97.それぞれの日常 06
――― 帝都ザークスランド・城内
「フランソワーズ様、本日の公務は終了です」
「やっと終わりましたわ!」
目の前の書類をチェックし終えたフランちゃんが椅子に背を預け伸びをする。
「ってことでフランちゃん、お風呂行く?」
「お風呂ですわね?もちろん行きますわ!」
私はフランちゃんと一緒に彼女の自室に移動すると、すぐに衣服を脱ぎすて、大雑把にかけ湯し湯船につかる。
「はー、きもちいー!」
思わずそんな声が出てしまう。
「一日の疲れが取れますわ!皆様、本日もお疲れ様ですわ!」
御付きの侍女の謎スキルにより一瞬で裸に剥かれ先に入浴しているフランちゃん。気持ちよさそうに伸びをしながら私達を労っている。大きな胸が湯に浮いていて少し嫉妬。
「ほほほ、嫌ですわ姫様、私如きにそのようなお言葉、もったいのうございます」
春香は楽しそうに御貴族様のように返答し笑っている。
「あはは、何それ。やっぱ似合わないなー、面白いけど」
樹里もそう言いながら、美肌に効果があるというお湯を腕にバシャバシャさせている。
今日は私と春香、樹里、卓志君の4人で護衛を行った。とは言っても城内で特に危険もないとは思ってはいる。未だにフランちゃんに敵意を持つ一部の貴族家もあると聞いているけど、今のところ表立って敵意を見せてはいないらしい。
明日は萌香と沙織、拓也君と健太君での護衛となる。
もちろん侍女さん達もいるけど護衛に女性がいるのは心強いようで、ここ最近はこの組み合わせで護衛をローテーションしている。
私達は5人共いわゆる支援職と呼ばれるクラス、だけどダンジョンで鍛えた私達の能力値はこの世界の人達にとっても高い方で、剣術の訓練もしているのでそれなりに戦えると思っている。
それに卓志君達も一緒だから、多少の敵に囲まれたとしても余程の強敵でなければ負けるわけがないとも思ってる。卓志君は剣豪だし拓也君は魔術士、健太君は槍騎士だ。2日に一片の出勤なのであまり負担もない。少し長時間勤務だけど。
就寝時間については私室の前には別の護衛がついているので、そこはあまり気にしていない。フランちゃんの私室には仕掛けもあるし。
ちなみに明日私は卓志君と街へ買い物の予定ではある。今から楽しみにしている。
「明日は横井様とお出かけですの?」
「うぇ?ななな、なんで今それを?」
フランちゃんに急に頭の中を覗かれたような気がして焦る。
「恵梨香ちゃん、ご機嫌そうに見えましたもの」
「そ、そんなこと、ないわよ」
私の否定にフランちゃんが緩めた口元を掌で隠している。恥ずかしい。
ちなみにフランちゃんは公務の時以外は私達の事をちゃん付けで呼んでくれるようになった。未波のように呼び捨てではないけど。男子達は未だに様付けだけど。私達も公務の時はフランソワーズ様だけど、普段はフランちゃんと呼んで良いことになっている。
公務以外の時にうっかりフランソワーズ様と言ってしまうと悲しそうな顔をするので気を付けている。
「羨ましいですわ……私、王国から帰ってきて一度しか勝基様にお会いできていませんのに……」
そう言って少し落ち込んでいるフランちゃん。
「まあまあ。落ち着いたら会いに行けば良いじゃん。勝基君は森に引きこもってるし、逃げない逃げない」
「そうそう。それにしても、あれの何が良いの?確かに少し逞しくなったなって思うけど、そこまでぞっこんなのはなんでか謎だわ」
2人がそう言ってフランちゃんに慰めになっているか分からない言葉をかけ、抱きしめながら頭を撫でている。
2人とも私より女らしい体つきをしているので、3人で抱き合っている目の前の光景に少しドキドキしてしまう。あっちの気はないけど少し変な気持ちになってしまうのは、きっと私の中の母性か何かが働いているに違いない。
そんなことを考えている私は王国でのことを思い返す。今度どこかに戦いに出ることになったら私達は参加しない予定だ。今まで何度か戦いに参加したけれど他の同級生達に比べ、私達はあまりに弱い。どう考えても足手纏いだ。
その事はすでに卓志君を通して飯田君にも伝えてある。そもそも彼らが苦戦するような相手に私達がかなうはずが無い。そんな危険な戦いに身を置くことがなければもうこれ以上鍛える必要もないだろう。
5人でそう考え私達はフランちゃんの護衛をやりながらも、自分のクラスにあった生活を送ろうと思っている。せめて日本に帰るその時までは……
私は日本に帰ることを考えている。卓志君もそれに賛同してくれている。最近は良いお付き合いもできているし、できれば安全な環境で幸せに暮らしたい。
萌香と沙織もそれぞれ良い関係を作ってはいるけど、拓也君と健太君からまだ告白されてはいないらしい。2人とも少しじれったいと言いつつも、その関係性を楽しんでいるようだ。
2人もうまくけば一緒に日本に帰りたいようだ。
春香、樹里については今のところ結論を出していないようだ。2人はこの世界に腐った文化を残したいようで、暇を見ては創作活動をしているらしい。少しだけ見せてくれたけど、もうなんか頭がおかしくなりそうなのでそれ以来は遠慮している。
架空のキャラならまだしも見知った人達の彼是なんて見てられない。2人も好きな人たちだけで楽しめれば良いから、と受け入れられないことについて何ら思う所は無いようだ。
私は付与術士としても人族では珍しいスキルに恵まれているという。
この世界にいるというドワーフやホビットと呼ばれる人族より少し寿命の長い種族の方が持つスキルらしい。長い年月をかけて鍛冶や付与を極めたやっと取得できるスキル。そんなのが試練によりサクッと取得できたのだ。
仲間に恵まれている。それに尽きるだろう。
30階層ならいざしらず、50階層までたどり着けるのは極一部の高ランクの冒険者達だけのようだ。それに森のダンジョンで余分にスキルを得ることができていた。このスキルがあればこの世界でも幸せに暮らせるのは分かっている。
それでも王国での事を考えたら、この国だっていつまで平和が保たれるのか?と疑問を感じる。せめて日本に帰れるまでは安全を確保したい。そう思って余暇は新たな装備などを開発すべく時間を使っている。
不足な事態が起こっても、命だけは守れる装備を作るために。
だけど少しぐらいは楽しんだって良いよね?私はのぼせてきた頭で明日のことを考えながら、湯船から上がり侍女さんに体のケアをお願いするのだった。
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