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[完結]引きこもりの少年は異世界で森に引きこもる、はずだった。~幼馴染の聖女の為になし崩し的に異世界を連れまわされた件~  作者: 安ころもっち
第二章・大森林争奪戦

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42.元勇者の有給休暇


――― 202x年 日本某所


『都内で発生したS高校の集団失踪事件は、未だに何も解明されていません。警察は何をやっているのでしょうか?』

『まったくですな!大体、未成年とは言えこれだけの事件、しっかりとした情報公開が―――』

 俺は、毎日変わらぬ無駄な批判をしている識者と呼ばれたコメンテーター達の話にうんざりして画面を消した。


「ちょ、沖田、何すんだよ!」

「毎日変わらない内容だろ?」

「それでも、何か出てくるかもしれないだろ?」

 怒る同僚にリモコンを奪われる。


 俺は、ため息をつきながら呼び出されていた上司の元へと赴き、長期休暇の申請が受理されたことを告げられた。


「真一君は有休を中々取らないから、残りを全部使ってもよかったんだぞ?」

「そんなに休んでいたらもう戻ってこれなくなりますよ」

「それは困るな」

 そう言って笑う目の前の男性は俺の母の弟、つまりは叔父だった。


「ともかく、今回はゆっくりと休んでくれ。どこか行く予定はあるのか?」

「いえ、特には。それよりも、急なお願いに対応頂きありがとう御座います」

「何を言ってるんだ。折角休もうと思ってくれたんだ。こっちは気にせず休んでくれ。あと、姉さんさんにもよろしくな」

「はい。母さんにも叔父さんはいつも優しい、と言っときますよ」

「ほ、本当に頼むよ?姉さんは君の事になると本当に怖いんだから……7年前もやばかったんだからな」

「そうでしたね」

 俺はおじさんの話に苦笑いしながら頭を下げ、部屋を退出した。


 俺が休暇を申請したのは特に何か予定があったわけではない。何となくだが例の失踪事件が気になってしまったからであった。


 その集団失踪事件が起きたのは一ヶ月近く前。

 当初はすぐに見つかるだろうと思っていた中学生達は未だに見つかってはいないようだ。


 一クラス分、37名の高校生が一度に消えた。

 しかも、お昼の時間という短時間に。

 さらに言うとその37名の中には、その当日は体調不良だと言って休んでいたという女生徒も含まれている。


 当初はその女生徒が何らかの真相を知っているという話も出ていたようだが、その後、その子は学校をズル休みして遊び歩いていたところで行方が分からなくなっていることが分かったようだ。

 そして今、犯人としてネット上でも上がっている名前が佐田勝基であった。未成年の為、すぐに投稿は削除されているが、ネット上ではあの手この手でこの名が書き込まれてしまっている。


 佐田という少年は中学時代にイジメを受けたようでその高校には行っていない。だが、失踪した高校生達のほとんどが佐田と同じ中学に通っており、その中にはその少年に熾烈なイジメをしたという生徒達も含まれていた。

 さらにはその佐田という少年は隣町で暮らしていたはずが、今は行方が分からなくなっていると報じられてしまった。


 無関係と思われているその少年も、ネット上の過激な配信者達にかかれば過去を暴かれ、集団失踪事件の犯人に仕立て上げられていた。その少年の詳細な生い立ちや両親の現在の情報なども拡散されてしまっている。

 真偽不明の情報に、警察も取り締まりを強化しているが警察側も中々情報が集まらない中、半ばガス抜きに利用しているように対策の動きが鈍い。


 その少年の両親は海外へと逃げたようだが、このニュースは海外でも話題となっており、目下その両親を探せといった投稿も多数出回っているようだ。


 俺は、真っ暗となった深夜に未だに休校となっている学校へ1人忍び込む。

 高く閉ざされた校門を軽々と飛び越える。


 俺は……高校1年だった7年前に異世界と呼んで差し支えない世界から戻ってきて以来、その世界で使えていたスキルは使えなくなっているが、人間離れした身体能力を発揮したり、直感が働いたり、怪我の治りが早かったりと、特異な体質になってしまった。

 あっちの世界では5年以上かけて必死で修行を行い魔王を倒し、さらにはダンジョンを攻略して異世界転移というスキルでこっちに戻ってきた。


 こっちの世界では1年程しか経っておらず、それでも失踪事件としてそれなりに話題にはなっていた。

 もちろん若かった俺は異世界に行っていたことをそのまま伝えたが、誰一人それを信じてはくれなかった。


 結局俺は、何者かに監禁され1年後に解放されたという未解決な事件として処理されることになったようだ。

 それから俺は、遅れていた授業を受ける気もなく、強化された身体能力によりアスリートを目指すでもなく、高校を中退して叔父が働く自衛隊に入隊して今に至る。


「あの時のかーさんは怖かったな……」

 高校を中退すると言った時の母の顔を思い出し身震いする。


「ここがそうか?」

 俺は開けっ放しのドアに進入禁止のテープが張られているそれに、引っかからないように中へと入る。


「うーん。明らかに魔力の痕跡があるな。こっちに戻ってきて初めて魔力が見えたぞ」

 ため息をつきながら教室を見渡す。


「やっぱ召喚術なんだろうな。魔王でも復活したか?」

 そんなことを考えながらどうしたら良いか考える。


 どうせこのことを伝えたところで、何がどうなるわけでもない。だが、このまま何もしないのは釈然としなかった。

 教室の床に残った魔法陣の痕跡を指でなぞりならが、深く息をはく。


「俺を、懐かしきあの世界へ……[異世界転移]……」

 俺は、何も起きない現状に独り苦笑いした。


 そして俺は、仮病で休んでいたという女生徒が最後に目撃されたという店と、佐田という少年が住んでいたというアパートとにも足を運ぶことを決めた。


 たとえその結果が、何も生み出すことが無くとも……


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