34.姫様奪還計画 01
帝国のお姫様、第二帝姫のフランソワーズがこちらにやってきて3日が経った。
昨日は森の最深層の付近でルリとコガネに守られながら一日中、鹿や蛇、動く大樹を俺達もお世話になった特注の槍で屠り続けていた。
最初は震えながらだった彼女も徐々に慣れ、すでに二つ目のスキルを覚えていた。
[複製]という複数のカラクリを操作するスキルであった。
「これで人形劇も開催できますね」
落ち込みながらそう言っていたフランだったが、夕方近くには能力値も上がったことにより希望が見えたようで笑顔も増え、今日も朝食が終わった直後に「早く行きましょう!」と俺に迫ってきていた。
そんな中、ルリがまた俺に蜘蛛足を絡ませ、新たな侵入者がやってきたことを告げられ、女性陣にも緊張が生まれた。
◆◇◆◇◆
――― 帝都城内
ある日の夕方、俺は皇帝陛下に呼び出されていた。
「今朝、第二帝姫であるフランソワーズを送り出したのは勇者殿も知っておるだろう」
「はい。私も今朝、フランソワーズ様の出立に立ち合いましたので」
俺はその訪問の結果についてはまだ知らされておらず、このタイミングでの呼び出しに不安を感じる。
「先ほど、戻ってきた兵士達の報告を聞いたのだが、フランソワーズはあの佐田という少年により身柄を拘束されたそうだ」
怒りを滲ませる陛下の発言に、俺は鈍器で頭を殴られたような衝撃を受けた。
「佐田がフランソワーズ様の身柄を拘束したと?陛下、その話は本当なのですか!」
「うむ。友好な関係をと思うておったが……私が甘かったのだろうな」
そう言って顔を伏せる陛下に、俺は拳を強くにじり怒りを滲ませていた。
使者として出向くフランソワーズと顔合わせがあったのは今朝方の事。彼女の「絶対に良い関係を作ってみせますわ!」と笑顔で言っていたその表情が脳裏に浮かび悔しさに顔を歪める。
佐田はそれ程までに卑劣な、腐った奴だったのか!俺はそう思い、あの時躊躇して全力で佐田を仕留めなかったことに後悔してしまう。
「陛下、私が必ずやフランソワーズ様を取り戻してまいりします!」
「うむ、宜しく頼む」
「すぐにでも出発します!今回は戦える者だけを連れて行きますので!」
「いや待て」
すぐにでも、と思った俺は陛下にそう言われ戸惑っている。
「今回はお前達以外に他の者も同行させる」
「他の者を同行、ですか?」
俺は釈然としない思いで陛下の次の言葉を待っている。
「ある子爵からの申し出だ。あの森にいる者達によりその子爵は多大な損害を受けたようでな。子爵側は穏便にと歩み寄り話し合いの場を設けようとしたようだが、その者は居合わせた私兵達が叩き伏せ、逃げらてしまったようだ」
「そんな……」
陛下がそれを佐田が、と明言しなかったからには佐田以外の者が行ったことなのだろう。であれば志田さん達がそんな狼藉を?いや、他にこっちの世界の人間の仲間がいるのかもしれない。
俺はそう考え頭を切り替える。
「では、いつ頃なら良いのでしょうか?一刻も早くフランソワーズ様を助け出さなければなりません!」
「7日程、子爵側が準備を整えるまでそのぐらいが必要だと聞いた。それに、今回の事でうちの兵も2名の死者が出た。弔いに城からも精鋭を送ろう。万全の態勢で行かねばならぬ。僅かな期間ではあるが、勇者殿も研鑽に励むよう頼む」
俺ははやる気持ちを抑えながら、陛下に頭を下げた退室した。
それから予定した日の前日まで、俺はいつものようにダンジョンで魔物を狩り続けた。40階層まで進んでいる俺達は、高額な素材を持ち帰りそれを城お抱えの鍛冶師に加工させさらに装備を強化した。
皆、宝物庫にあるという国宝級の装備でさえ霞むほどの装備を全身に身に着け決戦に臨んだ。俺達の世界の者がやらかした不始末は……俺達の手で刈り取ならくてはならない。
それが……かつてのクラスメイトを殺すことになっても……
そして1週間後の朝、話し合った結果、俺達は全員で出向くことになる。
サークリット子爵家の私兵達、流星騎士団の精鋭だという5人、城からは魔法局の局長を含む魔導師達3人を引き連れ、俺達は大森林へと移動を開始した。
◆◇◆◇◆
――― ウイストザーク大森林
ルリさんが勝基君に警戒を促した後、私達の目の前に彼女がやってきた。
私達が召喚された日、偶々学校を休んでいた岸本さんだ。
一緒にいる時間は短かったけど、京子が同じ中学だったこともあり偶に彼女ともランチしたりすることもあった。
勝基君が召喚されていた時点で、彼女の召喚もあるかもとは思っていたけど、まさかソロで活動していたとは思ってもみなかった。それも、ここまで単独でたどり着けるほどに強くなって。
彼女はまるで突然現れたかのように気配を消してきたようで、ルリさんとコガネさん以外は目の前に立つまでまったく気づいてなかったほどだ。
「んで、明日ぐらいには勇者様御一行が来るかもしれないから……もし飯田君が来たら、これのここを押してみてね。飯田君が来てからだよ?分かった?」
「これを?今押してみてもいいか?」
「ダメダメ!飯田君が来てからだってば!……絶対だからね?勝手に押したら、志田さんの恥ずかしい話とかバラしちゃうから」
勝基君と話していた岸本さんからもたらされた突然の飛び火に私は悲鳴を上げる。
「待って岸本さん!なんで私?私の秘密ってなに?気になるけど……何のことを言ってるか分からないけど、絶対言ったらだめだからね!」
私はそう言いながら勝基君からそのカード状の魔道具を奪い取った。
「志田さんも、そのボタンは押しちゃダメだよ?」
そう言いながら顔を近づけてきた岸本さんは、耳元で囁いてきた。
「志田さん、まだ告ってないの?」
「ちょ、ちょっと!……あっちで話しようか?」
私は、戸惑いを隠しながら彼女にそう願い出た。
「そうだね。久しぶりに女子会しようか?京子も一緒に」
こうして、勝基君からかなり距離を取った私達は、岸本さんと話し合いを始めた。
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フランソワーズ・デ・ウイストザーク / 人族 / クラス [人形術師]
力 G / 知 F+ / 耐 G
<スキル>
[カラクリ] 木の人形を作成して動かす力
[複製] 複数のカラクリを操作する力
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