13.懐かしき者との再会 04
目の前の飯田は俺の数メートル前で足を止める。
「佐田、すまない!俺には使命がある!俺を恨んでも良い!だが他の者達は恨まないでやってくれ!手加減はしてやる……できることなら、早めに降参してくれ!……聖なる魔力を糧に、放たれるは神の一撃……[聖光雷撃]!」
俺の淡い期待は打ち砕かれ、戯言を言いながら飯田から放たれたのは天から降り注いだ強力な雷撃であった。
あれが勇者のスキル、[聖光雷撃]か……チートすぎだろ!そう思った次の瞬間、残っていた拠点の城壁の大半が削り取られ消失していた。
俺もルリに庇われなんとか直撃を避けたが、その攻撃の余波により後方へ吹き飛ばされた。
ルリが残り少ない脚で俺を抱きかかえ、俺を最後までを離さず守ってくれた為、地面や瓦礫の山に直接叩きつけられずに済んだようだ。
だが、脇腹に強い痛みを感じ目が霞む。
手にはねっとりとした感触が感じられたので、負傷により血が流れ出ているのだろう。
俺の霞む視界には、飯田と共に笑いながらこちらに歩いてくる浜崎達が映った。
飯田の奴……多分だが俺と同じタイミングでこっちに召喚されたんだよな。さすが勇者、チートすぎだろ……
そう思いながらも、一緒に近づいてくる浜崎達に必死に反撃をしようと手を伸ばすが、[防壁]も、[強制退去]も全てが易々と防がれてしまっていた。
俺の意識がうまく定まらず、脆い壁、軽い風しか起こらなかった現実に、思いっきり叫びだしたかったが、体が自由にならない今の俺にはそんな余裕はなかった。
「また俺は、居場所をなくすのか……」
いつの間にか脇腹に張り付き治療をしていくれているスライムのアクアに手を添えながら、俺の意識が途切れようとしていた……
意識がはっきりとしない中、俺が生まれ変わったらあいつら全員ぶっ殺してやる……そう心に恨みを封じ込め、うっすら感じる光に向かいこの世界にまた生まれ変わる奇跡を切望し手を伸ばした。
「俺は、絶対に、お前達を……殺す……」
そう呟きながら、俺は手にも力が入らなくなり……
「勝基君!もう私は、迷わないよ!」
俺の体が温かい光を浴びる。
その心地よさに顔を上げる。
「これは、[治癒]なのか?」
未波から降り注ぐ光により、俺の傷が癒えてゆくのが感じられた。
「ルリ!」
俺はハッとしてルリの方を見ると、ルリにも同じように光が注がれ少しづつではあるが、まるで逆再生されているように欠損した体の一部が修復されているようだ。
「これが、聖女様の治癒の力……」
ついそう口走ってしまった。
「ちょ、ちょっと勝基君、聖女様なんて。恥ずかしいよ……」
消え入りそうな声でそう言う未波に、俺も恥ずかしくなって顔に熱が集まってくる。
「ちょっと、なに未波だけ良い雰囲気作ってるの!どうするのこれ!飯田君達と戦うの?」
そばにいた女の子が飯田達を見ながらそう叫んでいる。
「私は、こんな一方的に誰かを傷付けるやり方は我慢できない!」
「……分かった」
未波の言葉に頷く女の子。他の子達も覚悟を決めたように身構えているが、その顔色は悪く体も震えている様子だった。
『うむ。ミナミと言ったか?』
「は、はい!」
背後から、かなり回復した様子のルリが未波に話しかけている。
『中々良い女じゃ!カツキの女か?』
「ちょ!違うから!」
俺が慌てて否定するが、振り向いた未波の顔は真っ赤に染まっていた。
『まあ良い!ミナミのおかげで我も幾分回復した……このような輩如きに後れは取らぬのじゃ!』
「そうか……じゃあ、頼むなルリ」
俺はそう言ってルリの体をいたわるように生えそろった蜘蛛足に触れる。
『任されたのじゃ!』
そう言ったルリは、両手を前に翳すと何本もの蜘蛛糸の束を飛ばし、あっという間にこの場が蜘蛛の糸で埋め尽くされていた。
彼方此方で糸に巻かれ悲鳴や呻き声を上げる者達を、俺は惚けながら見ていた。
さすがルリ。想像以上の強さにやはり森の主の名は伊達ではないと思った。同時に、これは奇襲で一気に叩くようなことでもなければ、ルリの討伐は無理だったんだなと思った。
飯田を含め何人かがその糸から逃れられた様だが、反撃はできそうにない様子だった。遠距離スキルを使った者達の攻撃は即座に糸で絡みとられている。
「ルリさん、で良いんだよね?」
『なんじゃ?ミナミ』
「できれば、殺したりはしないでくれますか?」
『ほぉ?この我があそこまで卑怯な攻撃を受け死にかけたのじゃ……その輩を見逃せと?』
ルリが冷たい表情で未波を見ている。
「ちょ、ルリ?」
そう言って宥めようとするが、ルリの白い手が動き俺の口にそっと添える。
黙ってろということか?
『どうなのじゃ?』
「ご、ごめんなさい!絶対に納得するお詫びをお持ちしますから!どうかお許し頂けませんか?」
目を潤ませて膝をつきそう言う未波。
「わ、私達も!できることがあれば何でもやりますから!」
さっきの女の子もそう言って未波の隣で膝をつきルリに祈る様にしている。
矢継ぎ早に他の女の子達も拝み始めた。
『冗談じゃ。あんなもの、怪我の内に入らぬわ!』
そう言って笑いだしたルリを見てほっとする。
さすがに俺もこの人数を虐殺なんて光景は見たくはなかった。一部、殺ってしまいたい程の恨みはあるが……無事にこの場を切り抜けられそうと感じた今の俺には、それを行う気が無くなっていた。
だが、また俺やルリ達に何かをするようなら……その時は俺の手で、その時の為に死ぬ気で強くならなくちゃと思った。
きっとこいつらがもう一度ここにやって来なくても、帝国がこの場所を狙っていると言うのなら、いずれまた誰かがここにやってくるのは確実なのだから。
まずはこの場を穏便に。そう思って一度深呼吸して周りを見渡した。
「もう無理だって分かっただろ?お前達はこのまま帰ってくれ!帰らないなら……俺はお前達を許しはしない!」
できうる限りに凄んでみるが、いまいち迫力に欠けるとは思いながらも反応を見る。
どうやらこの状況が俺の言葉に迫力を持たせたのだろう。
ガタガタと震える者達が多く確認できた。
「佐田!それで、いいのか?」
飯田がそう言いながらこちらを睨んでいる。
「ああ。帰ってくれれば文句は言わない。だが帰らないと言うなら、俺があの世に送ってやるよ!」
俺の返答に悔しそうに歯噛みする飯田。
勇者である飯田が折れれば終わるだろう。
そう思いながら、俺は飯田の返答を待っていた。
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