30.大森林の遺跡攻略 04
――― 帝都・雑貨店
「ふぅ。びっくりしたー」
「ユミちゃんどうしたの?さっきの知り合いだった?」
私は奥の部屋から出ると笑顔のフェスカお姉さんに問いかけられた。
「いや、まあ知り合いなんだけどね?今はまだ会うべき時じゃないって言うか」
「何それ、あの子も訳ありみたいだったけど、相当イラついてたみたいね」
「そうみたいだねー、ちょっと面白そうな話もしてたし、少し調べたら会いに行こうかな?」
「良く分からないけど、ちゃんと戻ってくるのよ?」
「分かってる」
私は、シェスカお姉さんにそう返すと、雑貨屋から出ると冒険者ギルドへと向かった。
先ほど、今日のダンジョン探索を早めに終えた私は店番をするシェスカお姉さんの隣でくつろいでいた。
そんな中、ぶつぶつと文句を言いながら入ってきたのは京子ちゃんだった。咄嗟に顔を近くにあったトレーで隠し、「トイレトイレー」と奥に入って逃げ隠れていた。
京子ちゃんとは中学時代から一緒で仲もそれなりに良かったが、同じ中学のクラスメイトがあまり行かない商業科の高校に2人で通うようになってからさらに仲良くはなっていた。
だけど入学から数週間後には京子ちゃんが志田さん達、クラスメイトの中でも綺麗で頭の良い人達のグループと良く一緒にいるようになってから、私達は疎遠になってしまった。
元々がオタな私は京子ちゃんとは相性が合わなかったのだろう。
こっちに来てからは他の人にはすでに会ってるわけだし、別にそのまま昔話なんかをしても良かったんだけど、なんとなく顔を隠してしまったので引っ込みがつかなくなった。いずれちゃんとしたタイミングで会いたい。
そんなことを考えながらも冒険者ギルドに到着すると、受付のお姉さんに聞き込みを開始する。
やはり京子ちゃんの愚痴通り、帝都の子爵の私兵達に難癖をつけられて大暴れしたらしい。
そこへあいつがまたやってきた。
「また会ったねプリティーガール。君の一番星、マイケルだよ?話なら僕がしっかりと丁寧に教えてあげるよ?僕もあの場にいたから、っね!」
私はウザマイケルを横目で見てギルドを出ようとした。
「ちょ、ちょっと!また無視かい?僕のハニーは恥ずかしがり屋さんだ、っね!」
「あんたには用が無いので帰って」
「冷たいなー?僕と君との仲じゃないか。恥ずかしがらずに僕と楽しくティ……」
私の愛用する鉄串を突きつけると、ウザマイケルが引きマイケルと変身し距離を取られた。
「おぅ、姉ちゃん!俺も一部始終を見てたから説明してやるぞ!」
そう声を張り上げているのは、食堂側のテーブルに座り飲んだくれているおじさんだった。
この人はいつもここで酒を飲み女性冒険者の1人を推しトークをしている酔っ払いであった。
何度も「ユリシアは素晴らしい冒険者だ。きっとS級にだってなれる逸材だ!周りはもっと認めるべきだ!」とくだを巻いていることが多い。
だが、そんな酔っ払いも実際そのユリシアという冒険者がギルドにいる時には、メニューで顔を隠してしまうというシャイな酔っ払いいうことでも有名であった。
「おーい!聞いてるのかー!」
酔っ払いがうるさいので、私はギルドから足早に退散した。もう得るべき情報は得たのだから。
「それにしても、京子ちゃんも強くなってるね。たかが私兵とは言え十人以上を拘束して黙らせるって……そんなに森での狩りは美味しいのかな?」
そんな独り言を言いながら次なる目的地へ急ぐ。
次は子爵家、その次には王城を視察してみようと思いながら、私は[影走り]を使い、彼是と頭を働かせていた。
◆◇◆◇◆
――― ウイストザーク大森林
「ってことがあったのよ!」
玉井さんが帝都の買い出しから戻ってくると、未波に抱きつき愚痴っていた。
なんでも以前依頼を断った子爵家から、その件の嫌がらせかは分からないが素材を盗まれたと難癖をつけられ、多数の私兵とひと悶着あったようだ。
それにしても、玉井さんが組み伏せたというその私兵も、強さを最優先に考えている帝国の子爵の兵であればそれなりに強いののではないだろうか?
この森にいると自分の強さがどの程度なのか分からない。
周りのクラスメイトもいわゆる転生者としてチートな部類に入るだろう。
玉井さんが私兵を相手に無双をできるなら俺だって……そう思ってしまうが、そもそも街へと赴き異世界を楽しむ、なんてことは考えてはいない。俺はあくまで異世界で冒険をしたいだけなんだ。人付き合いが無い方向で。
「でもさ、ドレイクさんがお詫びなのか私達のランク、Bランクにするってさ。だから素材よろしくなーって言ってた」
ギルマスに認められてランクアップなんてあるあるだな。それほどこの中心部の魔物はレアなのか。手数料でうっはうは?
そんなことを考えながら聞き耳を立てていた俺の背後から、加藤さんから声がかけられた。
「勝基君がまた盗み聞きしてるよ?」
「えっ、いや、盗み聞きなんて、聞こえてきちゃったんだから仕方ないだろ?」
加藤さんはニヤニヤしながら俺の上着をむんずと掴むと、未波の方へと飛ばされた。
「うわ、おっとと……未波、すまん……」
「う、うん……大丈夫」
未波に抱きつくようになってしまった俺は、謝りながら未波から離れた。
玉井さんは俺が掴まれたと同時に察したらしく、素早く未波から離れている。いたずらが過ぎるな。と思ったが、加藤さん、そしてその他の3人のニヤニヤ顔を見て何も言い返せなくなった。
未波もこんなことされて困惑しているだろう。弟とのスキンシップみたいなものだろうが、実際に俺は弟ではないのだから。
「そ、それより、そろそろダンジョン探索を再開しても良いと思うんだ。玉井さんも私兵相手に無双できたようだし、帰還の札なんかも仕入れて来てくれたし、とりあえず無理をしない程度で進めてみないか?」
「そ、そうだね。それが良いよ」
まだ戸惑っている様子の未波も賛同してくれた。
『まだ、早くはないのかな?もう少し鍛えた後でも良いと思うのじゃ』
『そうだな!私もそう思いうぞ!』
ルリとコガネは反対のようだ。過保護だなと思った。
「ルリ、コガネ、何かあったら即時撤退するから。心配しないで待っていてくれよ?」
そう言って2人に抱きつき、先ほどまでのドキドキと高鳴る心臓を落ち着かせていた
明日からダンジョン探索再開。
みんなで話し合いそう決めて、今夜も野村さんの美味しい鹿肉ステーキにかぶりついた後、私室でルリに抱かれながら眠りについた。
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