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月に誓いを

作者: 幸

お嬢様、いつか貴方に想いを打ち明けられるのでしょうか。


執事としてではなく。一人の男として。


側で添い遂げると誓います。


この愛しさをピアノの音色に乗せて貴方へ届けます。

お嬢様知っていますか?

満月に誓いを立てると願いが叶うと言われていること。



私には愛する人がいる。

その方は三日月のように笑い、情に満ちている。


「お嬢様、朝です」


「んん、もう朝なの?」


「お嬢様おはようございます」


「おはようアラン」


そう言って私の愛しい姫が微笑んだ。


「朝食の用意ができています」


「ありがとう、着替えてすぐに行くわ」



私はライト家という貴族の執事をしており、お嬢様とは10年ほど一緒に過ごしてる。

お嬢様はいわゆる(めかけ)の子である。

旦那様は政略結婚で隣町の貴族のご令嬢、クロエ様とご結婚された。

旦那様が海外に単身でお仕事に行かれたとき、舞踏会で美しい女性に出会い恋に落ちた。

「お母様、私はクロエと別れてこの方と結婚します。」

そしてメアリー様が生まれた。

祖母のマリー様はお嬢様を好ましく思っていない。

マリー様は自分から遠ざけるようにお嬢様だけを別邸へと移らせた。



「アラン朝食を食べましょ」


「かしこまりました」



私はお嬢様が別邸に移られるときに一緒にこの別邸へ来た。

それからはずっと2人で暮らしている。



「アランはさすがね、今日のお料理も美味しいわ」


「ありがとうございます」


「今日は読みたい本があるの付き合ってくれる?」


「ええ、もちろん。では紅茶を用意しますね」


「いつもありがとう、アラン」


「いえ、私にできることはこれくらいなので」



朝食を終えお嬢様は図書室へと向かわれた。

私は紅茶と少しのお茶菓子を用意し、図書室の扉を開ける。


「お嬢様、紅茶が入りました」


「ありがとう」


いつも本を読まれるときは私の声も聞こえないくらい集中される。

それが少し寂しく思う。


「お嬢様、少しの間屋敷の清掃をしてきます 何かあればすぐ呼んでください」


「わかったわ」


「では」



図書室を出て清掃を始めた。

そしてふとこんなことを思い出した。

それはお嬢様と私がこの別邸に来たばかりの頃。


「待ってください! お嬢様!」


「早くー!」


まだ8歳のお嬢様と庭で遊ぶことになり、庭へ向かっているとき。



「お嬢様! 危ない!」


「きゃっ!」


足元にあった段差に躓いて倒れそうになったお嬢様を支えた。


「あれほど歩くように言ったのに」


「...っ アラン怖かったぁ...」


泣きながら私に抱きついてきたお嬢様は本当に可愛らしかった。

今ももちろん可愛らしいですが、あのときは違った魅力があったように思えます。


「何ニヤついているの?」


そう言ってお嬢様が私の顔を覗く。


「いえ、! 何でもありません!」


「ふーん、そうだ久しぶりに庭に行きたいわ」


「庭ですか? いいですけど、何か見るんですか?」


「なんとなく行きたくなったのよ」


「そうですか、じゃあ少しお待ち下さい」


清掃作業を早めに切り上げて庭に向かう。



「久しぶりに来たけれどやっぱり気持ちがいいわ」


「そうですね、ふふっ」


「さっきからどうかしたの?」


「ただの思い出し笑いですよ」


「そう アランここの手入れもしているの?」


「ええ」


「屋敷の清掃や、食事も任せてしまって大変じゃない?」


「大変かと言われると大変です しかしお嬢様の喜ぶ顔が目に浮かぶと嬉しくてつい張り切ってやってしまいます」


「な、なによそれ アラン最近変よ?」


「そうですか?」


「なんでもないときにニヤけたり、私の顔を見て笑ったり 何か隠してるの?」


「私は、 」


ずっとお嬢様のことを考えていたなんて、恥ずかしくて口にできないのだけれど...


「私は、何も隠してないですよ ただお嬢様と過ごせる日々が楽しくて、表情に出てしまったかもしれないです」


「アランはやっぱり変ね」


「たしかにそうかも知れません ふふっ」


「ほらまた笑ってる」


「私、お嬢様に出会えて幸せです」


「急にどうしたの?」


「なんだか急に感謝を伝えたくなりました」


「そ、そう」


顔を赤らめて言うお嬢様を横目に思い出に浸っていた。




ある日、本邸のマリー様からお手紙が届いた。

内容は本邸で行われる舞踏会に参加するようにとのこと。

もちろんお嬢様はマリー様からのお達しなので従うほかない。


「お嬢様、どうされますか?」


「行くわ。お祖母様からですもの」


「承知いたしました」



舞踏会当日。私はお嬢様とともに本邸へ向かった。


「ごきげんよう お祖母様」


「あら来たのね、(なげ)かわしい」


「お祖母様、本日はお招きありがとうございます」


「私に近づかないで頂戴」


「はい、お祖母様」「アラン、少し風に当たってくる」


「わかりました、お気をつけください」


お嬢様が広間を後にする。

私はお客様方の接待に忙しくついていけなかった。



「あれ、これはこれはライト家のご令嬢メアリー様ではありませんか」


「あら、チャールズ伯爵」


「こんなところで何を?」


「少し風に当たりに」


「ほう、メアリー様は踊られないのですか?」


「私はあまり踊りが得意ではないので」


「そうなのですか、よかったらこれを」


そう言って赤ワインを差し出した。


「これは?」


「珍しいワインなのですよ、よかったら飲んでみて下さい」


一口飲んでみる。


「美味しいです」


「それは良かった」


少し話していると急に眠気に襲われた。


「すみません。急に眠気が、」


「大丈夫ですか?」


「お話楽しかったです、では...」


「メアリー様!」


その場を離れる前に意識を手放した。



少し経って目を覚ます。

するといつの間にか拘束され身動きが取れなかった。


「うっ、ここは...?」


「ようやくお目覚めかな?」


「っ、チャールズ伯爵!?」


「ええ、メアリー様はとても鈍い方なのですね」


「なんのこと、?」


チャールズ伯爵が上に覆い被さってきた。

後退りするも、拘束された手足が言う事を聞かない。


「メアリー様、私はずっと貴方を見ていたんです。」


「やめて、」


舐め回すような視線に身震いがする。


「これでメアリー。君は私のものだ、もう少し眠っていてくれよメアリー」


そう言って布を顔に当てられ意識を手放した。



「マリー様お久しぶりです」


「アラン、久しぶりね」


「お招きありがとうございます」


「メアリーは相変わらずね」


「マリー様はお嬢様に何を求めているんですか?」


「何って、」


「お嬢様が妾の子だから嫌うのですか?それだけの理由で?」


「ライト家の正式な子ではないわ」


「マリー様はもっと愛のある方だと思っていました。」


「っ...」


「失礼いたします」


メアリー様はどちらに行かれたのか。

長い事戻ってきていない。

メアリー様...


「すみません。メアリー様をお見かけしておりませんか?」


「いいえ?」


「そうですか、ありがとうございます」



「お嬢様!どこですか!」


もしお嬢様が囚われているのなら居場所に心当たりがある。

本邸には使われていない離れがある。

そこは本邸の執事やメイドすらも立ち入らない。

そこなら人目につかない。

私はお嬢様の名を叫びながら離れに向かった。



「っ...」


「おはよう、これから楽しいことしようか」


「チャールズ伯爵、やめてください!」


「叫んでも無駄だ、ここは人が一切来ないならな」


「っ...やめて...」


ドレスに手をかけられ背中の紐がほどかれる。


「やだ...」


紐がスルリと床に落ちる


「ほう、私好みな体つきだ」


「っ...」



お嬢様どこですか、?

いくら探しても見つからない。

残っている部屋は地下...


「お嬢様!」




「やめてっ... アラン!助けて...」


「叫んでも無駄だといっただろう? さあ君の全てを私に見せるんだ」


「いやっ... アラン!アラン!」



急いで地下に向かう。

しかし鍵が内からかけられて扉が開かない。


「お嬢様!お嬢様!ここですか!?」


「アラン!?」


中からお嬢様の声がした。


「お嬢様!すみません遅くなりました」


「アラン...」


私は道中見つけた剣で扉をこじ開けた。


「お嬢様!はぁはぁ...」


「アラン!」


「おい、お前は誰だ?」


「お嬢様を返してもらう」


「何を言っている。メアリーは私のものだ。なあ?そうだろメアリー」


「アラン!...」


「お嬢様、今助けますから」


「勇者気取りのやつが何できるってゆうんだよ、埒が明かない。覚悟しろ」


そう言ってアランに向かって剣を振り下ろしてきた。

アランは素早くかわし、剣を奪い取り伯爵の首に剣を構えた。


「貴方は隣国のチャールズ伯爵ですね。こんなことをしておいて、タダじゃ済みませんよ」


「ひぃい...」


「今なら見逃してやる。今後一切お嬢様に近づくな、守れなければ即天罰が下るだろう」


伯爵は怯えながら逃げていった。


「お嬢様!お怪我は...!?」


服が(はだ)けたお嬢様を見て、私は咄嗟に抱きしめた。


「お嬢様...すみません、遅すぎましたね」


「何を言っているの? 助けに来てくれたじゃない」


「しかし、こんな姿...」


「大丈夫だから、来てくれてありがとう」


「お嬢様、強がらないでください」


「...っ」


「お嬢様、よく頑張りました」


「アランっ...」


私はお嬢様に自分が着ていたジャケットを羽織らせた。


「お嬢様、失礼します」


「わっ!?」


「お嬢様、屋敷に戻りましょう」


「ちょと、歩けるからおろして」


「お嬢様、こうゆうときは甘えてください」


「なんでよりによってお姫様抱っこなの...」


「嫌でしたか?」


「嫌じゃないけど、恥ずかしい...」


「馬車を用意させますね、屋敷についたらゆっくり休みましょう その前に...」


私はお嬢様を抱えたまま広間へと向かった。



「お嬢様、挨拶をしてから戻りましょう」


「そうね」


「アンドレ様」


「おお、アラン 久しぶりだな」


「アンドレ様、申し訳ないのですが用事ができてしまい今すぐ別邸に戻らなくてはならなくなりました。」


「そうか、少しでも来てくれてよかったよ。メアリー、お前も」


「ええ、お祖父様に会えてよかったわ」


「では、失礼します」


「お祖父様またね」



屋敷に戻り身支度を整えたお嬢様が私に言った。


「アラン、今日は一緒にいて欲しい...」


お嬢様がこう言うことは少なくない。


「わかりました、では寝室へ行きましょう」


寝室に向かう途中お嬢様が立ち止まった。


「お嬢様...?」


「アラン、私ってなんのために居るの?」


「お嬢様?」


「お祖母様が私を嫌っていると自覚したときから、私は必要のない存在なんじゃないかって考えてしまうの」


「お嬢様... 私はお嬢様のために居ます。お嬢様は私のために居る。それじゃダメですか?」


「!?」


「私はお嬢様に出会ってたくさん学ばせていただきました。私にとってお嬢様はなくてはならない存在なのですよ お嬢様、自分で決めつけないでください!」


「アラン...」


「私はお嬢様が居ないとダメなのです だから離れないで...」


「アランっ...」


私は想いが溢れお嬢様を抱きしめていた。

お嬢様のことは人より理解しているつもりだ。

でも私との思い出だけでは拭いきれない辛い過去がお嬢様にはある。

お嬢様の側に居られるのなら他に何もいらない。


「アラン...」


「はい、お嬢様」


「私、気づいたの」


「何をですか?」


「私には大切な人がいるって」


「それは良かったです」


「アラン」


「はい、お嬢様」


「ずっと側にいてね」


「はい お嬢様?」


「どうしたのアラン?」


「知っていますか?満月に誓いを立てると願いが叶うんです 今日はちょうど満月なのでやってみますか?」


「いいわね」


私はお嬢様の隣に立って満月に向かって


『ずっと守り続けます お嬢様の隣に居られますように』


そう願った。


「お嬢様は何を願ったんですか?」


「内緒よ」


「そうですか」


「アランは何を願ったの?」


「内緒です」


「ふふっ、そう...」


「もう夜も深いので寝ましょう」


「そうね、アラン手を繋いでいてもいいかしら」


「はい、ではおやすみなさい」


「おやすみなさい」


私はお嬢様の寝顔を眺めながら眠った。




「おはようございます、お嬢様」


「おはよう、アラン」


「お嬢様よく寝られましたか?」


「ええ、おかげさまで」


「お嬢様 今日は何かなさいますか?」


「そうね... 久しぶりにアランのピアノが聴きたいわ」


「ピアノですか... 最近弾いていないので上手くできるかわかりませんがいいですか?」


「ええ、アランのピアノがいいの」


「承知いたしました」


私たちは先に朝食を済ませ音楽室に向かった。


「お嬢様、リクエストはありますか?」


「そうね、愛の喜びがいいわ」


「わかりました」


ピアノの椅子に腰を掛け鍵盤に指を這わせ、私は音を弾かせる。

お嬢様が幸せそうに目を閉じた。


「やっぱりアランのピアノは美しいわ」


この音がお嬢様の幸せを具現化するように、屋敷へと広がっていった。



「アランありがとう」


「いえ、私でよければいつでも」


「アラン」


「はい、お嬢様」


「アランに出会えたこと。本当に感謝しているわ」


「お嬢様、私もです」


「アランが居てくれて、私はとても幸せよ」


「!?」


お嬢様はそう言いながら微笑んだ。


アランの想いは届いたのでしょうか。


どんな結果であっても2人ならば大丈夫。


私はこれ以上語りません。語る必要もないでしょう。


皆さんのなかで物語を完結させてください。





こんな駄作ですが呼んでいただきありがとうございました。

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