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[完結]引きこもりの少年は異世界で森に引きこもる、はずだった。~幼馴染の聖女の為になし崩し的に異世界を連れまわされた件~  作者: 安ころもっち
第一章・異世界召喚

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09.拠点づくりと新たな主との遭遇 02


『カツキとやら、では私はどうなのだ?』

 睨み合っていた金狼は俺の方を見てそう言った。


「え?めっちゃカッコイイですけど?」

『めっちゃ?カッコイイ?」

「はい!金に輝く美しい毛並みがとても素敵で、カッコイイです!」

『ほぉ……カツキとやら、お主なかなか分かってるじゃないか!』

 目尻を下げ嬉しそうな金狼は、ルリの方を見る。


『な、なんじゃ犬!お主も存外嬉しそうではないか!新たな飼い主を見つけたようじゃが、カツキは我のじゃ!』

『だれが飼い犬だ!私はただ、カツキも中々良い男だと思っただけだ!』

『同じではないか!』

『断じて違う!』

 またじゃれ合っている。


 2人が本気ならきっとこのあたりの地形が変わってしまうだろうから、じゃれてるだけだと信じたい。

 さっきから何かが飛んで城壁が一部抉れたりしてるけど……本気だったらもう全部崩壊して俺も死んでると思うからね!


『はっ!待て!待て待て!とまれと言っておるのじゃこの駄犬が!』

『なんだと!言うに事欠いて駄犬など蜘蛛女とて許せん!』

『だから待てと言うておる!』

 ルリから本気の怒りが感じられ少し後ずさる。


『……なんだ』

『見よ、この惨劇を……壁が、カツキが毎日コツコツ作っていた壁が……ボロボロじゃ』

『う、こ、これは……私の所為では無いぞ』

『嘘を言うな!さっきから雷撃をバシバシ飛ばしおって!壁が黒く焦げてるではないか!』

『それを言うならあそこを見よ!あれは蜘蛛女が糸でバシーンと叩き切った後ではないか!』

『それはお主が逃げ回るからじゃ!』

『誰が逃げ回っているだと!』

 もう部屋に戻って寝ようかな?そう思いながらそばに寄ってきていたアクアを胸に抱く。ひんやりして気持ちよかった。


『カツキ……す、すまぬのじゃ』

『カツキとやら、少々興奮しすぎたようだ。許されよ』

 胡坐をかきアクアを愛でていた俺の前に2人がやってきて頭を下げている。


「大丈夫。またゆっくり直して行けばいいからさ。ルリも、金狼さんもあまり気にしないでよ」

『うむ。早く直せるようまた狩りを手伝うのじゃ』

『私も手伝えることがあれば言ってほしい!』

「うん。よろしくね。ルリ、金狼さん」

 そう言うと、ルリはいつもの世に俺の背後に回り包み込んでくれた。


『なあ、さっきから蜘蛛女のことをルリと呼んでいるが……まさかお主の名前か?』

『ふふん!良いじゃろう!カツキがつけてくれた我の名じゃ!』

『なっ!名をつけるという事はお主はカツキの所有物になったということか!』

「そんな、所有物なんて、ルリは大切な仲間だよ」

 俺の反論に金狼は不思議そうな顔をしている。


『なるほど。仲間か。ではカツキとやら、私も、私にも名を与えてくれぬか?』

『なっ、何を言っておるのじゃ図々しい!』

『だが、ここを破壊してしまった責任を取らねばならんからな!私も責任を取って仲間に加わろうということだ!他意はない!』

『くっ、カツキ、此奴は乱暴者じゃぞ!仲間にしたら大変なことに―――』

『誰が乱暴者だ!』

 また喧嘩が始まったようだ。


 だが、互いに攻撃しようと動き出したが、チラリと周りを見て立ち止まっていた。

 軽く咳ばらいをして大人しく俺の前に座りなおした。


「金狼さん、本当に良いの?」

『うむ。私に二言は無い。それにカツキならきっと私に相応しい名をくれると信じてるからな!』

『ちっ!』

 俺は金狼から思わぬプレッシャーを受け、ルリからは悔しそうな舌打ちが聞こえた。


 彼是と名を考え始めたがあまり良い名前が思いつかず、金狼さんの期待する視線に負けそうになる。


「じゃあ、シンプルにコガネ、なんてどう?俺のいた世界では黄金、金色の別名なんだよね」

『コガネ。うむ良いな!私は今日からコガネだ!蜘蛛女、お主も私のことはコガネと呼ぶがいい!』

『お主こそ、我にはルリという名があるのをもう忘れたか?やっぱり犬っころだの!』

 またも始まった言い合いの末、2人は俺を残して遠くへ行ってしまった。


 少し離れた場所で大きな破壊音が聞こえたが、ケガなどしないで欲しいと願いながら、アクアに森の大猿(フォレストモンキー)の骨を与えていた。


『きゅ!きゅきゅ!』

 アクアが何やら訴えかけてきている。


 何を言ってるのかな?と首をひねり考えた末、[偵察]を使う。

 スキル欄に[治療薬生成]というスキルが増えていた。


「アクア、お前凄いな!」

『きゅ!』

 治癒成分のある水を放出する力とあるので、怪我した際には助かるだろう。


「ほら、もっと食え」

『きゅきゅ!』

 俺は2人が戻ってくるまで、アクアに餌付けをして心を癒していた。


『ギャギャ!』

 足元でレッドがすねて俺を尻尾でパシパシしてたので、作り置きしておいた燻製肉を差し出し持ち餌付けする。


 一切れ食べ終わったレッドは満足そうにして俺の膝の上、アクアが乗っている隙間に捩じりこむように挟まると、そのまま目を瞑って寝てしまった。


『戻ったのじゃ』

『すまん、遅くなった』

 戻ってきた2人はどことなく薄汚れていた。


「2人とも、体泥だらけだぞ?」

『ううむ』『うむ』

 そう言いながら互いを見て嫌そうな顔をする2人だった。


「アクア、頼めるか?」

『きゅ!』

 俺はアクアにお願いしてみるといつも通り良い声が返ってきたので、部屋に戻って大きな桶のような物を持ってきた。


 いつも顔を洗ったり体を拭いたりする時に使っているもので、ルリに大木を切り倒し、中をくり抜いて作ってもらった奴だ。

 そこにアクアがぴゅーと水を飛ばして満杯まで入れてくれる。


「じゃあこれ」

 そう言ってその樽モドキをルリに手渡した。


 桶の中にはルリが蜘蛛糸で編み込んだ柔らかい布が入っている。異世界あるあるなアラクネ布という奴だ。試しに伝えたらすぐに作ってくれたので、色々作ってもらって愛用していた。

 寝床には大きな掛け敷き枕の三点セットも作ってもらっている。もちろん今も上下は真っ白なシャツとズボン、下着を身に着けている。靴はスリッパを加工して毛皮にくるんで使っているが。

 そのアラクネ布により俺の快適な異世界引きこもり生活が成り立っている、と言っても過言は無いだろう。まさにルリ様のおかげだ。


 そんなことを考えている間に俺の膝からアクアは拉致され、2人がまた遠くに消えていった。膝から重みが消え少し寂しい。

 2人が身綺麗になって戻ってきたのはその数分後であった。


 こうして、東西の森の主の同居することになった俺は、拠点を修復しながらも狩りを続け、異世界引きこもり生活を満喫していた。


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