23.それぞれの進む道 05
――― 帝都城内
「ハマザキ、私はお前達に期待をしているのだ」
そう言ってにやけるのは、この国の皇太子、シルドーク・デ・ウイストザークだった。
正直こいつは好きにはなれないが、俺達四人は呼び出されこの皇太子の私室だという大きな部屋にやってきた。
「父上は勇者であるイイダを推しているようだが、私はお前の方が役に立つを思っているのだよ」
「ああ、それは嬉しいな」
「お前は森から帰ってからそれこそ死に物狂いでダンジョンに籠っているのだろう?」
「そうだ。俺はもう、絶対、誰にも、負けるわけにはいかないからな!飯田にだって負けるものか!」
俺の返答に気分を良くしたのか、笑みを見せる皇太子シルドーク。
「主に先陣を切るのは聖剣士であるお前だろ?」
「そうだな。魔物を引きつけながら攻撃を受けるのは重戦士のマサで、タカとハルキも前衛だが、結局俺がいつも先陣を切って突っ込んむことにしてる。俺が一番強いからな!」
そう言って胸をはる。
俺は、あの森での出来事を払拭するように魔物を倒し続けた。今では外の三人が束でかかってきても負けないだろう。そう自信をもって言えるほど俺は強くなった。今なら飯田にだって負ける気はしない。
「うむ、ではお前に良い物をやろう。勇者イイダには父上から聖剣が授けられたそうだが……こっちはそんな生半可なものではないぞ?精神を強く持ち、強くなることだけを願った者だけが使える究極の剣だ」
そう言ってほほ笑む皇太子は、そばにいた男に合図をすると、4人がかりで大きな箱を運び込んだ。
男達は俺に「少しだけ御下がりください」と言って押しやられ、かなりの距離を下がることになった。そして、俺の前の床にその大きな箱を寝かせた男達は一人を残し元の場所まで戻って行った。
見た目は棺桶のようだな。目の前に寝かされた箱を見てそう思った。
「では、開封します。皇太子殿下、お気を付けを……」
そう言って男は箱に張り付けてある意味不明な模様が描かれている紙を勢いよく破いた。
途端、ボッという音がして紙は黒い炎と共に焼かれ塵となっていた。
「ハマザキ様、気をしっかりと持ち、箱を御開けください!」
「わ、わかった」
少し緊張しつつも箱を開ける。
そこには1本の黒い剣が収まっていた。
大きめのその黒く輝く剣は、俺に訴えかけるような何かを放っているように感じ、俺の目を釘付けにするほど魅力的に写っていた。
「いいね。俺がこれを、使いこなしてやるよ!」
そう言って柄を握る。
少し嫌な痛みが走ったがそれで諦めるほど俺は弱くはない。痛みに構わずそれを持ち上げ右手で高く掲げたその剣は、俺には丁度良い重さと長さのように思えた。
何より鞘に収まっているにもかかわらず、そのまま人を真っ二つにできそうに思える程の圧力を感じるし、握ったばかりなのに俺の手にしっくりと馴染んでゆく感覚に暫し酔いしれた。
「良い物を貰った。礼を言う。俺は……シルドーク皇太子殿下、あなたに忠誠を誓う!」
そう言って剣を床に寝かせ片膝をつき頭を下げる。
背後から3人の声が聞こえた気がするが、今は新しい主に忠義を尽くす時間だ。
「よろしく頼む。今日もまたダンジョンに籠り修行に励むのだろう?私も期待している。もう、下がって良いぞ」
「はっ!」
俺は皇太子殿下にもう一度深く頭を下げると、その部屋を足早に出ていった。
部屋を出てすぐ、なぜだか三人が俺に詰め寄ってきた。
「なあ、なんであんな奴に頭を下げたんだ?ナオトはそんなキャラじゃないだろ?」
そう言うタカに可笑しなことを聞くなと感じた。
「こんな良い剣を貰ったんだぜ?俺はそれに感謝の意を示しただけさ」
「そうか?それなら納得しないでもないが」
タカはそう言いながらも納得はしていないようだった。
「でもそれ、なんだか呪いの武器にように見えるな。近づくだけで精神的にくるぞ?」
「なんだハルキ、情けないな。俺は平気だぞ?これだけ強い力を感じるのはきっと魔剣か何かなんだろ?俺はこいつを相棒にしてもっと強くなる!飯田も、佐田も、全員が束になっても敵わないほどにな!」
「まあナオトがイイなら、別にイイけどよ?」
ハルキは呆れたようにこちらを見ている。
「じゃあこれから、ダンジョンだろ?早速その力を見せてくれよ」
そう言うマサに「もちろんだ」と返し俺は今まで装備していた剣をホルダーから外し付け替える。お役御免となった剣はそばに待機している兵に手渡した。
「さて、行くか……」
俺は足早に城を出ると、ダンジョンへ籠るべく冒険者ギルドへと向かった。
それから1週間ほどが過ぎた。
この剣はやはり良いものだった。
魔物を切るたびに俺に力を注いでくれるように感じる。
「ナオト!また出すぎてるぞ!これじゃソロで戦ってるのと変わらない!」
俺は、タカの言葉にうんざりする。
「俺が出すぎなんじゃねーよ!お前達が遅いんだ!俺の強さについてこれないなら、もっと魔物を狩って強くなれ!」
そんな激を飛ばす。
俺についても来れない連中は、ハッキリいって邪魔でしかない。
足を引っ張らないようになぜ頑張れないのだと苛立った。
「そろそろ休憩しないか?」
「あ?ふざけんな!まだ1時間程度しか狩ってないだろ?」
そう言って3人を見るが、みんな疲れた顔をして、所々傷を負っているようだ。なぜ、あの程度の魔物で傷を負うのか理解できない。
「ちょっと……力の差がですぎちまったな。もういいよ。俺は先を行く。3人は3人なりに頑張れば良いさ。……じゃあな」
俺は、3人を置き去りにさらに下へと潜ることを決めた。
「おい!ナオト!どうしたんだよ!」
「何を言ってるかわかんねーよ!」
「1人じゃあぶねーだろ!そこまで追い込む必要ねーだろ!」
背後から3人の叫ぶ声が聞こえるが、構っている余裕はない。
俺は、誰よりも強くならなくてはならないのだから……
魔道具であるバッグの中身を再確認し、食料はたっぷりと用意してあることに笑みを浮かべた俺は、今までで一番奥、30階層へと続く階段を足早に下りてゆく。
――――――
浜崎尚斗 / 人族 / クラス [聖剣士]
力 C / 知 D+ / 耐 C+
<スキル>
[聖なる剣] 剣に聖なる魔力を籠めて邪を払う力
[聖なる一撃] 光のように早い一撃を放つ力
[聖なる外装] 邪を弾く障壁を纏う力
[聖なる癒し] 自身の傷を癒す回復の力
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