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[完結]引きこもりの少年は異世界で森に引きこもる、はずだった。~幼馴染の聖女の為になし崩し的に異世界を連れまわされた件~  作者: 安ころもっち
第一章・異世界召喚

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19.それぞれの進む道 01


――― 某所


「シンゴ様、お食事の用意ができております。食堂へ行かれますか?」

「いや、ここへ運んでくれ」

「かしこまりました」

 俺は、部屋から出ていく侍女の尻を眺めならが頬を緩ませた。


 最近はバタバタとしていたが、ようやくこの場所で落ち着くことができたのだと安堵した。食事が運ばれるのを待つ為、ソファに移動し体を休めることにした。


 俺がこの世界に召喚されてどれぐらいが経っただろう?

 ふとそう思って大変だったこれまでの苦難の道のりを思い出してみる。




 数週間前だろうか?

 俺は、クラスの奴らと一緒に帝都の城に召喚され、その生活は一変した。


 あっちの世界で俺は、あの憎っくき暴君である浜崎達に毎日のように殴られていた。それはもう毎日が地獄のような日々。それも数か月という長き日々を耐え忍ぶという屈辱を受けていた。


 あいつらは俺が学校を休もうがお構いなしに家にやってきて、俺を学校へと連れ出してから殴るのだ。どう考えても頭がイカレている度し難いクソ野郎であった。

 頼みの綱であるはずのの両親はまったくの役立たずで、不登校になりそうな俺をお友達が連れ出してくれているのだと喜んでさえいた。俺の苦痛に歪む顔が見えないのか?と戸惑うくらいだった。

 いや、今となっては"自分達の息子は虐められているのは分かっていたが、不登校になるよりはマシだ"などと思っていたのだと推測する。


「ああ、ムカつく!」

 そんな余計なことを思い出し、無駄に苛立ち声をあげる。


 今夜あたりあの侍女を誘って苛立ちを晴らしてやろうか?と考え苛立つ気持ちを落ち着かせた。


 城に召喚された後も浜崎達に殴られるかと思ったが、あいつらは自分が強くなることに夢中だった。それでも近くにいると蹴られたりとナチュラルに攻撃をしてくるキチガイ達だったので、自然と距離をおくようになった。


 俺は軍師という稀有なクラスになり心の中は高揚しており、多少の事は気にならなくなっていた。

 能力値は低いのが若干ムカつくが、[知略]ってスキルはどう考えても有能だ。これってレア職ゲットで異世界チート生活のスタートだろ?これから軍を率いて王への道を行くんだろ?


 その時はそう思っていた。


――――――

藍川慎吾 / 人族 / クラス [軍師]

力 G- / 知 C- / 耐 G

<スキル>

[知略] 先の事を見通し最善の策を閃く力

――――――


 だが、この帝国という国は強い者が正義だという風潮があるようで、勇者となった飯田はもとより浜崎達も割りと持て囃されていたように見えた。


 自身が強くならなければどんな能力を持っていても使い潰されるだけの軍国主義。

 俺が持つ[知略]というスキルの有用性を、城の奴らに懇切丁寧に教えてやっても、あいつらの俺を蔑むような視線はまったく変わらなかった。


 騎士隊の幹部だという男は「俺がうまく使ってやる」と言って俺を登用しようとしたのだが、それには[知略]が反応し断るのが最善だと教えてくれたので、やんわりと断った。

 その時の男の冷たく突き刺さる視線に、やはり断って正解だったのだと理解した。


 こっちの世界に来てから1週間程度が過ぎた頃、元から一匹狼だった俺は他のグループには入ることはせず、個室を与えられ、ダンジョンにも行かずに彼是と考えていた。

 そして、深い考察の末、この城を抜け出すのだ最善だと閃いた。


 俺はすぐさま脱出作戦を実行すべく、部屋の前に常に待機している兵士に「ダンジョンへ行きたい」と伝えた。


「はあ……やっと行く気になったのか?今更だがまあいいだろう。まず低階層だから俺一人でも十分だし、武器はこれを使っとけ……大事に扱えよ?」

 兵士はそう言って腰に装着されていた粗末な剣を外し俺に投げ渡すと、一度こちらに冷たい視線で上から下へと舐めるように見た後、無言で歩き出してしまった。


 手渡された剣で背後から切り付けてやろうかと思ったが、想像以上に重い剣に手が震えてしまう。はぐれてしまえば時間の無駄。そう思って苛立ちを隠しながら兵士の後に付いて歩きだした。


 そもそもこいつらが俺に手を出さないのは、勇者となりやがった飯田が何か言ってからのようだった。俺はそれすらも気に食わないと思っていた。


 あいつはあっちの世界でも俺が浜崎達に袋叩きにあっている時も助けることはしなかった。ちらりと冷たい目で見た後、ため息をついただけの飯田。その時は幸いそれで浜崎達も手を止めたのだが、それは単にタイミングが良かっただけだった。

 その点を考えればあいつも、浜崎達と同じ大罪を犯していると言っても過言は無いだろう。


 そんなことを考えて手に持つ剣を強く握ると、握りすぎて掌が痛くなってしまった。踏んだり蹴ったりとはまさにこのことだろう。


 数10分後、やっとのことで冒険者ギルドに到着した。少し興奮しながらも兵士の話を聞くと、目の前に見えるカウンター横の広い通路を奥へ進むとダンジョンへ入れるようだ。


「ちょっとお腹が、トイレに行きたい、です」

 なれない敬語を操り兵士に腹痛を訴えた。


「ちっ、トイレはあっちだ。さっさと行け!」

 そう言われて慌ててトイレに駆け込んだ。


 俺は[知略]により閃いた考えに導かれるまま、臭く粗末な個室に入ると鍵をかけた。


 ここからどうしたら……そう思った時、個室には窓があることに気が付いた。

 ここからか……そう思って窓を開け……はめ込みになってるのか。そう思って窓をガタガタと何度か押し引きしていると、窓がガリっとした音を立てながら外れてくれた。


 俺は腕をぷるぷるさせながら、必至でその開いたスペースにしがみつき、自重に呻きながらも外へと出ることができた。全身から汗が噴き出たことが不快感だった。

 そこから、はあはあと息を整えながらもできるだけ距離を稼ぐ為に早歩き。


 閃きのまま石畳の道を進む。

 帝都の中心地ともなるこの通りは、多くの人が行き交っているので、早々見つかりはしないだろう。そう思って体力に合わせ足を進める。


 10分程歩き、俺の体力は限界だった。

 きっと慣れない懸垂動作に腕をやられたのだろう。


 目に入った店の前に丁度良い長椅子があったのでここで休憩だと腰を下ろした。公園のベンチのような粗末なものだったが、今はそれでもありがたかった。


 これからどうするか……


「あ、お客さん?今は空いてるから待たなくて良いんだよ?さ、入って入って」

 そう言って俺の手を引くのは、茶髪の長い髪が煌めく可愛らしい少女だった。


「え、あ、ぼ、僕は、ちょっと休憩で。すみません」

 さすがの俺も突然のことに戸惑い言葉がでてこない。


「ふふ。そうだったの。でももし良かったら食べてって?うちの団子は美味しいから!」

 そういってほほ笑む少女に、俺は仕方なしに頷くのだった。


 暫くして出された所謂みたらし団子のような3本の串にかぶりつく。

 正直あまり甘みの無い団子だなと思った。


 だがしかし、俺は城での料理は豪華な食事より、このぐらい粗末な物の方が好みだ。


 俺はあっという間に目の前の団子を平らげると、熱い茶を啜った。


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