まったようだった。

 それからさらに暫く時間はすぎ各部隊からは阿鼻叫喚の伝令が届いていた。


『森の悪魔達が!』

『クソガキが、強すぎる!援軍を!』

『ああ、血が……軍師殿!お助け下さい!』


 そんな無駄な伝令を聞き、俺は強いストレスを感じた。

 お前達の犠牲など、織り込み済みだ。黙って死ね!そう思いながら戦況を見つめる。


 確かに西側では、二匹の魔物が縦横無尽に動き回り、木々を切り倒しながら兵を駆逐していっているように見えた。だが、こちら側には元クラスメイト達がいるだけのはず。そんな奴らに苦戦してるんじゃねーと思った。


 だが、本当に大丈夫なのだろうか?

 なんどもシミュレートして導き出したはずの答えではあったが、上空から見える2匹の魔物のとんでもない力に思わず体を震わせ不安がよぎる。


「早く、姫を確保しなければ、全滅してしまう!」

 焦りを感じてそう叫ぶ。


 数十分後、さらなる連絡が届いた。


『帝国の姫を確保!』

 俺が望んでいた連絡が届き周りからも歓喜の声があがる。俺も思わず飛び上がり喜びを表してしまう。


 周りの目を気にして咳ばらいをした俺は、「すぐに撤退準備だ!」と返し速やかに離脱する為の準備を始めた。それからかなり時間がかかったが、全身を網に覆われ、猿ぐつわをされた美しい姫を担いだ兵士がこちらにたどり着く。


「撤退だ!」

 そのまま待機していた馬車の荷台に姫を乗せ、俺もそれに乗り込みその場を後にする。


「軍師殿!まだ他の者達が!」

 背後からそんな声が聞こえた。


「我が国再興のため、礎になったお前達を誇りに思う!今一度、気高き力を大いに発揮せよ!」

 俺は、乗り遅れた兵士達に[号令]を使って叫びながら[鼓舞]を使う。


「必ずや祖国の再興を!」

「皆共!死力を尽くし化け物どもを止めろ!」

「王国騎士の誇り高き力を思い知れ!」

 兵士達のそんな声がかすかに聞こえ、ため息をつく。


 死ねばすべてが終わるというのに。それが騎士道精神なのだろうか?そう思いながらこちらを涙目で睨んでいる姫を見下ろしていた。


――――――

藍川慎吾 / 人族 / クラス [軍師]

力 F- / 知 C / 耐 G

<スキル>

[知略] 先の事を見通し最善の策を閃く力

[号令] 声量が上がり聞き取りやすくなる力

[上空の目] 戦場を上から見下ろす視界を獲る力

[鼓舞] 味方の能力を引き上げる力

――――――


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