35.姫様奪還計画 02
突然余計なことを言いだした岸本さん連れ、拠点から少し離れた場所へと移動する。
「ちょっとさっきの、私の秘密って何よ」
私は岸本さんに顔を近づけて説明を求めた。
「いやー、志田さんがどれだけ佐田君を愛しているかって話」
私はそれに返答することはできなかった。
「偶に遊んだ京子から散々聞かされてたからね。志田さんがめっちゃ佐田君への愛を囁いてきて熱い!って言ってたから」
「ちょっと由美!」
京子が岸本さんの口を塞ごうとしている。私も反論したいが顔が熱くて頭が働かない。
確かに食事時とかは勝基君の昔話なんかを何度かしたが……決して愛を囁いていたわけじゃない、はずだ……
「まあ、進展がなさそうなのは距離感見たら分かったけどね。頑張って!」
そう言って私に向かってサムズアップする彼女。
こんなに軽い性格だったのかと改めて思い返すが、どう考えても私達の前ではそんな素振りはなかった。控えめで空気の読める良い子だった記憶しかない。
「ねえ京子、岸本さんってこんな性格に見えなかったけど……」
「ああ、うーん、中学の時はあんな感じだったし、元からサブカル好きってのは知ってたけど、由美、あんたこっちにきてからはっちゃけた?」
「うははは。まーね。折角忍者になったんだし?楽しまなきゃって。みんなも召喚されてるって知った時はびっくりしたけどね?今回は偶々仕入れた情報でちょっち気になっちゃって色々調べたんだよ。
京子、結構前に雑貨屋で愚痴ってたじゃん?あの時にさ、私いたし、ってかあの雑貨屋にお世話になってる」
岸本さんからそんな話を聞いた京子は、おでこを抑えてため息をついていた。
「じゃあ、あの顔を隠して逃げたのってやっぱり由美だったの?」
「正解!」
「なんだよー、言ってよ!なんだか雰囲気似てるなって思ったんだから!」
そんな話に花を咲かせている2人に割り込むように話しかける。
「とにかく!恋はタイミングが大事なの!まだその時じゃないから!これは絶対に飯田君が来るまで押さないから、そっちも絶対に変なこと勝基君に言っちゃダメだよ?」
「分かった分かった。……でも、そんな悠長なこと言ってて大丈夫かなー?」
そう言って首を傾げる彼女。
「前に京子が愛理ちゃんは強い男が好きって言ってたんだよね」
「ちょっと!なんで私よ!京子?何変なこと吹き込んでんの!」
「え、あ、その時はノリで、ごめんて」
今度は愛理に飛び火し、怒る愛理に京子が謝っている。
「私もあのクラス一の美少女、志田さんがそこまで惚れる相手が気になっててさ。佐田君とはお初だけど、彼ってこの世界で結構上位に入るんじゃない?この森の主を2匹も手懐けてるんでしょ?
それに、少し話してて思ったけど、彼って結構サブカル行ける口なんだね。私も話してて楽しかったし?後、そっちのお姫様、佐田君に守られてクラっと来てるよね?」
最後に話を振られたフランさんは、両頬を押さえて照れていた。
やっぱりそうなんだよね。知ってた。
「ね?うかうかしてられないんじゃないの?」
「そんな事、言われなくても知ってるから」
彼女はにっこりと笑顔を作っていた。
勝基君は強くて優しい。小さい頃は野良犬からも私を守ってくれたし、私が反抗期でお父さんと喧嘩して家を飛び出したときは探しに来てくれて、一緒にお父さんに謝ってくれた。
中学の時に勝基君が虐められてた時は今度が私が、と思って直接止めたりしたけど、やっぱり男子には力ではかなわなくて、先生にも言ったけど結局は上辺だけの言葉で終わって水面下に潜っただけだった。
その時ぐらいから勝基君は私は拒絶するように無視してきたけど、私も嫌われちゃったと思って距離を置いたけど、今ならわかる。あれは私を巻き込みたくなかったからなんだって。
だから好き。すっごく好き。
今度は絶対に守るって決めたから。だから私はもっと強くなるために毎日を生きている。でも、確かにここでのリーダーは勝基君だし、周りは女性ばっかりだし……早く告白しなきゃ、ダメなのかな?
そんなことを考えていた私は、気付けば涙が出そうになっていた。そんな私を愛理が抱きしめてくれる。
「だ、大丈夫だから!私が勝基君をなんたらなんて全部あいつらの妄想!強い男なんて、こっちに来てから散々強い我儘男を見せられたらドン引きして良く思わなくなったよ?やっぱり男は内面だよ!だから私が勝基君を好きになんてならないから!」
早口でそう言う愛理に、私はつい余計なことを口に出してしまう。
「勝基君はやさしいし、性格も良いんだよ?」
「……未波。そう言うところだよ?そうやってポロポロと勝基君のこと言っちゃうからこうやってアホ達に利用されるんだよ?」
私は愛理にそう言われ、ニヤニヤする岸本さんを見て睨んでしまった。
「さぁーて、そろそろ私は退散するかな?私の目的は達成したし、ダンジョンが私を待ってるし、後で事の顛末は覗きに来るけど、あっちの蜘蛛さん達にも言っておいて?私の事は見逃してーって。マジ怖いから」
「あ、ちょっと!岸本さんはこっちに残らないの?」
帰ろうとする彼女にそう呼びかける。
「うーん、こっちにも未知のダンジョンがあるって聞いたからいずれはお世話になるかも?でも私、今はあっちのダンジョンを攻略したいから。じゃあねー!」
笑顔でそう言った彼女は、あっと言う間に私達の視界から消えてしまった。
「んー、もう!」
私は色々な感情に振り回されたことに怒りを感じ、叫んでいた。
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