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いつか神殺しのアマデウス  作者: 焼き29GP
第一部 王国の動乱
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一章〜非望〜 五百四十八話 悪い所ばかり目について

 また同じ様に、それが如何に難しい事なのかをアリシアは何となくではあるものの理解している。

 それというのも、例え再び(こじ)れる前と同じ様になれたとしても、その(こじ)れる原因となった事が無かった事になる訳ではない。それこそ、きちんと解決せずになあなあで元の関係に戻った場合、互いに心の奥底にしまい込んだものが(くすぶ)り続けてその内再燃してしまう事もある。

 それに、相手はあのアレルだ。強情(ごうじょう)で、意地っ張りで、わからず屋で、独りよがりで、自意識過剰な上に自罰(じばつ)的で、意地悪だけど基本的に優しい所があって不器用だけどそういう所が逆に安心出来る。だけど、今回ばかりはその優しさに甘えてはいけないんだとアリシアは自分の意思を強く持つ。

 そうしないと、あの他者の為に自分を殺す事に慣れてしまっている大馬鹿者は、また自分の中に色々なものを隠してしまうからと。


「でも······それって、凄く難しい事なんじゃありませんか?」


 そこへ、アレルの気難しさを知っている様な口振りでメリルが言ってくる。それに関しては、否定する言葉の手持ちがないアリシアもコクンと頷いて返す。


「うん······アレルって、そういう所はすっごくバカだから、どうすれば良いのかは判らないんだけどね」


 すると、肩に止まっていた瑠璃がアリシアから離れて、出しっぱなしにしていた公用文字の一覧の上を飛び始める。


「きをみて······あっ、機を見てね! ······話をすれば、主様、解ってくれます? それと······主様、馬鹿、では、ありません?」


 と、瑠璃は助言と共にアレルを馬鹿と言われた事に対して遺憾(いかん)の意を伝えてくる。アリシアは、瑠璃の助言に感謝すると共に、そういった可愛げのある瑠璃の行動に思わず笑みをこぼす。


「うん、ゴメンねルリちゃん。アレルだって、ちゃんと頭の良い所もあるもんね」


 そう言ってアリシアが謝ると、瑠璃はそんなアリシアの前で当然ですと言っているみたいに胸を張る様な姿勢で浮遊し続ける。アリシアは、こういう所が本当に可愛いなと右手を差し出すと、そこに瑠璃が止まってくる。


「それはそうと、アイツ結構梃子摺(てこず)っているみたいですね」


 話が一段落した所で、ミリアが魔物と戦っているアレルに対してそんな事を口にしてくる。


「判るんですか?」


「ええ、まあ······以前、私も戦った事のある魔物ですから。ただ、姉さんも聞いた事がありませんか? ここ最近、獣系の魔物が頻繁(ひんぱん)に現れていると」


「確か······騎士や兵士の方達の中で、そんな(うわさ)が流れていると聞いた事はありますけど?」


 アリシアが、瑠璃の可愛さに心を(いや)されていると、不意にミリアとメリルが魔物の発生について話し始める。そして、ただ聞いてるだけのアリシアもまた、王宮内でそんな報告を耳にした事があった。


「これは、私ではなくガルシア団長が言っていた事なんですが、その中に普段見かけない様な強力な魔物なんかも発生していて、その事が何か国内で良くない事が起こる前兆なのではないかと言っていたんです。たぶん、今アレルが戦っている大角牛(ホーンブル)も普段この辺りにはおらず、草原などで遭遇する魔物のはずなのでその前兆の一つなのではないかと······」


「その何かって、今アタシ達が巻き込まれてる事なのでは?」


 メリルは、アリシアを気遣ってかクーデターと直接言わずに濁してくる。しかし、それは確実に伝わっているはずなのに、(ほろ)越しのミリアはいいえと即座に否定する。


「ガルシア団長は、私が考える事を苦手としているからか詳しくは話してくれませんでしたが、国内で人心が乱れるならば事が起こった後でその前では魔物の発生とは(つな)がらないと言ってました」


「つまり、それ以前から魔物の発生が増える原因があったって事なの?」


「ええ、おそらくは」


 そこで、アリシアは直感的にそれについてもアレルが黒幕と(にら)んでいる宮廷魔法師が関わっているかもしれないと思う。ならば、アレルにこの事を伝えれば何か判る事があるかもしれないと考えたところで、またアレルに頼ってしまうのかと一旦踏み留まる。


(もしかしたら、全く関係ないかもしれないし······もっと何か確かな事が判った時に伝えた方が良いよね?)


 そうして、アレルに頼らずにという思いから、アリシアは直感的に思った事を自身の胸の内に留める事にした。すると、そこでアリシアの手に止まっていた瑠璃が、再び公用文字の一覧の上を飛び始める。


「えっ······魔物、死体、処理、どうするか、()いてる······ねえ、アレルが魔物の死体の処理をどうすれば良いか()いてるみたいなんだけど」


 アリシアは、自身の考えなどは後回しにして、瑠璃が伝えてくる事をメリルとミリアにも伝える。すると、メリルは首を(かし)げるものの、(ほろ)越しのミリアは声だけを返してくる。


大角牛(ホーンブル)の死体ですか······それなり巨体ですから、そのまま放置で良いのでは?」


「クリス、それって本当に大丈夫なんですか? というか、アレルさんは無事に勝ったんですね」


 メリルはそう口にするが、何故か一瞬だけ瑠璃の動きがピタッと止まったのをアリシアは見逃さなかった。なので、他の二人には聞こえない様に小声で瑠璃に話し掛ける。


「······ルリちゃん、もしかしてアレルって怪我とかしたの?」


 ()くと、瑠璃はブンブンと身体を左右に振ってアレルは怪我なんてしてないと必死に否定する。それを(いぶか)しむアリシアだったが、そんなのは気にせずにメリルとミリアは話を続ける。


「ここは、アレルが旧道と言っていたのですから人の通りは無いと思いますし、例え何かあっても被害はないですよ」


「そうは言っても、あの宿泊所にいた人達がいるでしょ?」


「いや、あそこにいた連中は全員がそれなりに戦える人間の集まりでしたから平気ですよ。アレルの奴が、あの連中とどういう関わりがあるかは知りませんが、あの身のこなしならば普通に手練れですから問題なんてありません」


「それでも、魔物の死体が放つ瘴気は聖水をかけて分散させないと駄目でしょ?」


「時間は掛かりますが、瘴気だって自然と散っていきますよ。なので、放って置いても何の問題もありません!」


 メリルとミリア、どちらも口調だけは丁寧なのだが、互いに引かないせいか口喧嘩(くちげんか)様相(ようそう)(てい)してくる。アリシアは、そんな二人を止めなければと思うも、瑠璃が公用文字の一覧から離れてその場で浮遊するだけになったのでそちらに気を取られる。


「······ルリちゃん?」


 アリシアが呼びかけても、瑠璃はピクリとも反応せずにそのまま浮遊を続ける。すると、流石(さすが)にメリルもその不自然な様子に気付いたのか、ミリアとの言い争いを止めてそちらへ視線を向けてくる。


「アンネ? ルリさんは、どうしたんですか?」


「えっ? ううん、私にもどうしたのか解らなくて······」


 ただ、しばらくすると瑠璃は再び公用文字の一覧の上へと戻り、アリシア達へ言葉を伝えようとしてくる。


「主様、死体、放置、こちら、合流······アレルは、魔物の死体をそのままにしてこっちに来るって言ってるの? もしかして、メリル達が言い争ってる間にアレルへ説明していたの?」


 アリシアがそう(たず)ねると、瑠璃は二度に分けてその身体を上下させて肯定の意を伝えてくる。それに、何故か瑠璃とのやり取りを見ていたメリルが驚きの表情を浮かべる。


「今のだけで、よくルリさんの言いたい事が解りますね」


「うん、ルリちゃんの言葉はアレルから何度か聞いてるし、私もルリちゃんと二人だけで色々とやり取りしてたから、それでかな?」


「あの、アレルの奴は戻って来るんですか?」


 そこへ、外にいて状況が解っていないミリアが、(ほろ)の外から声を掛けてくる。


「うん、ミリ──クリスの言った通り何もしないで帰ってくるって言ってるみたい」


 アリシアは、それまで意識するのを忘れていた偽名でミリアに言葉を返す。その直後、(ほろ)越しにも関わらずピリついていたミリアの気配が僅かに緩んだのをアリシアは感じる。


「そうですか」


 口では色々言うけれど、ミリアもミリアでアレルの事を信頼しているんだなと、アリシアはミリアのそんな反応から思う。それなのに、まるで誰からも信頼されてないみたいに意固地(いこじ)になっているアレルには、もう少し周りを頼る事も覚えて欲しいなとアリシアは思うのであった。



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