29.大森林の遺跡攻略 03
改めて受付へと戻ると、先ほどのお姉さんが笑顔で出迎えてくれた。
「キョウコちゃん、やっぱりご機嫌斜め?」
「そりゃーね。とにかく返事待ちだから、その間に素材提出するね。裏行っていい?」
「いいわよー」
私はお姉さんに納品を告げた後、裏にある解体所に移動する。
数日分の素材をバッグから取り出すと、解体係のおじさんが頭を抱えていた。
「すまん嬢ちゃん、待っていてくれるか?これはさすがに時間がかかりそうだ。何時にも増してどれも超高級品だ。しっかりと解体してやっから」
そう言いながら紙に何やら書き込んだおじさんからそれを受け取ると、ロビーに戻り開いている椅子へと腰かけた。
暫くすると、外からドカドカと騒がしい音が聞こえ、ギルド内に兵士達が入ってきた。ざっと数えて十数名の程だろう。途端にロビーが狭く感じた。
兵士達はロビーの中央付近で止まると、受付の方を睨みつけていた。
受付のお姉さんが慌てて奥へと走っていくが、その前にギルドマスターのドレイクさんが部屋から出てきていたようで、お姉さんに手で合図するとゆっくりと兵士達の元まで歩いてゆく。
「遅い!」
兵士の1人がドレイクさんを睨みつけ威嚇している。
「は?俺はお前らの家来でも何でもないぞ?」
「ギルドマスター如きがその生意気な態度、許さんぞ!」
「どう許さんと言うんだ?言ってみろ?」
兵士達が詰め寄り剣呑な雰囲気となるが、ドレイクさんは余裕の表情であった。
「口には気をつけろよ?俺は子爵様が話が聞きたいと言うので、仕方が無いから話だけなら、と冒険者に橋渡しをしてやったんだ。お前達こそ何様のつもりか知らんが、これ以上勝手を言うなら、子爵様には断りを入れとくよ!」
「くっ、このことは子爵様に報告するからな!」
ドレイクさんは余裕の受け答えをしているが、それだけ言えるのなら最初から断ってほしい。
「取り調べが済んだら後はこっちで対処する!その時は邪魔するなよ!」
「取り調べって、俺は子爵様には話をするだけって言ってあるはずだが?お前達のその目で相手が嘘をつくような人間か見極めて、それを報告してくれってことで、無理を言ってこの場を設けたんだぞ?理解してから口を開くんだな!」
その兵士は苛立ちを堪えるのに必死の様子であった。
どうやらドレイクさんは、子爵様に対しても私が顔見せ程度に会っておけば面目が保てる程度の力関係らしい。てっきり命令を受けて断れないような関係なのかと思ってた。少しだけドレイクさんを見直した。
兵士達が悔しそうに顔を歪める中、ドレイクさんは私にニッコリほほ笑んでいる。正直気持ち悪い。それでも私は椅子から腰を上げ、兵士達の近くへ足を進めたが、すぐに兵士達から睨まれ足を止める。
「ギルドマスター、彼女が例の冒険者で間違い無いんだな?」
「ああ。冷静に話をしろよ。言っとくがキョウコちゃんはお前達の何倍も強いからな?」
ドレイクさんは警告のつもりなんだろうが、私には煽っているようにしか聞こえなかった。
「お前が、サークリット子爵家の私兵である私達、流星騎士団の諸先輩方が命懸けで戦い、長い年月をかけて集めた貴重な魔物素材を盗み出した犯人、冒険者キョウコで間違いないな!」
「は?」
私は苛立ちを隠さず睨みつける。
「お前如き女が大森林の中層に生息する森の大猿や森の大鹿を大量に納品できるわけなかろう!」
「いきなり何言ってんの?マジで怒るよ?」
「怒る?怒るからなんだってんだ?」
私を蔑むような視線を向ける兵士。周りの兵士達から笑い声も聞こえてきた。
「ドレイクさん、こいつらムカつくから今日の納品取りやめようか?」
「あ?お前、今日の納品って……」
苛立ちをドレイクさんにぶつけてみる。
ドレイクさんは受付のお姉さんから何かを見せてもらった後、青い顔をしていた。
「キョウコちゃん?冗談、ですよね?」
「だって、このギルドは冒険者を守ってくれないんでしょ?」
ドレイクさんがぷるぷる震えながら兵士達に近づいてゆく。
「お前ら!うちのキョウコちゃんに何を言ってくれてんだ!キョウコちゃんの納品、お前達の言ってる猿や鹿ごときじゃねーんだぞ!キョウコちゃんがうちに来てくれなくなったらどう責任取るんだ?」
「あ?猿や鹿じゃないって何を納品したって言うんだ?」
そう言いながらドレイクさんから紙を手渡された兵士。
「そんな、そんなバカな話があるか!大森林の大鹿や竜鱗の大蛇、魔を吸う大樹?こんな聞いたことも無いやばそーな名の魔物、一体どこで盗んできた!」
そう言って紙をドレイクさんに押し付けるように返すと、その兵士は私に掴みかかってきた。
「あんた、バカでしょ?」
私は兵士の手を叩き落とし、[影縛り]を使ってその兵士を拘束した。
「ドレイクさん、こいつら痛い目にあってもらっても大丈夫かな?」
私は苛立ちをぶつけるように乱暴にドレイクさんに確認をとる。
「そりゃ、子爵家の物だと言うからにはこいつらはあのクラスの魔物達をポンポン狩れるほどなんだろ?その実力があるのかどうか、キョウコちゃんがしっかり判定してやっても良いんじゃねーか?」
ギルマスは冷や汗をかきながらも私の味方をしてくれるようだ。私は影縛りを操作して強く締め付けながら他の私兵達も一緒に縛り上げ、ギルドの外へと放り出した。
後を追うように外に出ると転がっている兵士達を見下ろしてみる。
もちろん[影縛り]は解除してはいない。
「で、私に負けるようなやつらがあの素材を狩ったと?そう言いたいのかな?」
「ぐっ、俺達は子爵家の者だぞ!こんなことをして、うぐ……ぐぁー!」
怒りに任せ締め付けを強くする。
「く、そ!」
兵士はまだ私を睨みつ付けているから、私もさらに拘束を強めてゆく。
兵士達は鍛えているからなのか私を睨むことをやめない。もう限界ぐらいに締め付けているから逆に私が大丈夫かと心配になってくる。手足捥げたりしないかな?
騒ぎを聞きつけたのか予め呼んでいたのか知らないが、帝都の警備兵の制服を来た者達がゾロゾロとやってきたので、私はホッと息を吐いて[影縛り]を解いた。そろそろ魔力も限界だったが、余裕を装い警備兵に事の成り行きを伝える。
警備兵はあまり良い顔はしなかった。
子爵家の私兵ということで対応を上に確認しているようだ。
「この子は盗みなんてしねーぞ。そもそも納品の数が尋常ではないからな。あと、たとえお前達がまともに立ち向かっても勝てない相手だ。なんなら今ここで試してみるか?」
やっと私の近くに寄ってきて助け舟を出すドレイクさんに警備兵は慌てるが、勝手なことを言わないでほしい。どう考えても煽ってるように聞こえる。私の魔力はもうゼロよ?
「今確認中なので、もう少しだけお待ちください!」
警備兵は冷や汗をかきながら頭を下げている。
「ドレイクさん、助け舟遅いよ?」
「お前がキレて近づくの怖かったんだよ」
「失礼な」
私が睨むとドレイクさんは苦笑いで頬を掻いている。
結局、その場はお咎め無しとなり警備兵は引き上げたが、予想通り子爵家の私兵達も何とも出来ないようで、奴らは私を睨みながら帰って行った。
私は苛立ちを残したまま、以前魔導具などを購入した雑貨屋に向かった。
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