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無駄イベ?んなワケない

「カイくん、少し座って待っていてね。今日はポトフのレシピメモと食材を買ってきたのよ。すぐに生産(クラフト)できるから」


キャシーと名乗ったNPCの老婦は、家に着くとすぐにキッチンに立った。

2階建ての大きな家、俺はその1階の食卓に通される。

テーブルの中央には写真立て。

そこには美人な女性……若かりしキャシー婦人と、その隣にコック帽を被った料理人と思しき男性が写っている。

旦那さんのようだ。


「あらっ、大変っ!」


「えっ?」


声が聞こえたキッチンを覗くと、キャシー婦人はオロオロとした様子だ。


「レシピメモが……無いわっ!」


「レシピメモ?」


自動(オート)で料理を生産(クラフト)するには使い捨てのレシピメモが必要でしょう?」


「ああ、そういう仕様なんですね。クラフトって……」


「そうよ。私、ポトフは手動(マニュアル)でクラフトしたことがないのよ。困ったわぁ……」


キャシー婦人はため息を吐く。


「おかしいわねぇ、確かにこの中に入れていたはずなのに。もしかして、落としてきたのかしら」


「それって、さっきジャガイモを落とした時ですか?」


その時の状況を思い返す。

確かにバスケットは横になっていたが……


「あの時、ジャガイモ以外は何も落ちてなかった気がするけどなぁ……」


「そうねぇ。どこで落としたのかしら。今日は買い物途中でバスケットを10回はひっくり返してしまっているのだけれど」


「10回もっ!?」


いくらなんでも落としすぎだろ。


「ああ、どうしましょ。きっと探してももう見つからないでしょうね。レシピは諦めるしかないわぁ」


「……」


えっ、これってまさか……

俺がレシピを探しに行くおつかいクエスト?

そして報酬はポトフ?

なるほど、プレイヤーたちが"無駄イベント"と言っていた意味が少しわかった気がする。


「はぁ、困ったわ。ごめんなさいね、お礼をするはずがこんなことになって」


これ、正攻法でクリアするの嫌だなぁ。

時間だけかかって旨みが無い。

なら、


「あの、キッチン借りられます?」


「えっ? ええ、いいけれど」


「ご飯なら俺が作りますよ」


ズケズケとキッチンへと乗り込んだ。

ガスコンロは無いが、どうにもIHっぽいのがあった。

電気の代わりに魔力で発展してる世界観だし、これも魔力か何かで物を熱せられる仕組みかな?

食材はソーセージにニンジン、タマネギにジャガイモ……それにキャベツか。

ポトフとしては定番だな。


「調味料は上の棚にあるわ」


キャシー婦人の言う通り、綺麗に揃えられた調味料たちがそこにはあった。

塩に砂糖、コンソメ、クミン、コリアンダー……カルダモン?

おいおい、これ……


「ぜんぶスパイスっ? こんなにっ!?」


「ああ、そうなのよ。でもなかなか使いどころが無くてねぇ」


使いどころがないのにこれだけのスパイスが揃ってる?

何か事情がありそうだ。

でも、今はそんなことよりも、


「……あの、これぜんぶ使ってポトフじゃなくてカレーを作ってもいいですか?」


「えっ、カレー? もちろんいいわよ。でもレシピはあるの?」


「いいえ。でも任せてください!」


キャシー婦人を食卓に座らせて、俺はキッチンへと舞い戻る。

そりゃあもうウッキウキに。

おいおい、誰だよ?

これを無駄イベントだとか言ったヤツ。


「むしろメインイベントじゃねーか……!」


作り方さえわかれば、レシピがなくても手動(マニュアル)でクラフトできるよな?

俺は包丁を手にほくそ笑む。

俺は自他共に認めるカレーオタク。

しかし、"食べ専"ではない。

これまでに何百回とスパイスから作ってきているのだから。

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― 新着の感想 ―
[一言] スパイスから作ってる……これはカレーガチ勢ですねwww
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