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[完結]引きこもりの少年は異世界で森に引きこもる、はずだった。~幼馴染の聖女の為になし崩し的に異世界を連れまわされた件~  作者: 安ころもっち
第二章・大森林争奪戦

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26.新たな生活 03


――― 帝都ダンジョン 36階層


 俺はいつものように耕太達と一緒にダンジョンで魔物を狩り続けていた。


 今は邪悪なる悪魔(イビルデーモン)吸血鬼(リトルバンパイア)の群れを相手に戦闘を終え、汗をぬぐい暫しの休息を取っていた。


「ここならもう楽に狩ることができている。もう少し階層を上げよう!」

 俺がそう言うと、3人はやはり余裕があるのか肯定の言葉が返ってきた。


 このあたりだと今さっき軽々と倒し切ったデーモンとバンパイアの他に、血濡れの熊(レッドマッドベア)氷結大鹿(アイスエルク)ぐらいだ。いずれも楽に狩れる相手だ。

 魔力を温存しながら戦えているぐらいだった。


「じゃあ40階層まで行ってみようか?」

 竜生がそう言うのでどうせなら一気に階層を上げていこうと頷いた。


 俺達にはギリギリの中での戦いが必要だ。いざとなったときに気持ちで負けないようにしなくてはならない。あの大森林での戦いのように……


 そんな神経を張り巡らせた時、俺はふと何かの気配を感じ身構える。


「きゃっ!」

 魔物かもしれないと思ったことで強い殺気を放ち剣を抜こうとした俺に、可愛らしい女性の声が聞こえ力が抜ける。


 その声を認識した時、目の前にはいなかったはずの女性の姿が見えた。それも、俺が見知った女性の姿が……


「えっ、なんで?」

 思わず驚きながらも彼女に駆け寄った。


「あ、あははは。飯田君、ここは久しぶりって言うところだよね?」

 他の3人も彼女を認識できたようで、口々に岸本さんの名を呼び駆け寄っている。


「やっぱり岸本さんも、召喚に巻き込まれてたんだね」

「そうなるかな?まあ私がみんなも召喚されてるっていうのを知ったのは、わりかし最近なんだけどね。ダンジョンで横井君とか浜崎君とか見かけたんだ」

 そう言う彼女の言葉を聞き、俺は彼女が1人でここにいることに驚いていた。


「もしかしてなんだけど、岸本さん今1人だったりする?」

「うん。最近はここから40階層ぐらいをグルグル周回してる」

 またも信じられない返答に冷や汗が流れる。ここより先を1人で?周回って何を目的に?


「岸本さん、クラスって何になったのか聞いても良いかい?」

「えーとね、忍者?かな」

 少し恥ずかしいのか岸本さんの声が小さくなってゆく。


「そうなんだ。でも、1人で大丈夫なのかい?もし良ければ俺達も……」

「うーん、大丈夫かな?私はソロの方が旨味あるし」

「そう、なんだ」

 その言葉を聞いて、忍者という恐らく珍しいクラスになった彼女は、今はどれだけ強くなっているのだろう。そう思った。


「あのさ、やっぱりクラスの全員が召喚されちゃってるんだよね?」

「あ、ああ。帝都の城に召喚されて ―――」


 それから俺は、岸本さんにそれぞれがパーティを組んでダンジョンに赴いていること、佐田という中学時代のクラスメイトも召喚され大森林で生活していること、帝国がその大森林を欲していること、そこのあるダンジョンを制覇したら日本に帰れる可能性があることなど、持っている情報を全部伝えた。


 志田さん達が佐田と合流してしまったことについては「あーね」と納得していたようだ。俺にはなぜだか理解できないが、そこに何らかの理由があったのだろう。

 そして大森林での戦いの後、佐田により2名の死者が出てしまった事を伝え、みんなの思いを酌み、佐田には罪を償って貰わなくてはいけない。その為にはまずは俺が強くならなくてはならない。その為にここで戦っている。と言って俺の話を終わらせた。


 岸本さんはなぜかため息をついて「あんたってバカだったんだね」と言われた。


「な、なんで俺がバカなんだよ!」

 思わず声を荒らげたが、岸本さんは俺から距離を取り残念そうな顔をこちらに向けていた。


「まあいいわ。じゃあ私は忙しいのでここで失礼するね!」

「あ、ちょっと、岸本さん!岸本さんは俺達に合流しなくて大丈夫なの?城に来てくれたら装備も良いものが」

「そう言うのはいいんでー!」

 岸本さんは俺の話を遮るようにそう言うと、またも俺の目の前から消えてしまった。


「岸本さん、すごいな。また見えなくなった。耕太、見たか?」

「ああ。能力値は高くはないけど、スキルに[隠密]とか[急所突き]とかあったから、気配を消して魔物を一突きってスタイルなのかもな」

 竜生が耕太に確認する。


 耕太は[人物鑑定]を使って岸本さんのステータスを確認したようだが、確かにそれならソロの方が効率が良いのかもしれない。あくまで一撃で魔物を殺せるのならではあるが。


 俺は、彼女がもっと強くなってからなら、大森林のダンジョンにこっそりもぐりこみ、最下層の試練をクリアできるのかもしれないな。そうは思ったが、彼女が100階層をクリアしたとしてはたして[異世界転移]が授けられるかは疑問だとも思った。

 そもそもあのダンジョンが100階層まであるのかどうかすら分からないのだから、やはり俺が強くなってあのダンジョンに挑まなければならない。そう決意を改め、俺達も先へと進むことにした。


 まずはこのダンジョンを制覇する。

 俺は(はや)る気持ちに任せて足早に次の階層への階段へと向かって歩き出した。



◆◇◆◇◆



「そっかー、まさかそんなことになってたなんてねー」

 私は飯田君から聞いた話を頭の中で再考しながら、[隠密]で近づいた熊の、その急所であるこめかみ付近に細長い鉄の串を深く突き刺した。


「おっ!魔石と毛皮ゲットー!やっぱ熊さん効率良すぎ!でも、そろそろ先に行こうかな?もうそろ毛皮ダブつきそうだし」

 そう呟きながら腰の魔法のポーチに魔石と毛皮を放り込んだ。


 ここから40階層までは熊がちらほらと湧く。

 悪魔なんかも魔石は落とすけど、高額となる爪や心臓なんかはあまりドロップ率が良くない。もちろんこの階層付近ならどの素材でもかなりの高額ではあるが、正直毛皮をシェスカさんに買い取ってもらった方が高額だ。

 魔石の方は必要な分だけ確保してギルドに納品している。


 待ち構えているギルドマスターにいつも「毛皮は?」と聞かれるが、ギルドに卸すと半値ぐらいになるから最近は笑ってごまかしていた。


 私は潤沢な資金を得ながらそれをシェスカさんに還元し衣食住を確保した。

 そしてこの高額な魔法のポーチはもちろん、今もメインで使っている特注の鉄串や、脚力を上げる膝当てに体力強化の髪留めも作ってもらっていた。この世界の魔道具は凄いけど高いのだ。お金はいくらあっても足りない。


 特に鉄串は高額で、私がもっとも効率が出るように30センチ程の長さでとにかく細く鋭利に、そして硬さにも(こだわ)り、グリップ部分も持ちやすさを追求した逸品だ。それを予備でもう2本持っている。

 これさえあればどんな強い魔物だって急所を一撃でズバンだ。


 私はもっともっと強くなってこのダンジョンの終わりが見たかった。

 最下層は100階層だと噂されているけど本当なのかもわからなかったが、今さっき飯田君からもその話が真実だと確証を得られた。そんな100階層を私は自分の手で攻略してみたい。


 ただそれだけのために自身への投資を続けていた。


 それでも、飯田君から未波の話を聞いてしまった私は、近いうちにその大森林へ行ってみようとも思っていた。


「久しぶりに未波ちゃんの恋バナも聞きたいし、その未波ちゃんが惚けた顔でずっと言い続けてた佐田君ってのがどんな人なのか見たいしね。でも、その毒で死んだっていう2人の事も調べないと……」

 私はやることが増えてしまった自分に、亡くなった2人に不謹慎ながら少しワクワクしてきてしまったことを反省しつつ、次のターゲットを探すべく、階下へと急ぎ降りて行った。


――――――

岸本由美 / 人族 / クラス [忍者]

力 D- / 知 F+ / 耐 E

<スキル>

[影走り] 気配を消して高速で走る力

[隠密] 気配を殺して身を隠す力

[投擲術] 投擲の命中率を向上させる力

[急所突き] 相手の急所を把握して正確に攻撃を加える力

[影分身] 自身の残像を作り出すことで他者を欺く力

――――――


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