98.それぞれの日常 07
体のケアを終え、部屋に戻り明日の準備を終わらせる。
明日は大人の魅力を醸し出す黒で責めてみようと思う。今から卓志君の戸惑う顔を楽しみにしておこう。
私は機嫌よく隣の部屋へと移動する。
作業用の台の上には大量の装備品が並んでいる。
並んでいるのは他のクラスメイト達から回ってきたダンジョン産の装備品の数々である。それぞれがダンジョンで手に入れたものもあるし、他の冒険者達が手放した物をある。
私のスキルは指定した属性などを付与できるわけではない。だからとにかく数をこなして良い組み合わせが来ることを祈るしかないのだ。
――――――
不和恵梨香 / 人族 / クラス [付与術士]
力 D / 知 E+ / 耐 F
<スキル>
[低級付与/防具] 微力ながら防具の一つに知、耐、運の属性付与を行う力
[低級付与/武具] 微力ながら武具に力、もしくは知の属性付与を行う力
[中級付与/防具] 防具の一つに知、耐、運の属性付与を行う力
[中級付与/武具] 武具に力、もしくは知の属性付与を行う力
[魔力節約] スキル使用時の魔力消費を抑える力
[幸運の手] 付与効果が向上する瞬間が分かる力
[属性付与] 武具に属性を付与する力
[耐性付与] 防具にランダムで耐性を付与する力
――――――
改めて確認すると、試練で手に入れた[幸運の手][属性付与][耐性付与]の3つは他の付与術士の方から比べて極めて珍しいようだ。本来、付与術士であれば多少魔物を狩ってスキルを取得するものの、後は実技で鍛えるそうだ。
長い年月修行をして、初級スキルを中級、上級へと上げることができるそうで、一生を修行に使い上級に上がる人もいれば、属性付与が取得できたという人もいるらしい。
私のように若くして複数のレアスキルを得る人族はいないのだと。
とは言え[属性付与]と[耐性付与]はとにかく魔力を使う。ダンジョンで魔力を高くなっているのはずの私でも8割程度の魔力を使うので、魔力が全快している朝晩2回、付与を試している。
私は目の前の装備品の中から無骨な鉄扇子を確認する。
試練で大商人クラスとなった春香の[詳細物品鑑定]により確認された説明が書き添えられている。ここに並んでいる物は付与枠があるものだけだ。春香の鑑定は装備品の付与枠をも視ることができる。
枠が無ければいくら付与スキルを使っても付与することはできず装備品は破壊されるそうだ。だから鑑定持ちや付与スキル持ちに確認する費用を惜しんだ冒険者からこういったレア装備が流れてくる。
その点を考えても春香のスキルの有用性が伺えるだろう。
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柳本春香 / 人族 / クラス [大商人/信頼関係向上]
力 D- / 知 E+ / 耐 F+
<スキル>
[算術] 瞬時に高度な計算を完了させる力
[簡易物品鑑定] 物の価値や役目を鑑定する力
[交渉術] 相手の意に沿った言葉を使うことで交渉を有利に進める力
[人物分析] 人物の詳細な身体情報を読み取り記録する力
[商人の嗅覚] 商機を逃さない直感が働く
[微笑み] 場を和ませる笑顔の力
[詳細物品鑑定] 物の価値や詳細な役目を鑑定する力
――――――
春香は試練で大商人となり、さらには[商人の嗅覚][詳細物品鑑定]の2つのスキルを試練で得てからは、本当に良い装備品を回してくれる。
本当はその能力を存分に発揮してくれれば良いのだけど、今は樹里と2人で腐った文化を広める為に使っているようだ。とは言えそれは2人の人生だ。私がとやかく言うことも無いだろう。それぞれが可能な範囲で協力しあえれば良いのだから。
樹里だって良い魔道具ができるように頑張ってくれているはずだ。
――――――
北山樹里 / 人族 / クラス [錬金術士/品質向上]
力 F / 知 D+ / 耐 G+
<スキル>
[下級魔導具錬金] 下級の魔道具を作成する力
[下級素材錬金] 下級の素材を作成する力
[中級魔導具錬金] 中級の魔道具を作成する力
[中級素材錬金] 中級の素材を作成する力
[魔力節約] スキル使用時の魔力消費を抑える力
[偶然の産物] 制作した魔道具の機能が大幅に向上する力
[上級素材錬金] 上級の素材を作成する力
[突然変換] 突発的に未知なる素材を作成する力
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試練により錬金術師から錬金術士にクラスアップした樹里は、さらに試練で[偶然の産物]と[突然変換]というレアなスキルを得ている。今は中級魔導具錬金により身を守るための魔道具を作ってくれている。
本当は[上級魔導具錬金]を覚えられたらとも思うけど、ダンジョンに籠ったところで取得できるかは分からない。そもそも上級の魔道具は素材も多いし数もこなせないという話なので、今は現状維持で良いと思っている。
私と同じように朝晩に分けて魔道具に魔力を注いでも中級だと2日に1つのペースでやっと作れるようだ。目の前で少しづつその形が出来上がっていく工程が見えるので見ていて飽きない。
結界や幻術解除、状態異常解除や治癒などの効果のある使い捨ての護符、捕縛用の網や侵入感知の罠など、身を守る為の魔道具を中心に作成している。その為の素材も作る必要があるけど、ほどんどが買い集めた物を使っている。
素材作成に使う魔力の余裕が無いのが現状らしい。
とにかく数を作っているけど、たまに[偶然の産物]により上級に性能がアップするので、私達は上級結界用の護符を必ず1枚は所持するようにしている。今のところは幸運なことにその効果を発揮したことは無いけど。
今は上級の治癒の護符が欲しいけど、まだ人数分はできていないようだ。
そんなことを考えながら今日はこれにしようと鉄扇子に手を添える。沙織の顔を思い出しながら、その少しだけ素早さが上がる効果のある鉄扇子に[属性付与]を開始する準備を整える。
珍しく元々付与効果のある装備品。良い属性が付与できれば強力な武器となるだろう。
暫くすると[幸運の手]の効果が発揮され、まさにこのタイミング、と思える瞬間に魔力を籠め付与を開始する。
魔力が鉄扇子に吸い込まれるように消えてゆく。少し熱を帯びた指が汗ばんでいるのを感じる。できれば風属性をお願い!そう願いながら魔力を放出する。
「あっ、やった!」
10分程で付与を終えると、ごっそりと無くなった魔力の所為で気だるさを感じながらも思わず声をあげる。
――――――
強い風属性が付与されました。
――――――
ステータス画面のように鉄扇子に翳す手の上に表示された窓に強い風属性の文字。試練で舞踏士にクラスアップした沙織なら風属性の装備はきっと役に立つだろう。そう思って頬が緩む。
元々素早さ向上の効果があるその鉄扇子は久しぶりに良い装備品となったようだ。明日の朝にでも沙織に渡しておこう。そう思いながらその鉄扇子を付与済みの棚に置いた。
――――――
中山沙織 / 人族 / クラス [舞踏士/体力向上]
力 C / 知 F- / 耐 G
<スキル>
[魅了の舞] 少しの時間だけ対象の魔物を魅了し行動不能にする舞踏の力
[鼓舞の舞] 少しの時間だけ対象者の能力を微増させる舞踏の力
[回避の舞] 少しの時間だけ自身の回避を底上げする力
[癒しの舞] 少しの時間だけ対象者の体力を回復させる舞踏の力
[木の葉の舞] 踊っている間は回避力が大幅に向上する舞踏の力
[英雄の舞] 仲間の力を大幅に向上させる舞踏の力
――――――
試練で舞踏師から舞踏士となった沙織は、[木の葉の舞][英雄の舞]と2つのスキルも得て、ダンジョンでは仲間を守る為に奮闘してれていた。
この世界に召喚された直後は恥ずかしがっていた沙織も、今では自信がついたのかスキルを使うことに抵抗がなくなっている。お淑やかな性格も少しだけ明るくなりよく笑うようになった。
私はそんな沙織の変化がとても素敵だなと思っている。そんなことを考えながら、明日の朝一番に付与する装備品を物色する。メモを確認しながら眺めていると、魅力を向上させる鈴を見つけた。
耐性付与の枠もあり、さらには中級付与もできる装飾品のようだ。
「よし、これにしよう」
そう呟いて端に寄せておく。
鈴なら召喚士の萌香が使う為に良いだろう。魅力アップはそのまま召喚する魔物の従順度を上げてくれる。それに耐性を付与できれば萌香の身を守る良い装備になるだろう。
たしか萌香はすでに毒と麻痺に耐性がある防具持ちだったかな?本当は物理か魔力の耐性がベストだけど、毒と麻痺以外なら何でも良いよね。良い耐性がつけば耐久上昇を付与したら良いかな?
耐性が被れば誰かに回せば良いし?そんなことを考える。
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安西萌香 / 人族 / クラス [召喚士]
力 E+ / 知 F+ / 耐 G+
<スキル>
[低級魔物召喚] 低級の魔物を召喚できる力
[節約召喚] 召喚時の魔力消費を抑える力
[平行召喚] 召喚できる最大数を増やす力
[中級魔物召喚] 中級の魔物を召喚できる力
[強者召喚] 全魔力と引き換えに強者を一時だけ召喚する力
[魔力節約] スキル使用時の魔力消費を抑える力
[魔剣召喚] 一時的に強力な魔剣を召喚する力
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萌香は召喚士として5人の中ではある程度戦えるクラスではある。
試練で得た[強者召喚][魔力節約][魔剣召喚]のスキルはいずれもかなりのレアスキルだ。[魔剣召喚]なんて伝承にも無い超レアスキルだって。
強力な魔剣を召喚してくれる萌香を羨ましく思う。
魔剣は数時間しか召喚できないけれど護衛の時に敵襲があれば便利なスキルだ。私が魔剣を召喚できればもっと卓志君の役に立てるのに……そんなことを考えながら少しモヤる。
「いかん!いかんぞ恵梨香!」
独り言を呟きながら頭を振る。
いずれ私が卓志君に相応しい剣を作るんだ。そう思いながらもう一度作業台の上の装備を確認する。卓志君に相応しい長剣はなかったことにため息をつく。
まだしばらくはこの世界で暮らしていかなくてはならないだろう。いずれ良いモノが回ってくるだろう。その時には良い属性を付与できますように。そう願いながら自室に移動して布団へ飛び込んだ。
明日のデートを考えると寝付けないかも?そう考えながら目を瞑る。
すぐに私の意識は眠りについた。
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