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いつか神殺しのアマデウス  作者: 焼き29GP
第一部 王国の動乱
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一章〜拠り所〜 七十二話 友人

 アレルは思う。おそらく、パメラは普通の人よりも思考速度が一際早いのだと。

 だからこそ、パメラは自身の中で納得出来た事をわざわざ口にしない事で、パメラと話をしている人間には急に脈絡のない話が始まった様に感じさせてしまう。

 そして、今現在アレルの前で、それを利用した誤魔化しが行われている。


(パメラ側に、話す気がない以上ふざけた態度が改められる事はないだろう。かと言って、腹の探り合いでは分が悪すぎる。なら、方法は一つだけか)


「パメラ」


「えぇ? そんな神妙な顔してぇ······もしかしてパメラちゃん、良い返事貰えちゃう〜」


 イヤンと、両頬に手を当てて身体を左右に振るパメラに、アレルは深々と頭を下げる。


「頼む、少しでも危険な事をしようとしているなら止めてくれ。アイツ等から剣を盗って、変な因縁を作ったのは俺だ。責任は、全部俺にある。だからパ──」


 そこで、アレルの話を中断させる様に、アレルの両頬はパメラの両手で挟まれ、そのまま顔を上げさせられる。


「アレルちゃん、ずるいわよ。そんな風にされたら、私もちゃんとしなきゃならなくなるじゃない」


「パメラ?」


 そうして、アレルはパメラの顔を見るが、その隙にパメラは周囲に人がいないのを確認する。 それから、パメラはアレルの目をまっすぐに見詰める。


「アレルちゃん、聞いて。今、一番危ないのはアレルちゃんでしょ? アレルちゃんが言った様に、暗殺者とその依頼者がこの街にいるなら尚更ね」


「そう······かもしれないが、その原因を作ったのは俺だから、それは当然の事べぇッ!?」


 突如、両頬を引っ張られたアレルは言葉を詰まらせる。

 対して、それを行ったパメラは不満に表情を歪める。


「それが、間違いなのよッ! 因縁とか報復なんて律儀に受ける必要ないんだから、逃げちゃって良いのッ! もう、変な所まで真面目なんだから」


「ひぃや、へも······」


「でもも、何も無いのッ! それに、私達は昨日今日こういう事に関わり始めた訳じゃないんだから、アレルちゃんが心配する様な事にはならないわ。······大丈夫よ、私達に任せて。ロナちゃんにとっても、私にとっても、アレルちゃんは大切な友人だもの。友達を助けたいって思うのは、当然でしょ?」


 そう言って、パメラはアレルの頬を引っ張るのを止めて、摘んでいた部分をそのまま優しく撫でる。


 そこまで言われ、アレルは自身の思い違いを反省する。

 アレルは、アリシア達の依頼を受けて以降、常に一定の水準の警戒心と緊張感を保っていた。それ故か、誤った責任感から関わった人を全て庇護しなければならないと、謎の使命感に駆られていた。

 しかし、それは相手を下に見た身勝手な思い上がりだという事に、パメラの言葉で気付かされた。


 友人、これ以上ない対等を示す言葉に、アレルの心の奥底で雁字搦めになっていたものが、ゆるゆると解けていく。


「あ、あのさ······」


 謝ろうと口を開いたアレルだったが、咄嗟にそれは違うだろうと言葉を呑み込む。

 ここで謝れば、それはまたどこか立場の違いを感じさせるものになってしまう。


「ん? なぁに?」


 その葛藤が、アレルを見詰めるパメラには伝わっているのか、微笑み浮かべながらパメラはアレルの言葉を待つ。

 そんなパメラを、待たせる訳にもいかないと感じるアレルは、自身の中にある数多の言葉の中からありきたりな一言を選び出す。


「あ、ありがとう······」


 今までも、幾度となく口にした言葉のはずなのに、どこか照れくさく、これ程言いづらかった事は無かったと、アレルは感じる。しかし、対等な友人だというなら、これ以上相応しい言葉も無かっただろうとアレルは思った。

 その証拠に、目の前のパメラはいつもの仮面の笑顔ではなく、自然で温かみを感じる微笑みを浮かべる。


「うん、よろしい!」


 だが、そんな微笑みも束の間、パメラの表情は直ぐにいつもの仮面の笑顔に切り替わる。


「じゃあ、この件はパメラちゃんに全部まかせてねぇ。······ウフフ、これでアレルちゃんはぁ、名実共に私の愛人ねぇ」


 瞬間、イラッとしたアレルだったが、即座にそれが自身があまり重く受け止め過ぎない様にする為の、パメラなりの気遣いだと気が付く。


「······いや、何でお前はいつもそうなんだよ。もっと普通に出来ないのか?」


 ハァ、とアレルは脱力してため息を吐く。すると、パメラは頬を膨らませて不満そうにする。


「ムゥ、これがパメラちゃんの普通なのよぉ。アレルちゃんこそぉ、あんまり変な事言うとチューするぞぉ」


 両手でアレルの顔を固定しているのをいい事に、パメラはわざとらしく唇を突き出してくる。

 しかし、アレルは照れる事もなく、静かにパメラの両手を振り払う。


「止めろ。ったく、そんな気もないくせに、そんな事口にするなよ。パメラも、人の気を惹く見た目してんだから慎みぐらい持てよ」


「あらぁ? アレルちゃんの前以外ではぁ、ちゃんと慎み持っているわよぉ」


「じゃあッ、俺の前でも持ってくれッ! ······なんか、少しはパメラの事を理解出来たかと思ったが、やっぱパメラと話していると疲れる」


 そうして、肩を落とすアレルに、パメラはクスクスと笑う。


「え〜、私は楽しいわよぉ」


「だろうなッ!」


 思わず、反射的に突っ込んでしまったアレルは、またパメラのペースにのせられてしまっていると思い、流れを断ち切る為に歩き始める。

 それには、パメラもアレルの後をついてくる。


「待ってぇ、私も行くわよぉ」


「別に好きについてくればいいだろ?」


「そうだけどぉ······そうそう、色々言ったけどぉ、私がアレルちゃんを気に入っているのは本当よぉ」


「うるせッ」


 これ以上まともに相手すると、謎のデバフが発動しかねないと危惧するアレルは、車庫への歩みを早める。

 そうして、ついてくるパメラから逃げるみたいにしながら、アレルは宿の車庫が並ぶ中庭へとやって来る。見れば、積込みは既に終わってしまっている様で、アレルはしまったなとその場で立ち尽くす。

 しかし、その傍らでやけにくたびれたオッサンを見つける。


「オーイ、何をそんなにヘバッてんだ?」


 アレルは、その人物に話し掛ける事でパメラに乱されたものを落ち着けようとする。

 だが、その人物はアレルの姿を見るなり、藁にも縋りつく様な表情をしたのだった。



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