22.それぞれの進む道 04
シェスカさんの家へ居候となった私。
その日の夜、私は部屋であまり寝心地の良くない布団で横になりながら今日の出来事を振り返る。
「異世界か……」
そう思って少し泣きそうになった私。
だが、次の瞬間、思わず、つい、なんとなく、口をついてしまったのだ。「ステータス」という魔法の言葉を。
――――――
岸本由美 / 人族 / クラス [忍者]
力 G- / 知 G+ / 耐 F
<スキル>
[影走り] 気配を消して高速で走る力
――――――
「あ……」
目の前のアニメの異世界転生あるあるな窓を見て、私は暫し思考停止していた。
だが、クラスという多分ジョブとか職業とかそう言った部分であろうところを、私は何度も見ては自然と笑いが漏れてしまった。
「忍者!勇者じゃなくて忍者!そうか、忍者か……」
小声で何度も忍者を連呼する。
そして、街中で逃げた時にやけに早く走れたと思ったことが、スキル欄にある影走りというモノの効果なのだろうと考えた。これならイケる!異世界でも生きていける!そう考えてしまった。
例えば勇者なんかだと魔王を倒してなんたらって流れに自然と巻き込まれてゆくのだろう。他の一般的なクラスであるならば、生活に困窮することもあるだろう。だが、忍者というおそらくレアで、尚且つ目立たない系のクラスな私は、地味に手堅くがっぽり稼ぐことも夢ではない!そう思った。
思わず部屋を飛び出し、シェスカさんを叩き起こし聞き忘れていた冒険者ギルド的な物はあるのかといった話を確認したかったが、さすがにそこは自重した。
結局そのまま彼是考え続け眠れぬ夜を過ごした私は、まだ少し明るくなったばかりの時間帯にシェスカさんを呼び起こしてしまい、寝ぼけ気味のシェスカさんに冒険者ギルドの存在と場所を確認するのであった。
そして、朝食を頂き「まだやってないわよ?」というシェスカさんの言葉に暫く我慢した私は、営業を開始したてと思われる冒険者ギルドに遂にやってきたのだ!
入り口で深呼吸し、高揚した気持ちを落ち着けせつつ中へと入る。
冒険者と思われる装備を身に纏った人達からの視線を浴びる。
大丈夫……なはず。
今は軽装とは言え、シェスカさんのお兄さんが残したお古の胸当てを装備している。冒険者っぽく見えるはずだ。私は気配を殺す様にしてカウンターに並ぶ列の後ろに移動する。
今度は意識して[影走り]を使ってみる。
めっちゃ早く移動できた。
列に並ぼうとしていたお兄さんが驚きビクっとしていた。私が列の後ろに突然現れたように見えたのだろう。使いどころを気を付けないといけないと思った。
そんなこともありつつ列に並ぶ。
受付のお姉さんが次々に冒険者達を捌き、いよいよ私の番がやってきた。
「はい次ー!あら、可愛いお嬢ちゃん。見かけない顔だけど初めてかな?」
「はい!ぼ、冒険者登録をしたくて!」
「ふふ。緊張しちゃってる?大丈夫よ。でも、新規登録ならそっちのお姉さんに言ってね」
そう言ってほほ笑みながら一番端っこの場所を指差すお姉さん。
「あ、そうですか……ありがとうございます」
「いいのよ。頑張って!」
私は顔を赤くしながらも場所を移動した。
「あの」
「新規登録ね。任せて!じゃあ、お名前からね―――」
受付のお姉さんは私を優しく向かい入れてくれて、私の冒険者登録は完了した。
定番のFランク冒険者という奴だ。
依頼は黒板に張り出されてるから持ってきたらまたさっきの列に並べばよいらしい。ランクの一つ上まで受けれるが、中にはパーティ専用もあるのでよく見て受けてねと言われた。
うーん、アニメの設定とかそのままだな。そう考えるとあながち異世界転生者の設定というのは必然的に練り込まれた……なんてことを考察しながら受付のお姉さんから色入りと教えてもらった後、依頼が張られているという黒板へと移動する。
「へーい!ちょっと、そこの可愛い彼女っ!」
「ん?」
チャラワードが聞こえたが、ここは無視が無難だろう。それにまだ私に声を掛けたと確定したわけでは無いはずだ。
「待って、待ってくれよそこの黒髪の美少女ちゃん!」
いや、黒髪だってこの世界にもたくさん……
そう思って軽く辺りを見渡すが、どうやら黒髪は私だけのようだ。そして見渡す過程でその声を掛けてきたと思われる男と目が合ってしまった。
青い少し長めの髪を右手でふわりと書き上げている……やだ、チャラすぎキモイ。
装備は銀の胸あてに腰には剣と、かなり軽装ではあるが指輪に耳飾り、腕輪などはきっと魔法の装備だったりするのだろう。なんて考察している間に、その男はじわりと距離を詰めてきた。
「いや待って。これ以上近づいたら刺すけど?」
そう言ってシェスカさんから借りている鉄箸を取り出し両手に持ち身構える。
「いやそっちこそ待ってよ!危ないから!それは人に向けるべきものじゃないはずさっ!」
「だから近づくなって言ってんの!」
「わ、分かったよプリティーガール。ボクはマイケル・ダグラスタ。気軽にマイケルと呼んでくれたまえ。で、初めての冒険なんだろう?僕が手伝ってあげようって話さー!」
両手を前に突き出し言い訳を告げる男は、マイケルと名乗り手伝いを申し出ているようだ。
「だが断る!」
私は、依頼のボードをチラ見して、奥の通路に駆け込んだ。まずはダンジョン!とテンション高めでその入り口から早々に中へと駆け込んでいった。
こうして私の異世界冒険譚は慌ただしく始まった。
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