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いつか神殺しのアマデウス  作者: 焼き29GP
第一部 王国の動乱
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一章〜非望〜 四百七十九話 自覚無き真意は言葉の裏に

 いただきますと、朝食を食べ始めながらアレルはつくづく相手の気持ちを思い遣るという事が大切なのだと身に沁みて理解する。同じ内容を話すにしても、その話し方次第で相手の抱く印象が真逆になったりもする。

 特に、アリシアの様に勘が鋭く頭が回るのに、解消しきれない不安を抱えているもしくは抱えてしまいやすい相手には細心の注意が必要だとアレルは思う。何故なら、先程の様に人の話の言葉端から持ち前の頭の良さが災いして、抱えている不安から悪い方へ悪い方へと想像が膨らんでしまう。

 アレルは、自身も最悪を想定した状態から対策等を考える為に、アリシアみたく不安を抱えている人にはその不安を煽っている様に聞こえるのかもしれないと、自らの話し方を反省する。


(なあ瑠璃、俺って配慮が足りないのかな?)


 そこで、落ち込んだアレルは精神感知を狭い範囲で使用して、目の前のアリシアには気付かれない様に瑠璃へ愚痴をこぼす。


 ──ルリからしてみれば、主様は充分過ぎる程に配慮なさっていると思いますよ。先程のは、単にアリシア様がご自分の感情を制御出来てなかっただけで、全くない訳ではありませんが主様の落ち度ではないと思います。


(そう言ってくれると、正直救われる)


 ──仕方ありませんよ。ヒトとは、精神が成熟しないまま肉体ばかりが成長してしまいますから、感情の制御が上手く出来ない方が少なくありません。一昨日は、あのロバート様ですら主様の前では出来てませんでしたし。


 その瑠璃の言葉に、ロバートの場合は過去の経験などが関わっているのもあると思うが、それよりもアレルは瑠璃の発言自体に驚く。


(なんか瑠璃って、やけに達観した事を口にする時があるよな)


 ──そうでしょうか? これでも、瑠璃は妖精の中ではまだまだ子供として扱われていますよ。


 その発言から、やはり瑠璃は時間の流れが違うという妖精郷でそれなりに永い時間を過ごしていたのではないかと、アレルは感じる。もしかしたら、この話の流れで妖精は何年生きると大人扱いされるんだと訊けば、瑠璃の大体の年齢が判るかもしれない。

 しかし、そうして瑠璃の年齢を知れば、アレルも瑠璃をさん付で呼んでしまうかもしれないので、例え何歳(いくつ)でも瑠璃は瑠璃だとして訊かずにおく事にした。


 ──それより、主様は内緒話をしていて負担とかは大丈夫なんですか?


(ん? ああ、手の届く範囲ぐらいしかやってないから、負担はほとんど無いよ。それに、少しずつでも慣れていかないといざって時に使えないからな)


 ──そういう事でしたら、ルリはいつでも話相手になりますよ?


 どこか嬉しそうに、それでいてこちらをからかうみたいな小悪魔的な軽やかさで、瑠璃は蜂蜜水を食べながらもアレルへ言ってくる。そんな様子に、やはり瑠璃は瑠璃だなと安堵したアレルは思わず笑みをこぼしてしまう。


「アレル? どうかしたの?」


 ただ、その笑みのせいでアリシアの注意を引いてしまい、アレルは急遽アリシアへの対応を迫られる。


「あ〜、少し瑠璃が笑わせる様な事を伝えてくるもんだから、ついな」


「ふ〜ん、そうなんだ······」


 そう口にしながら、アリシアは食事の手を止めて何やら不穏な気配を(かも)し始める。

 それに、ピリッとした僅かな寒気を感じたアレルは、瑠璃に助けを求めるもごちそうさまでしたと、蜂蜜水を食べ終えた瑠璃はヒラヒラとその場から離れてしまう。そうして、孤立無援となったアレルは、南無三と心の中でせめて楽に頼むと生存を諦める。


「もうッ、やっぱりアレルばっかりズルい!」


「は?」


 しかし、アレルの覚悟は肩透かしを食らい、アリシアはそのまま自らの不満をぶち撒ける。


「そうやって、いつもアレルばかりルリちゃんと話が出来てズルいって言ってるのっ! 私だって、ルリちゃんともっと話したいのに、言ってる事を解ってあげれなくて申し訳ないなって思っているのに······なのに、アレルばっかズルいっ!」


 むぅ〜っと、僅かに膨れっ面になりながらもアリシアは、その胸の内の不満をアレルへぶつけてくる。そこへ、瑠璃がアレルの肩へ止まりながら一言だけ伝えてくる。


 ──主様、こういう時は言葉を額面通りに受け取らない方が良いですよ。


(いや、それどういう意味だよ?)


 アレルは、精神感知を使いながら瑠璃に問い質すも、当の瑠璃は肩に止まったまま知らんぷりをしてくる。ただ、そんな瑠璃からはどこか呆れとも反発とも受け取れる感情も感じて、アレルは増々自身の混乱を強めてしまう。


「アリシア? えっと、まずは少し落ち着けって。というか、アリシアがそう思っているから瑠璃に文字を覚えてもらおうとしてるんだろ?」


 その言葉に、アリシアは膨れっ面を止めるものの、何故か不満に加え僅かに憤りもその気配に滲んでくる様になる。

 何故そうなるのかは解らない。解らないが、解らないなりにこれが先程の瑠璃の忠告した事なのだろうとアレルは考える。しかし、それが判ったところで原因の解らないアレルには根本的解決は不可能なので、対症療法的なやり方でどうにかアリシアに鎮まってもらう他ない。


「······アレルはそう言うけど、具体的にはどうやるつもりなの?」


「ん? 具体的に······ね、少し待っててくれ」


 そう言うと、食事の手を止めていたアレルは席を立ち自身の荷物が置いてあるベッドへと足を向ける。そうして、ベッドまで来たアレルは荷物を探って、その中からパメラに貰ったメモ帳と鉛筆の様な筆記用具を取り出すとテーブルへ戻る。


「例えばだな、こんな風に······公用文字で『あ』に当たる文字を瑠璃に見せながら一文字ずつ覚えてもらう」


 アレルは、そうやって自らがメモに書いたローマ字で言う所のaに当たる公用文字をアリシアと瑠璃に見せる。

 すると、瑠璃はフムフムといった様子で観察するが、アリシアはどこか唖然とした表情のまま固まってしまう。


「アリシア? 急に、どうしたんだ?」


「······ふぇ!? え、え〜っと、アレルってこの世界に来るまで、公用文字って知らなかったんだよね?」


「ああ、そうだけど······もしかして、間違っていたか?」


「ううん、そうじゃないんだけど······その、ね······ルリちゃん、文字は私が教えてあげるね」


 何故か、それまでの不満や憤りはどこに行ったのかという様子で、アリシアはどうにも歯切れの悪い返事をアレルに返してくる。そして、直後にアレルの肩に止まる瑠璃に対しては薄く笑みを浮かべて文字は自分が教えると告げる。

 その反応に、色々と変な直感が働いたアレルは、自身の書いたものが原因だと悟る。


「悪かったな、字が下手で」


「あっ、いや違うんだよっ! その、ね······下手な訳じゃなくて、汚······じゃなくて、えっと個性的? な字だから、覚えるのには向かないかな〜ってね」


 一瞬漏れた本音に、アレルは盛大なため息を吐くと共に肩を落とす。


「そりゃあ、こちとら覚えたてで練習する時間も無かったから、さぞかしお目汚しをしてしまったのでしょうね?」


 言いながら、アレルは自身が書いたメモをクシャクシャと丸める。


「もうっ! 私も言い方悪かったかもしれないけど、そんな言い方ないでしょ?」


「はいはい······んで、本当に任せて良いのか?」


 正直なところ、書いた字の美醜なんてどうでも良いアレルは、取り敢えず話しやすい空気を作る為にわざとため息を吐いたり言葉遣いを変えたりしていた。その思惑通り、頑なな雰囲気を崩してくれたアリシアに、アレルは本題を切り出す。



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