15.懐かしき者との再会 06
すべてが終わったと思った時、遠くから叫び声が聞こえた。
「志田さーん!それに他の子達もー、早くこっちへー!」
それは飯田の声だった。
飯田は心配するような表情で叫び、こちらに手をふっている。
「未波達ももう帰ってくれ。そして、さっきも言ってたがここには二度と来ないでくれよ。俺は、俺達は次は絶対に油断しないし躊躇はしない。それと、お前達の親玉は王なんだろ?……ここから手を引けって言っておいてくれよ」
俺は未波の目をしっかりと見つめそう伝える。
「私は、ここに残るよ!」
「何を言ってんだ!帰れって言ってんだろ!」
「私の事そんなに嫌い?」
「何、言ってんだ!嫌いとかそんな事……」
「私はここにいたい……だめ?」
急に泣きそうな顔をした未波は俺に一歩近づくと、上目遣いで俺にそう願い出た。
俺は必死で拒絶しようと気持ちを強く持ち誘惑から抗った。
「う……だ、だめ、じゃない、かも……」
結局未波に押し切られたのは、未波の背後でニヤニヤとこちらを覗き見ている4人の女子達の視線に負けたからかもしれない。
「おーい!聞こえてないのかー!」
俺は、まだ叫んでいる飯田を少し哀れに思った。
「飯田一人だけだ!それ以外は認めない!」
手招きして近づくことを許した俺は近づいてきた飯田に、10メートルほどの距離で掌を向け止まるよう伝えた。
「志田さん、もう帰ろう。皇帝陛下には俺からここを諦めるように伝えるから、魔王討伐に向けてまた一から頑張ろう!」
「私、帰らないから」
「えっ?どうして?」
飯田はよっぽど予想外だったのか珍しく惚けた顔をしている。まあ俺も予想外だったからな。仕方ないだろう。
「私、ルリさんやコガネさんにも償わなきゃ!それに勝基君にもね」
「それは、俺が陛下にお願いして必ず詫びを……」
「それも必ずお願いね」
飯田は暫く返答ができない様子だった。
「私達も残るから。魔王退治は……頑張って。どうせ私達は役に立てそうにないし、未波が残るなら私達も一緒だよ」
「「えっ」」
俺と飯田の声が重なった。
「ちょっと待って?俺は未波については押し負けて許可を―――」
「何?そんなに未波といちゃつきたいの?私達は邪魔者ってこと?」
あの未波にべったりしてた女の子がそう言ってニヤニヤしている。
「く……」
そう言われてはと返答に詰まる俺。
「加藤君も何を言ってるんだ!他の子達も残るって言うのか?」
「そうよ!それに今はそれどころじゃないから、飯田君は早くみんなを連れて帰りなよ!」
加藤と呼ばれた女の子は腰に手をあて飯田にそう言い、飯田はさらに困惑している様子を見せてくれた。
「で、どうなの佐田君!それとも私達も未波と同じように目を潤ませてお願いしなきゃダメなの?」
どうしよう。この子、圧が強い。
「いや、でも、ここって不便だよ?少なくともそんな立派な装備なんて無いし、ここも暫くは野宿みたいな感じになりそうだし……」
俺はほぼ更地になってしまった拠点を見回しながらそう言った。
「大丈夫よ。それは佐田君が何とかしてくれるんでしょ?お願いよ。私は、未波と一緒がいい!」
その言葉に連動するように俺に近づく彼女。
そして同じように近づいてくる他の3人に体を寄せられ俺は顔に熱が集まるのを感じた。
「ちょ、ちょっと!勝基君が困ってるでしょ!それに、近いよ!ちょ、京子!なんで勝基君の腰に手をあてて、え?何?待ってよみんな!」
未波が混乱しているようだが、できればこの子達を引き剥がしてほしい。
俺は間違ってどこかに触れてしまわないように手を動かさないよう心掛けながら、未波に助けてくれるよう視線を送っていた。
「ねえ!どうなの?それとももっとすごいことしなきゃ、許可してくれないわけ?」
「もっとって、いや良いから!4人共、許可する。だから離れてくれー!」
耐え兼ねてしまった俺は4人が離れてから逃げるようにルリの背後に抱きついて赤くなっでしまった顔を隠していた。
「みんな、それでいいのか?」
「うん。飯田君は、魔王討伐頑張って」
「あ、ああ。必ず魔王を倒して、君達を迎えにくるよ」
「いや、それはいいかな?」
「どうして―――」
俺は暫く未波と飯田が言い合いをしているのを聞きながら精神を落ち着けようと目を瞑る。その間、りリズはずっと俺の頭を撫でてくれていた。
数分後、飯田はみんなを連れて帰って行った。
「これ、魔法の収納バッグ。後、中には少しのおやつと調味料が多数。どう?私も役に立つでしょ?」
そう言った彼女は加藤愛理。
未波の一番の親友なのは中学時代から知っていたが、名前はほぼ憶えていなかった。あまり関わりたくなくて未波の周りの情報はシャットアウトしてたからだろう。
「って、調味料?それは正直ありがたい」
「感謝してよね。ここには調味料関係は塩っぽいのだけなんでしょ?」
「なぜそれを……」
加藤さん達はルリともコガネとも特に話をしていないようだったが……
「この子に聞いたのー」
そう言うのは山崎沙耶。そして彼女の肩には何故かアクアが乗っている。
「沙耶は調教師だからね。このスライムとも会話ができるから、ここの食事情はしっかり聞いたわ。お肉はここで調達できるって聞いたし、調味料があれば千佳がなんでも作ってくれると思う」
「任せて!」
自信ありげにそう言うのは野村千佳。
[偵察]で覗き見ると調理師だった。そんなクラスあるのかよと思ったが、加藤さんが罠師ってクラスだし、俺自身が引きこもりだ。もはや何でもありだな。
「私は、偵察なんかに使ってほしい」
そう言って影を3体作り出して走り回らせてるのは玉井京子。
クラスは影術師で本人が言う通り偵察向きだろう。
「ね。意外と私達も役立ちそうでしょ?」
むふふと笑う加藤さんに苦笑いを返しておく。
こうして、新たな仲間、と言えるかわからないが、拠点(跡地)の人数が増え、新たな生活が始まった。
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