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いつか神殺しのアマデウス  作者: 焼き29GP
第一部 王国の動乱
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一章〜非望〜 五百五話 同じ黒にも差異はある

 黒羽根達は、何やら話し合いをしているみたいで、もうしばらく続けていそうな気配を匂わせている。なので、アレルは邪魔しては悪いと思い、先にアリシア達の為に()き火の準備して火をつけておく。

 ただ、そうして準備をしている最中にアリシアが来て、果物をミリアに取ってあげようとしたら瑠璃に止められたんだけどと、文句とも苦情とも取れない感じで話してきた。おそらくだが、話し掛けるきっかけに利用しただけで本当は何とも思っていないんだろうなとアレルは思い、メリルに睨まれながらどこか不服そうに黒パンを(かじ)るミリアを横目にアリシアとの他愛(たあい)もない会話に付き合った。

 そうして、多少の時間を過ごした後に、黒羽根達の話し合いも終わったみたいなので、アレルは一人アリシア達から離れてメッサーの所へと足を向ける。


「なあ、少し訊きたい事があるんだけど大丈夫か?」


「あっ、はい大丈夫です。それで、訊きたい事とは何でしょうか?」


 メッサーは、アレルの事を見ていた訳ではないが、視界の端では近づくのを捉えていたみたいで然程(さほど)驚きはしなかった。しかし、他の黒羽根の中にはサッと距離を取る者もいて、アレルは避けられる事に対して微かに傷付く。

 それでも、訊きたい事を訊かなければとメッサーに応えようとするアレルに、他の者とは違い逆に近寄る者がいた。


「あの〜、朱羽根の······(かた)ですよね? お名前を訊いてもよろしいですか?」


 そう声を掛けてきたのは、腰までの長さで淡い黄褐色の髪を揺らし、アレルよりもやや低い身長のスラッとした体型の女性だった。ただ、その顔付きが何か腹に隠している人間のそれで、雰囲気もどこか初対面の頃のレイラに近かった。なので、アレルは少々(とぼ)けるふりをしてカマをかけてみる。


「アレルだ。それはそうと、既にレイラ達が終えているはずの値踏み役が何の用だ?」


「えっ!?」


 近づいてきた女性は、アレルの言葉であからさまに驚いた表情をする。それには、メッサーはクククッと小気味良く笑ってみせる。


「だから、俺は止めろって言ったのに、あの筆頭が入れ込む様な方なんだぞ? 俺達なんかで、どうこう出来る訳ないんだよ」


「ででで、でもっ、見た目は普通の人じゃない? だったら、確かめてみない事には信じられないでしょ?」


 などと、女性はメッサーと付き合いが長そうなやり取りをし始めるが、そんな事はどうても良いアレルは二人の話の腰を折りに行く。


「んで、俺をわざわざ招いた理由もそんな事だったりするのか?」


「いえいえ、違いますよ。俺──ッ、私は別にアレル様個人を招きたかった訳ではありません。先程も言いましたが、筆頭に言われて偽物の回収やらで持ち歩いている奴を手当たり次第、あの狼達に連れてこさせているんです。普通なら、狼なんて警戒するもんなんですが、本来の羽根の使い方を知らない連中はそれが王女様に繋がるかもしれないとホイホイついて来るんですよ」


 その話に、瑠璃から聞いた狼の言葉も一致するので、アレルはメッサーの話を信じる事にする。


「それで、始めて見る人間だけをここへ連れてこさせて、狼が見覚えのある奴はお前等の仲間だから無視するって訳か」


「まあ、そんなとこです。あっ、でも安心して下さいよ。俺達も、アレル様がいる所で連中の処理なんてしないんで、今夜は偽物持っている奴を入れたりしませんから」


 アハハ、と笑うメッサーではあったが、アレルは(いぶか)しげな視線を向けながら指摘を始める。


「······お前な、処理とか言って誤魔化(ごまか)しているけど、まさか殺しているんじゃないよな? もしそうなら、偽物を配っている奴に配った人間の姿を見ないなと不審がられる要因になる。更に言えば、記憶を消したりして生かしておいても、偽物を持ち歩いていたっていう共通点があれば気付く奴は気付くはずだ。言っとくけど、こういうのは処理の数が増える程に、そういう事を行う部隊があるって相手に知らせる事になるからな」


「あっ、はい······ですから、先程それに気付いて今伝令を──」


「アレル様、あなたならばどの様な対処をされますか?」


 まるで、アレルの指摘に取り(つくろ)うみたいな言い訳を始めるメッサーに割り込み、黄褐色の髪の女性がアレルへ訊ねてくる。その真剣な眼差しに、どこかレイラやジーナにも通じるものを感じたアレルは素直に自身ならばという話をする。


「狼が使えるなら、偽物を持っている連中を襲わせるだけに留める。または、狼だけで手が足りないなら覆面の盗賊を装って自ら襲いに行く。そうやって、毎回手痛い被害を与えて追い返せば、襲われた連中の酒場なんかでの愚痴で偽物の羽根を持っていた共通点なんかは直ぐに知れ渡る。それで、割に合わないと感じれば、自ずと偽物の羽根なんてその辺に捨てられる様になるだろ?」


 そんなアレルの返事に、メッサーは成る程それならとブツブツ呟き始めるが、そこへ黄褐色の髪の女性が声を掛ける。


「ねえ、まだ伝令出る前だけど······どうする?」


 その、どこか挑発的な視線にメッサーはグッと言葉を詰まらせるも、直ぐに肩を落としながらも女性に答える。


「······内容の変更、伝えてきてもらっても良いか?」


「はいはい、解りましたよ〜。それではアレル様、私はジェシカって言います。覚えておいて下さいね」


 黄褐色の髪の女性──ジェシカは、そう言って手を振りながら他の黒羽根へ伝令を伝える準備をしている者達の所へ歩いていく。その後ろ姿に、メッサーはハァ〜っと深いため息を吐く。


「急にどうした?」


「あっ、いえ······正直に言いますと、俺は頭を使うのが苦手でこういうのに向いてないんですよ。それでも、筆頭の覚えが良いからって(まと)め役を引き受けるしかなくて······」


 メッサーは、言い終わりに近づくにつれて声に力を無くしていく。そうして、メッサーは完全に下を向いて項垂れてしまう。

 確かに、アレルの感覚ではレイラの方が優秀な様に感じられる。それに、先程のジェシカに対するカマかけも、あれはジェシカの方がこちらに合わせてくれていた様にも思えてきたので、黒羽根としてはジェシカの方がメッサーよりも上なのだろうとアレルは判断する。

 ただ、アレルはロバートがそんな能力の低い人物をわざわざ覚えているかのかという疑問を抱く。つまり、ロバートがメッサーを気に掛けていたという事は、能力の低さを引いても余りある何かを持っているという事なのだろうとアレルは結論づける。


「なあ、別に(まと)め役だからって一人で全部やらなくて良いんじゃないか?」


「えっ!? それは、どういう······」


「だから、頭を使うのが苦手なら得意な奴に任せれば良いんだよ。そういう奴等の考えを聞いて、その上で色々と考えてどうするかを決断して最後にその責任を負うのが(まと)め役ってやつだろ? まあ、(たま)に人の話も聞かなければ優柔不断(ゆうじゅうふだん)で他の人間に責任だけ(なす)り付ける奴もいるけど、メッサーはそうじゃないんだろ? 少なくとも、俺の話を聞いてから即座に判断して指示を出していた。それも、独断じゃなくて話し合いを挟んでだ。その上で、さっきも自分の間違いを素直に認めて直ぐに指示を出し直したじゃないか。俺は、メッサーのそういう所こそ評価されるべきだと思う」


 そう、決して何でも出来る人間が優秀な主導者(しゅどうしゃ)になれる訳ではない。例え、一人では何も出来なくても周りの意見を聞いて最良の判断さえ出来れば、後は周りの優秀な人間が適当に上手くやってくれる。何も、上意下達(じょういかたつ)だけが組織の在り方ではない。百の組織があれば、百の在り方があって構わないとアレルは考える。

 そんなアレルの考えに、メッサーは言葉を失っているみたいだった。



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