04.異世界転移と新たな出会い 04
満腹感から眠りに落ちた俺は、口の中の渇きを感じ目を覚ます。
「喉、乾いたな」
『カツキ、もう良いのか?』
「あ、ああ。ありがとうルリ。少し頭がすっきりした。けど喉が渇いちゃって、ここら辺には水場はないんだよな?」
『水場?ああ、川や湖という奴じゃろ?無いな』
やっぱり今後生活するための拠点を作るなら水場のそばが良いが、ルリの都合もあるだろうと躊躇するが、
「そうか。一番近くにある場所までどのぐらいかかる?」
『ここからかなり離れるで、少し別の心当たりがある。そこならそれほど遠くはないのじゃ!』
「連れてってくれるか?」
『うむ』
そして俺を横抱きして移動するルリは、数分で沼まで到着した。
色がまず茶色に少し緑が混ざった沼であった。
「ルリ、これは無理だ。飲み水にはなりそうにない」
『大丈夫じゃ!喉を潤したいのじゃろ?さすれば丁度良いのがいるのじゃ!』
そう言って周りをキョロキョロした後、糸を飛ばして何かを引き寄せるルリ。
今度は簀巻きではなく、網目状に囲われた状態で引き寄せられたのは、青いゼリー状の定番な魔物だった。
「スライム!」
俺は即座に[偵察]で覗き見ると、俺より低い能力値と共にスモールスライムという種であることを確認する。
『喉の渇きには、此奴を啜れば良いのじゃ!』
そう言って糸を消し白い手でスライムを掴むとそのまま口元に近づけるルリ。俺はそれに待ったをかける。
「ルリ、それ食うのか?」
『うむ?いやこいつを絞るのじゃ!』
食うわけではなかったが、絞った後はどうなるのかと少し可哀想に感じてしまう。異世界でスライムといったら可愛い愛玩魔物じゃないか。
「ちょっと待ってくれ。こいつ、絞って水を出せるなら、自分で水を出せたりしないか?」
『これがか?無理じゃろ?覗き見て水魔法でも持っておったか?』
「いや、持ってはいないけど……なあスライム、お前、水を出せたりしないか?」
試しにとスライムに話しかけてみる。
沈黙が続いた。
恥ずかしさで顔の火照りを感じる。
そりゃそうか。ルリでも進化して固有種になってから自我を持ったようだし、スライムなら知能も足りないただの魔物であり、意思疎通ができないのは当然だ。
そう考えていた時、目の前のスライムはぷるぷると振るえると形を変えて見せてくれた。
「おっ、なんたこれ」
上部がへこみ、さらに震えているとそこから水分が滲んできていた。
『ほぉ。カツキの言葉を理解しているのやもしれんのぉ』
「そうかも!」
俺はそのスライムの上部に貯まった水を恐る恐る口に含む。
我ながら面白い状況だと思った。
地面に膝を突き動物の様にスライムに近づき体液を啜る。だが、久しぶりに感じる水分は美味しかった。スライムも『きゅ、きゅ』と小さく鳴いている。
「飲み足りないが、もう無理だよな?」
その言葉に反応するように震えるスライムだったが、同じように水分は出てこないようだった。そして落ち込んだように体全体をデロンと薄く地面に広げている。
「仕方ないな。他のスライムはどうなんだろう?」
『うむ。試してみるのじゃ』
そう言って何本も糸を飛ばしスモールスライムを捕えてゆくルリ。
途中、角兎と小さな蛇も混じっていたが、3匹ほどのスモールスライムを捕獲できた。
だが、何度話しかけても同じように意思の疎通ができた者はおらず、只々悲鳴をあげ暴れるだけであった。どうやら最初の個体が特別だったようだ。
後から捕獲した魔物達の命をありがたく刈り取った後、俺は逃げ出しもせずにふよふよとしている最初のスライムを見ていた。
「こいつ、仲間になってとか言ったら理解してくれるかな?」
『どうじゃろうか?』
「なあ、仲間になって一緒に暮らさないか?」
半信半疑ではあったが俺はスライムに声をかける。
その言葉に反応するように、スライムはピョンピョン撥ねるようにして俺に近づいてきた。
「おっ、分かってるっぽい。じゃあお前は……アクア、アクアでどうだ?水分補給にはぴったりな名だと思う!」
スライム改めアクアは嬉しそうに俺とルリの周りをピョンピョン飛び回っていた。意外と俊敏ではあるようだ。
「そうだ、アクアは何食べるのかな?これとか食べるかな?」
さっき角兎を解体した際に毛皮と一緒に回収していた骨を部屋着として着ていたトレーナーのポケットから取り出すと、アクアの前にしゃがみ差し出してみる。
『きゅ!』
そう言うと俺の手に持っている骨を俺の右手ごとその体で包み込んだアクア。
俺はびっくりして骨を手放し引っ込める。しっとりと冷たい感触をしていた。多分だが俺の手を捕食することはないだろうが、万が一という事もあるからな。
骨は完全にアクアの中に入っている。ブクブクと気泡ができているが、徐々に骨が解け、1分程度で完全に無くなってしまった。
これは、癖になるかも。あっちの世界でも金魚程度しか買って事の無かった俺の、初めてのまともなペットと言っても良いだろう。魔物だけど。
俺はルリの顔を見る。
「ルリ、何か食べのもない?兎の毛皮は残しておきたいし、骨はあれしか持って来てないんだよね」
そう言ってポケットから毛皮を出して見せている。ふわふわしてるので敷布団的に使ってみようと思っている。いや、先に靴かな?正直スリッパはすぐにダメになりそうだ。
『むむ。ではこれなんかどうじゃ?』
そう言ってルリが目の前に出してきたのは簀巻きにされている火蜥蜴であった。
さっき火を噴いてくれた奴かな?
どうやら簀巻きにしたまま一緒に連れてきていたようだ。
俺の顔を見てブルブルと体を震わせている火蜥蜴。さっき頑張ってくれたこともあり、やっぱり可哀想に思えてきた俺は……
「お前も火おこし係で仲間になるか?」
またも沈黙が続く。
「くっ、さすがに蜥蜴じゃ無理か」
そう言って項垂れたが、『ギャギャギャ!』と鳴く声が聞こえ顔を上げる。
顔を左右に細かく震わせ続けている火蜥蜴だが、これではどっちか分からない。仕方がないのでもう一度聞いてみた。
「なあ、このままどこかに逃がしてやってもいいぞ?」
フルフルと顔を横に振る。
「一緒にくるか?」
コクコクと頭を縦に振りもう一度『ギャギャギャ!』と鳴く火蜥蜴。
その姿をじっくりみて考える。
「レッド、かな?」
『ギャ?』
「お前は今からレッドだ!よろしく頼む!」
『ギャ!ギャ!』
気に入ってくれたようだ。
こうして、急速に仲間(小動物)が増えてゆく俺に、ルリは少し複雑そうな顔をしていた。
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