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パリィ・パリィ・パリィ

俺はハルの弓を斬り飛ばした短剣を構え直し、


「終わりだな」


そのままハルの喉元へと短剣をひと突きに……


「なんてな」


「はひぃっ……?!?!?!」


寸止めすると、ハルから間抜けた声が上がる。

どうやら本当に刺されると思っていたようだ。


「刺すワケないだろ。PKになっちまう」


「……っ!」


わざわざこんなヤツをPKして自分の名前を赤くする必要もないだろう。

どうせコイツはもう俺のこと襲ってこない。

弱者を虐げるヤツというのはそういうものだ。

自分より強いと感じた相手には歯向かわない。


「もう二度と俺に絡んで来るなよ……あ、でもこれだけは聞かせてくれ」


俺は短剣を仕舞いつつ、


「オークは、肉をドロップするのか、しないのか?」


それが俺にとって一番の問題だ。

ドロップするなら何としても追い求めたいし、

しないなら別のターゲットを探す。

俺はモンスター肉を使ったカレーが食べたくて仕方ないのだ。


「は、はぁ……? オークが、肉をドロップするかだって……?」


ハルは俺の質問に困惑しつつも、


「そんなの、決まってる。オークから肉はドロップ──」


ハルが答えを紡ごうとする。

しかし、まさにその直前だった。

聞き覚えのない、女の声が響いたのは。


「──スキル、"五月雷(サミダレ)"」


バチバチバチッ! と。

唐突に謎の雷が光った。

いや、それは正しくは紫電を纏う槍の雨。

それがハルへと向けて高速で迫っていた。


「──ヒッ!?」


俺を巻き込まない形で一直線に、槍の雨はハルへ降りかかろうとする。

オイオイオイ、どうなってるっ?

誰の仕業だっ?

いいやそれよりも何よりもッ!


「俺はまだ、答えを聞いちゃいねーぞ……!?」


オークから肉はドロップするのか、否か?

それ以上に重大な謎は今あるのか?

いいや、ない (確信)

ゆえに俺の行動は、ひとつ。

襲い来る雷の槍たちからハルを庇うようにその正面へと立つ。


「──パーリィーッ!!!」


俺はとっさに短剣を抜いてソレを弾いた。

ガラスの割れるような音と共に、輝く青いエフェクトが広がった。

槍の初弾、受け流し(パリィ)成功。

そして、


「よいしょぉぉぉおッ!!!」


俺は短剣を振るい続ける。

連続のパリィ。

輝き続ける青、青、青。

甲高い音が森の中、リズムゲームのように繋がって響き渡った。

パリィ、パリィ、パリィ、パリィ──

パリィ!

その槍の雨を全て受け流し切る。

俺にも、後ろで腰を抜かしたように尻もちを着くハルにもケガは無い。


「誰だッ!? コイツを狙うのはっ」


俺が叫んだその問いかけに対して、


「駆けつけ直後で精度が落ちていたとはいえ、まさか今のスキルを全て相殺するとはな……」


王都の方面、数十メートル先から先ほどと同じ声が聞こえた。

そして歩いてきて姿を見せるのは、2人の女性プレイヤー。

その内の白のフルプレートアーマーに身を包んだ1人は槍を持っている。

先ほどハル目掛けて飛んできた槍と同じ形状だ。


「あんたか、ハルを狙ったのは」


「そうだ。驚かせてすまない。私はエリフェス。"宵の明星"クランに所属する者だ」


「宵の明星……?」


「LEF内で治安維持を主な目的として動くクランだ。君が人質に取られるなどの危険が及ぶ前に、そこのMPKプレイヤー・ハルを即殺してしまおうと思っていたんだが……」


白アーマーの女は俺たちの間近までやってきた。

プレイヤー名とレベルが見える。

"エリフェス Lv45"。

レベル"45"!?

確か今のレベル上限は50だったハズ。

ということはこの人、かなりの上級プレイヤーだ……!


「私がここへ来たのはMPKを行う悪党をキルするためであり……そしてプレイヤー名カイ、君のことを助けるためでもあった」


「俺を?」


「そうだ。君がそこのハルに狙われていると情報があったんだ。ショックな事実だろうが、しかし、いま君が守ったコイツは君のことを騙しているんだ」


エリフェスはハルを指さして言う。


「コイツはMPK常習犯の最低のプレイヤーだ。君のことをここまで連れてきてモンスターに殺させようとしている。それがコイツのやり口なのさ」


「えっと、それは知ってるんだけど」


「ああ、信じられない気持ちは分かる。きっと表面上は親切にされたんだろう。だが、これまでの情報からしてみても、ハルが途中でモンスターを使い君をPKすることは明らか──って、え?」


「だから、この人が俺をハメようとしてたのは知ってるよ。というかもうオークをけしかけられた後だし……」


「んん???」


エリフェスはものすごい角度で首を傾げた。

ここまでお読みいただきありがとうございました。


もしここまでで

「おもしろい」

「続きが気になる」

など感想を持っていただけたら、ブックマークや評価ポイントをいただけると嬉しいです。


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[一言] めちゃくちゃ面白かったです!続きも楽しみにしております!
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