ただいま、そして・・・
さて、夏休み10日目。
今日は8月1日、吉日。
何かをし始めるにはとても良い日とされているその日に、俺は今日も今日とてLEFへログインした。
向かう先はもう決まっている。
昨日から目指していたが、やはり距離があってなかなか辿り着けなかったんだよね。
俺は懐かしのその家のドアをノックする。
「はいはい~……って、あらぁ!」
「ただいま、キャシーさん」
俺が戻って来たのは王都。
そろそろ新しいカレーのレシピも溜まってきたし、キャシーさんに振る舞おうと思って目指してきたのだ。
「ずいぶんと早く帰ってきちゃったけど、お邪魔していい?」
「もちろんよぉ! さ、入って入って」
キャシーさんに招かれて家の中に入る。
お昼前だったからか、リビングにはポトフを作ることを前提としているらしき食材が並べられていた。
「……キャシーさん」
「カレーを作りたいのかしらぁ? いいわよ」
「うっし、ありがとうございますっ!」
さっそくキッチンを借りて俺はカレーを作り始める。
サクサクと調理を済ませると再びレベルが上がる。
<レベルアップ35→36>
おっ、また上がったか。
やっぱりカレー称号って強いな。
カレー作るだけでレベルアップできるシステムはホント神過ぎる。
作ってくれた人に大感謝だ。
手の甲にキスして差し上げたい。
「キャシーさん、カレーできましたよ」
「相変わらずいい匂いねぇ。久しぶりのカイくんのカレー、楽しみだわぁ」
リビングへとカレーを運び、俺とキャシーさんで「いただきます」とランチタイム。
美味しそうにホクホク顔で食べてくれるキャシーさんへと、俺はこれまでの土産話をした。
迷いの森でモンスター肉カレーを作り、
黄金リンゴでカレーを作り、
迷いの森を出た先の町で激辛カシミールカレーを作り、
アカベッコー肉でビーフカレーを作り、
みっちゃん、エリフェス、カルイザワ、そしてミウモたちとカレーパーティーをしてきたんだ。
この王都を出てまだ2週間も経っていない。
それなのに不思議なもんだ、語るべきことは次から次へと出てきた。
そんな思い出話をしている折、
<フレンド:ボンジリからチャットが届きました>
「……ん?」
ボンジリさんか、珍しい。
キャシーさんに断りを入れてチャットボードを開く。
『カイくん、久しぶりやな』
「おおっ、ボンジリさんかっ。久しぶりっすね!」
『カイくん、めちゃくちゃ話題沸騰になっとるみたいやんか……って言いたいところやけど、もうええ加減有名人扱いにウンザリしてる頃やろし、俺から話題を振るんはよしとくわ』
「えっ?」
なんの話だ……?
訊いてみようかとも思ったけど、それよりも先にボンジリさんから新着チャットが届く。
『もう聞いたかも分らんけどな、北部のスコッティア共和国の海峡でクラーケンが出たらしいで』
「クラーケンって……あの怪物のヤツですか?」
『せや。ウワサによるとクラーケンの触手がな、バリ美味いらしいねん』
「……ほう?」
『カイくんならソイツを使った"シーフードカレー"、喰いたいんとちゃうか?』
「その話……詳しくッ!!!」
興味が無いわけがない。
ナイスだぜボンジリさん!
俺はボンジリさんと明日の昼に王都の北部にある町で落ち合う約束をしチャットボードを閉じる。
「ふふふっ、次はシーフードカレーなの? 美味しそうねぇ」
「すみません、忙しなくて」
「充実していて良いじゃないのぉ」
俺たちはカレーを食べ終えてもう少し雑談をする。
帰り際にはキャシーさんが玄関先まで見送りしてくれた。
「この世界はまだまだ広いわぁ。たくさん楽しんでねぇ」
「はい。それじゃあまた、いってきます!」
「いってらっしゃい」
手を振ってくれるキャシーさんを背に、俺はまたカレー作りの旅に出る。
まだまだカレーは作り足りない。
ポークカレー、タイカレー、チキンコルマ、ココナッツカレー……
定番のそれらに加えて、このLEFにはモンスター肉なんかもある。
まだまだ無限のカレーが俺を待っているのだ。
……とりあえず明日までに食材調達と職業選択と、あとせっかく王都にいるんだしそろそろLEFのチュートリアルくらいは進めてもいいかもな?
「ホント、いくらでも楽しめるな。LEFの世界は」
まず次はシーフードカレーだ。
この先もガンガン作ってガンガン喰うぞ!!!
ここまでお読みいただきありがとうございました!
本作は一旦ここまででいったん更新を終わりにさせていただきます。
これまでご感想、評価ポイントをしていただいた読者様も本当にありがとうございます。
本作はいくつかコンテストに参加中です。
何かご報告できることがあればお知らせしますので、
ぜひブックマークをしておいていただけると嬉しいです!
最後に、
もし本作をお読みいただいて少しでも
「おもしろかった」
と思っていただけましたら、
1からでも構いませんので
評価ポイントいただければ嬉しいです!
それではまた、これからの新作や別作品などでもご縁があれば幸いです。
改めましてここまでご愛読いただきありがとうございました!




