妄想の帝国 その82 素晴らしきマイマイナンバーカード制度
ニホン国、ジコウ党政権によって、全国民がそれぞれの、あらゆる情報がはいったマイマイナンバーカードを作成、携帯する法案が成立し、利権まみれの派遣会社ダソナらがカードの作成を請けおって、カードの利用が始まったが…
20〷年 ニホン国では、マイマイナンバーのカードの作成が全国民に義務付けられ、人々の病歴、教育歴、職歴、成育歴、購買履歴エトセトラの情報を関連付けて一つのカードに集約された…はずだった。
とある大手の銀行で、大物顧客たちが叫んでいた。
「ど、どうして金を振り込めないんだ!役員全員の口座が違う?マイマイナンバーカードから登録したはずだ!役員報酬を払えなければ、ダケナカ会長も、私も!い、一文無しだ。な、なぜ、役員全員の各種払い込みが今日期限なんだ!し、しかも法人カードも使えなくなっている、当座預金がマイナスで、ふ、不渡りがああ。うちの会社が、政府御用達の派遣会社ダソナが潰れてしまう。」
「“こちらはアナタのカードではありません”だとおお、そんな馬鹿な!マイマイナンバーカードなんだぞお、す、すべての私の情報が入ってるはずなんだ、ぎ、銀行の口座が違うってそんな馬鹿な!私は世界的有名なドヨタの会長だぞ、それが、なんで!秘書がなぜか、来ないからわざわざ出向いたのにい、私がドヨタ会長だと証明できないってどういうことだああ」
「生体認証のカードなんだから、間違うはずないのに、なんでええええ。総務省でちゃんと、つくったのよおお。私は大臣だったんだから、こ、国会議員なのよ!って情報が違う?え?何々病院に連絡?あれえええ」
と、その場にいた顧客たちが、救急車で有名な精神病院に収容された。
その近くの有名な大病院では
「その、処方された薬って、目薬ですよ。なんで、耳鼻科受診したのに目薬が出てくるの!」
「定期の診察に来たのに、なんで、こんなに薬が急に増えてるんですか!しかも、院長の診察じゃない!私の診察は必ず院長があ」
と受付でクレームが続出、診察室では
「ハギュウダンさん、今の検査で、すぐにも手術が必要です!悪性の腫瘍が、脳に、このままでは、命が」
「ま、待ってくれ、先生。今受けたのは胸のレントゲンだ!な、なんで脳が」
「え?し、しかし、画面には脳に異常が…。おかしいな、マイマイナンバーカードを差し込んでいるんですが…。これ、確かにハギュウダンさんのカードですよね」
「な、何を言ってるんだ。写真もついてるし、ナンバーもある、生体認証だって、やったんだぞ。大臣だから、率先して」
「で、でも、やはり異常がみられるのは、脳…。わかった。以前の検査ですね。それか脳の異常がついに胸に影響を、いずれにしろ、すぐ手術しなければ」
と若い医師が大慌てで緊急手術の準備をしようと足早に出て行く。
手術室近辺では
「アトウダ元大臣のオペだが、手術前に、この注射をするように、電子カルテにかいてあるんだが…。いいのか、これ。感覚鋭敏になるのでは」
「でも、先生。ちゃんとアトウダさんのマイマイナンバーカードを読み取り機に差し込みましたよ。間違いなく」
「よ、よし、厚労省ともつながりのある大先生からの引継ぎだ。この電子カルテの署名も間違いないようだし、事前にこの注射をすべきなんだ。本来なら麻酔が効かなくなるし、顔面の手術だから、想像を絶する痛さになるはずだが…。きっと何かあるんだ。とりあえず打つべきだ、カルテにあるし」
「そ、そうですよ。マイマイナンバーカードにちゃんと本人の医療情報がのってるはずです、写真も生体認証での指紋もアトウダ元大臣のものと一致してますし」
と、医師と看護師が一抹の不安を覚えつつ、横たわる元大臣に注射を打とうとしていた。
そこからそう遠くないショッピングセンターでは
「な、なんでカードが使えないんだ!わ、私は国会議員だぞ、議員報酬や歳費を使い切るなんて、そんなことは」
「で、でもズズギ・ムンオ先生。その、つ、使えません、そのカード、というかクレジットカードが停止されてます」
「議員報酬は払われてるはずだぞ!生活保護だの、子供手当だの、各種支援金の振込はともかく、これだけは最優先にしてるはずだああ」
「そ、その…あああ!せ、先生大変です!カード情報確認したら、先生は、議員資格なし…議員どころか、こ、国家の敵、機密情報漏洩、外観誘致罪で、た、逮捕状がああ」
「な、何を言い出すんだ、わ、私は外国の首相、と、特にロシアのプータン大統領さまとも親しいんだ!その私が外観誘致罪なんてそんなはずあるか!お、お前がオカシイ」
とズズギ・ムンオとその秘書たちが言い合いをしている間に、警察がやってきて、全員逮捕された。
そして、ニホン国、首相官邸の入り口
「は、入れない。なぜだ」
ニホン国現首相ギジダダ氏ほか側近大勢、息子ほかが、門の前で騒いでいた。
「だ、ダメです、首相。全員のマイマイナンバーカードを試してみましたが、門が開きません」
「しゅ、守衛はどうしたんだ!」
「それが、守衛も出れないようで…。マイマイナンバーカード認証が必要な扉はすべて閉鎖されています。電話すら通じません」
「こ、こうなったら、車で強行突破…」
「わーダメです!ギジダダ首相。侵入者とみなされて、銃撃されます!この間の閣議決定で、テロ行為の頻発で首相官邸の警備を厳重に、ひいては銃器類の使用を許可することになって、自動小銃をAI制御したミツンビシ重工の最新鋭警備設備を導入したばかりです。車がハチの巣にされますう」
「ど、どうして、こんな。わが与党ジコウ党議員をはじめ、ダソナ会長ダケナカ氏や広告会社便通の幹部連中など大企業、財界人たちや、大手マスコミの政治部関連のデスクや記者たちに加え、政府寄り芸能人たちのマイマイナンバーカードが軒並みおかしくなるとは」
「その件ですが、今、電話で情報を…た、大変です。首相。ぎ、議員たちが逮捕されたり、その子弟や家族が軽犯罪で拘留。メイジの党はなぜかニホン国国籍をはく奪され、入管に強制収容されたり、外観誘致罪で逮捕。ほか記者クラブの連中は国際的テロリストとして指名手配され、会社も家族も家宅捜索をうけています」
「記者はまだしも、警察職員なら、相手が議員だとわかりそうなものだろう、特にジコウ党議員なら。なんで警察が」
「そ、それが首相、現場に出てるものは非常勤の外部委託だそうで、実は外国人も混ざっているとか。しかも指令を出すのはAIなんです、経費削減で人手が足りず。そのうえ本職員はマイマイナンバーカードトラブル以外の現場に全員出ており、警察、裁判所トップたちは勤務先、というか部屋から出られなくなってます。マイマイナンバーカードが不備だとかで、外部から一切遮断されているらしいと。知り合いの警察署員がガラケーのメールを送ってくれました。官公庁、警察関連の建物内はスマホは使用不能らしいです」
「す、スマホがダメというなら、連絡はどうすりゃいいんだ。伝書バトでも飛ばせといううのか。ああ、マイマイナンバーカードで全情報を紐づけたのはいいものの、誤情報が続出、し、しかも我々政府与党、閣僚などニホン国の上流国民が大被害とは。担当大臣のゴウノ・ダメロウは何をしている」
「首相、そ、そのゴウノ大臣ですが、真っ先に拘束され、最新AIに尋問され、一種の神経症を発症し幼児退行を引き起こしたようです。「僕ちゃんホントはエライんだもん」といいながら、部屋の隅で、指をしゃぶりつつ丸くなって座っている映像がSNSに流れてます」
「な、なんてみっともないんだ。あいつは前から人の手柄を横取りし、失敗は人に押し付け大言壮語を吐きまくって馬鹿にされる男だったが、そんな無様なことに。いや、やつのことはいい。と、とりあえず、この事態に対処せねば」
ようやく首相らしいことを言ったギジダダ総理に別の側近が慌てたように
「首相、こ、この原因はどうやら、ダソナというか、我々にあるようです」
「我々って、ど、どういうことだ」
「ダソナと便通にマイマイナンバーカードと各種情報の連携をするシステムを受注したのですが、結局、作れず、手入力でいちいちやるということになりまして、その、下請け、孫請け、曾孫請けというふうに末端に入力作業をやることになり、その、賃金というか時給がかなり安くなって」
「くう、ゴウノのバカが、“そんなシステムぐらい作れる、ニホン国の技術はスゴイとか”わかりもしないくせに見栄をはっているから、こんなことになるんだ。で、誤入力が多くなったのか」
「その人為的ではあるのですが、どうもミスではないようです。実際に入力作業にあたった派遣労働者たちが、ブチ切れたというか、反旗を翻したというか。LINEで連携、示し合わせて、我々、ニホン国政府与党、マスコミ、与党支持というかオトモダチの企業、ダソナ、便通、ミツンビシグループ、ドヨタグループの関係者の情報をすべて書き換えたらしく」
「つ、つまり、我々の情報が全部違う、まさか、私は首相では」
「首相どころか議員ですらなく、いや、外観誘致罪、税金の横領罪…。わー、も、もうすぐAIに率いられた特殊部隊が我々をー」
「そんな、情報なんで、わかるんだ」
「SNSです、カード書き換えた連中が我が国の新政府のメンバーだと。すでに、各種の手続きをマイマイナンバーカードで終えてある、国内外に告知済みって。あー、カード一つで何でもできるようにしたのが裏目に出ました」
「う、裏目どころではない、か、革命だ、クーデターだああ」
と、ギジダダ氏が叫ぶと同時に
バーン
と、彼らに向かって銃弾が撃ち込まれる。
“ニホン国国民の税金を横領し、国民を苦しめ、国外に税金をばらまいた重罪人たちを拘束せよ!”
と、AI制御の戦車を先頭に、武装した一団が近づいてきた。
「わー、なんで都心に戦車がああ」
「防衛費で購入したやつです。首相官邸および国会というかジコウ党会館の防衛に使おうと近くに置いたのが不味かったんですうう」
と嘆く秘書。逃げ惑う側近たち。
元ギジダダ首相は
「カードがなんだああ、私は首相だああ」
と叫びつつ戦車にむかうが
“マイマイナンバーカードの情報が正しい、言ったのは政府ジコウ党、アナタたちです。運転免許証より健康保険証よりカードが優先、カードが絶対、ジコウ党の閣僚たち、首相自身がそう閣議決定したのですから、従ってもらいます”
あっけなく否定され、拘束された。
こうして、マイマイナンバーカードの施行により、結果的にニホン国は大改革が行われ、税金を好き放題使いまくった旧政府の関係者、利権取り放題のオトモダチ企業、与党にすりより公約全て口約束の似非野党などは一掃された。その後、マイマイナンバーカード制度は新政府によって永久に停止されたのであった。
どこぞの国では、IT関係を強化するとか言いつつ、超アナログなところで、ミスを連発しているようですが、謝罪になっていない謝罪を何回もされて、呆れかえっている国民が多数いると思われます。素直にやっぱり無理でした、できません、使ったお金はどうにかして返しますとかいえばいいのに、きっと言えないんでしょうねえ。