16.城への帰還と皇帝陛下への報告 01
「このような結果に終わり申し訳ありません」
俺は、皇帝陛下の前で膝を突き頭を下げる。
そっちの都合で、と思っていたが、今回のように不甲斐ない結果であれば、仕方ないとその気持ちを態度で示す。俺が文句を言えたのは結果を出せると思っていたからだ。だが、今となっては挽回のチャンスを貰わばければならない。
でなければ、他のクラスメイトの安全が脅かされてしまう。
この国は……弱いことは罪なのだから。
「期待していたのだがな。して、その森の中で生活していた男を味方に引き入れることは出来ぬのか?」
「彼は、恐らく金や地位には執着がないのだと思います」
「そんな奴がいるわけがないだろう。この世は金だ!地位があれば金もついてくる!金があれば何でもできるし幸せな一生が送れるではないか!」
「お金だけが全てではありません!それは、私もですが……」
陛下から不機嫌そうなため息が聞こえた。
「期待外れ、だったな」
「……お言葉ですが、今回はやはり精鋭のみで行くべきでした!」
俺の返答にさらに気分を害したのか、陛下から冷たい目線を向けられる。
だが結局、最後まで一部の者以外のクラスメイトは遠くから見守ることしかできず、逆に足手纏いでさえあったのは事実だ。
「弱い魔物でも徒党を組めば脅威となろう。例え弱い者達であっても、その脅威を防ぐ盾ぐらいにはなるだろう?」
「そんな!」
やはりこの世界は人の命が軽いのだと実感する。
「他のことで必ず挽回してみせます。ですから、あの森はについては諦めて下さいませんか?」
「ためだ!あの森は必ず手に入れねばならんのだ!」
「どうしてそこまで!」
席を立ち俺に怒りを向ける陛下に俺も声を荒らげて返すと、陛下はゆっくりと元の席に腰かけ、横にいた男に顎で合図を送る。
「あの森の中央には古いダンジョンがあるのです―――」
そう言って話始めた男は、あの森の中央にあるダンジョンと、帝都のダンジョンの仕組みについてに説明を始めた。
「この世界に複数存在するダンジョンというものは、ある日突然出現する巨大な生物とも言われています。まるで、宝を餌に人を呼び込み、魔力などを吸収して成長しようとしている魔物のような存在なんです。
ダンジョンができるとそこに人が集まり、その周りには街ができる。ダンジョン内の貴重な素材により、民は豊かになる。そうやってこの世界の国々は発展していっているのです。
今現在、帝国内には帝都のダンジョンの他に3か所のダンジョンがありますが、帝都以外のダンジョンは精々10階層程度の小規模なもの。ほとんど魔石目当ての燃料倉庫のような扱いとなっているのです。
なので実質的なダンジョンは帝都のみの為、今も帝都には国内の主要な冒険者が集まり、日々命を掛けて素材を持ち帰り人々の生活を豊かにする糧となっているのですよ」
そこで一度言葉を切った男は俺の目をじっと見つめて再び口を開いた。
「ですが、年々帝都に集まる冒険者は減り、帝都は少しづつ貧しくなっております。このままではいずれは他国へ、王国へと進攻せねばならなくなってしまうほどに……」
「なぜ、他国を侵略する必要がある!」
思わず声に怒りが混じってしまう。
「それは、ダンジョンが死んだからですよ勇者様」
ダンジョンが死んだ。それと似た言葉を俺も何度か聞いたことがあった。
俺達がダンジョンで狩りをする際は、基本的に無理な素材回収はしていなかった。それでもこの国の民の為と思って休憩がてら手が空いている場合には回収することもあった。
その素材も普段は魔法のバッグに放り込んでおくだけで、ギルドと呼ばれる管理組織に素材提出することを帝国の人に任せていた。だが何度か自分で提出したこともあった。純粋にその行為に興味があったからだ。
どのように受付をし、そのぐらいの時間がかかり、どのぐらいの値がつくのか。そういった事柄を好奇心から何度か体験させて貰っていた。
その際に、近くにいた他の冒険者達が「死にダンジョン」という言葉を使っていたのを聞いたことがあった。
その時は意味が分からず、ただ単に先に進むのが難しく死にそうだ、ということを表しているのかもなと思っていたが、目の前の男の説明に、どうやらそう言った意味ではなさそうだと感じた。
俺はさらに詳しく知りたくて男に「続けてくれ」と促した。
「この国の礎を築いたのは、やはり勇者召喚により呼び出された一人の青年から始まったのです―――」
男は初代の勇者、『建国の勇者』の話を始めた。
俺もこの世界にきて『建国の勇者』についての話も何度か聞いたことがある。オキタと言う勇者が召喚され、僅か5年で国を纏めたあげたのがこの帝国の始まりだと。
「この世界のダンジョンは、ある一定階層に存在する試練を突破すると、報酬として特別なスキルが与えられるのです。勇者オキタ様は30階層と50階層を突破して[次元収納]と言う魔法のバッグのようなスキルと、[転移]という移動スキルを与えられたと伝えられています。
さらに勇者オキタ様は破竹の勢いで攻略を進め、ダンジョンの最下層である100階層を攻略したそうです」
その話を聞き、俺はまさにアニメの中の勇者だなと思った。
「そして、勇者オキタ様は100階層で最後の試練を受け、[異世界転移]というスキルを得たそうです」
俺は、そのスキルの名を聞き思わず男に掴みかかってしまう。
「ゆ、勇者様、苦しいです」
「す、すまない!それで、勇者は元の世界に帰ったのか?」
「ええ。そう聞いています」
「じゃあ、俺が100階層をクリアしたら、元の世界に帰れるんだな!」
「それは……」
男は言い淀んでいた。
確かに、魔王を倒さなければ帰れないという前提だったから従っていたが、100階層をクリアしたら帰れるのだ。他の事には脇目も振らず、何が何でもダンジョンを攻略したら良いのだ。
それは帝国の意に反しているから答えづらいのだろう。
「いえ、今は試練自体が無くなっているのです」
俺はその言葉に愕然として下を向く。
「最初に異変を気づいたのは200年程前です。50階層を何とか突破した当時のSランクパーティーが、試練を与えられず、スキルを得られなかったそうです」
俺は、男の話を只々聞くことしかできなかった。
今まで魔王を倒せばと聞いていたが、正直ピンときていなかった。魔王がどこにいるのか、何をしているのかも聞いていない。
だが、今回は確実に元の世界へと帰る為の方法が示された。
そう思っていたのに……
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